教育実習校、重い負担「深夜まで業務は当たり前」

2020年10月04日 14:17

 昨年7月にいじめを苦に自殺した岐阜市立中学校3年の男子生徒=当時(14)=が通っていた学校は、市立小中学校で9校ある教育実習校、研修校の一つだった。実習校は岐阜大教育学部の教育実習生を受け入れ、研修校は定期的に研究発表を行う。日ごろの業務に実習生の指導や発表が加わり、現場に重い負担がのしかかる。いじめ問題を調査した第三者委員会は、昨年12月の報告書で、問題解決に向けて教員の多忙を解消する必要もあるとの見解を示した。

 「実習校、研修校は、将来を期待された優秀な教員が集まる。上に昇る人は出身者が多く、出世もしやすい」と赴任経験のある教員はこう語る。

 一方、教育熱心で優秀な教員が、他の模範となるような学級作りに取り組む現場は過酷だ。この教員によると、午前7時に出勤し、帰宅は深夜12時を過ぎ、実習生を受け入れる時期は、翌日午前3時に帰宅していたという。保健室で仮眠し、翌日の業務を迎える同僚もいた。「遅くまで残るのは当たり前という雰囲気。業務に追われ、子どもと向き合う余裕はなかった」と振り返る。第三者委の報告書は、「教員はいじめに対し、鋭敏な感性を備えることが大切で、こうした感性を養うために教員が多忙であっては困難」と指摘している。

 多忙の解消を目指し、柴橋正直岐阜市長は昨年12月、実習校の在り方を見直すよう市教育委員会に要請。県教職員組合は1月、実習校、研修校制度を見直すよう、県教育委員会や市教委、岐阜大に求めると発表した。組合側は「多忙の問題を解決しなければ、教員が子どもに向き合うことができていない現状を改善できない」と強調した。

 こうした動きを受け、県教委と市教委、岐阜大は2月、実習校について、2020年度から教育実習生の受け入れを県全体の学校に拡大すると合意。岐阜大によると、これまで岐阜や大垣、高山市など10市の小中学校24校が実習校となり、うち一部持ち回りの19校で受け入れていたが、8月末からは35市町の97校(組合立学校含む)と受け入れ校を大幅に増やした。

 また、岐阜市の学校を中心に教員1人が複数の実習生を指導していたが、受け入れ人数を減らして対応する。研修校を含め、時間外勤務が年360時間を超えないよう、多忙の解消に取り組むことも決まった。

 県内の実習校、研修校の教員は「実習校、研修校は、教員が築いてきた文化」と指摘する。「教員は学校の評判を良くしたいという気持ちで、生徒に『人気がある学校にいるのだからプライドを持て』と指導してきた」とし、「生徒の中には指導についていけない子も出てくることを気を付けないといけない」と言い聞かせるように話した。

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 子どもの未来を育む学校で起きた、いじめによる生徒の自殺。複数の関係者らへの取材から浮かび上がった、学校現場の課題に向き合う。


カテゴリ: 教育 社会


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