陶デザイン 自転車と走る 金沢の作家 チームカー装飾
2020年7月26日 05時00分 (7月26日 11時55分更新)
今西さん「枠を超えて可能性広く」
金沢市の陶芸家今西泰赳(ひろたけ)さん(35)が、プロ自転車ロードレーサーの辻善光(よしみつ)選手(35)が使用するチームカーの車体をデザインした。車は、レースで自転車の移送や補給食の搬送などに用いられており、いわば“チームの顔”。プロスポーツと陶芸のコラボレーションは珍しく、今西さんは「焼き物の枠を超えたコラボで、陶芸の可能性の広さを感じた」と話す。(堀井聡子)
鈍く光るメタリックの車体に、黒く丸い模様が流れるように連なる。増殖する細胞をモチーフに「細胞紋」と名付け、今西さんが陶芸作品に描いている代名詞的な模様だ。車体の形状に合わせた図案をステッカーにして、車体をラッピングした。車を眺めながら今西さんは「光で黒く浮き上がる感じは少し陶器に似ている」。出来映えに満足そうに話した。
「(今西さんの)作品のテーマや色合いが前から好きだった」という辻選手が話を持ちかけ、今回のコラボが実現した。ともに奈良市出身の二人は、小学校の同級生。実家が窯元で四年前から金沢で活動する今西さんは、筑波大大学院で生命科学を研究していた経歴を持つ。一方、辻選手は二〇〇七年からプロとして活躍。一四年にレース中の不整脈により一度は引退したものの、今年からさいたま市を拠点とするプロチーム「さいたまディレーブ」の選手として現役復帰した。
昨年末の同窓会で約十年ぶりに再会し、互いの近況を語り合う中で話が進んだ。さいたまディレーブではなく、辻選手個人の屋号である「Team Zenko」専用のチームカーをデザインすることになり、三月末に完成。コラボ商品として、図案が描かれた器もインターネットで販売している。
辻選手によると、国内でチームカーのデザインにこだわる選手は海外に比べるとまだ少ない。「大会会場で子どもたちが記念撮影したくなる車にあこがれていた。ロードレースがおしゃれでかっこいいと思ってほしい」。チームカーを通して、ロードレースのさらなるイメージアップ、人気向上につなげたい考えだ。車は八月八日に宇都宮市で開催される大会でお披露目される予定だ。
今西さんは「焼き物以外に派生しても、自分が表現したいものは変わらない。陶芸家を名乗っているが、マルチに作品を展開するチャンスになった」と話し、創作活動の広がりに期待した。
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