麒麟がくる感想

麒麟がくる第26回 感想あらすじ視聴率「三淵の奸計(かんけい)」

将軍になれば、人を救える。貧しい人々を救える――。

そんな願いを持つ義昭を擁して、上洛を果たしたい。それが光秀の目標です。

そしてついに朝倉義景も決意します。

 

小籔二条の嫌味がお見事

一方、京では三好一族の支配が続いていました。

四国阿波の足利義栄が、急遽第14代将軍に就任。

ところが、この義栄は重い病を抱えていたため、摂津国にとどまり、上洛できずにいたのでした。

近衛前久が参内すると、公卿たちが何やら密談をしております。

そこにいるのは、二条晴良。

小藪千豊さんにこういう嫌味な公家をやらせると決めた方は、あっぱれとしか言いようがない。

名もなき公卿の方々もお見事です。おもしろき噂話に花が咲いておりました。

関白様のお耳に入れた方がよろしうございますな。そう言いつつ、晴良は扇を使うわけですが、この所作が絶品です。

本作は小道具の使い方もうまいのです。スタッフロールを見ても、日本の伝統的な所作を伝える心意気を感じます。扇を動かす動作そのものが綺麗です。

なんでも、関白が推した足利義栄が京都に登って来られないとのこと。前久が初耳じゃと理由を聞くと、病の為とも言うけれど、三好一族の操り人形になることにためらいができたと、晴良は煽ってきます。

真偽不明だろうと、相手の精神に一撃を加えればよいわけでして。見事な嫌味ですなぁ!

 

朝廷内のドロドロが垣間見え

涼しい顔で聞き流そうとする前久を、晴良は煽る、煽る。礼金の金額が足りず、粗悪な銭をかき集めているとか。

当時は銭が不足していて、ゆえに輸入もせねばならない。最高級の通貨といえば、明からの永楽通宝が代表格。それからはほど遠い、銭を使っている。この時点で笑い物なのです。

そのうえ、当人が京都に来られない。話にならぬと。

「この不始末を招いた関白様は、どうお思いでございますかな?」

「困りましたな」

晴良は、困ったのならば関白の座にとどまって良いのか、一同はそう申していると煽りまくる。

前久は、ニタァと笑うものの、粗悪な銭をくやしそうにギリギリと握りしめているのでした。

NHKは2020年代らしい新公卿像を見せてきました。誰もが歴史(日本史)の授業で習うし、わかっているようで、わかりにくい。そういう朝廷のお話です。

天皇を頂点に抱いて、それは日本の国体であり、神聖なもの……ならばよいのですが、こういう場面を見せられて、すんなりとそう説明できませんよね。

これにはちょっと既視感があります。

地球儀を回すと、ヨーロッパは教皇権力が曲がり角にありました。

公卿は黒、枢機卿は赤い服を着て、神聖なようで金勘定だの俗っぽいお話をしている。

神聖といったところで、そこは人間であるわけで、生々しい本音は洋の東西を問わずにあるんですね。

ご興味をお持ちの方は、ボルジア家もののフィクションでもどうぞ。

 

伊呂波太夫は京の輝きを取り戻したい

うかぬ顔の前久は、京都の街を輿で移動中。

「止めよ」

そこにいたのは、伊呂波太夫でした。

輿を止め、御所の塀を気遣う伊呂波太夫に話しかける前久。

伊呂波太夫の気持ちが、ここでちょっとわかります。帝の御所をお守りする塀が崩れていては、ご威光が揺らぐ。そう案じているのです。

前久は、塀を直すゆとりなどありませぬとそっけない。

何しろ、金がない。将軍の持参金が話題になるのも、結局のところそういうことです。

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伊呂波太夫は、お金なら私が集めてみせると言い切ります。

彼女はなかなか器が大きい。彼女自身が誰かの寵愛を浴びて、楽な暮らしをしたいわけでもない。ただただ、自分が育った京のかがやきを取り戻すべく、なかなかがめつい人生を生きていると。

そんな伊呂波太夫に「はいはい」と言いつつ、困ったと前久はこぼします。実に困ったそうです。

朝廷内で、足利義栄の評判が悪すぎる。

関白が困ることではないと言われたところで、推挙したのは前久。前久は決定したのは自分ですので、伊呂波太夫が唆したとは言いません。そういうところはよい。

しかも、覚慶が元服するという。一条院にいたあのお方の背後には、二条晴良がいると前久は悔しそうにいいます。

二条家は関白の位を近衛家が独占していることが気に入らない。だから、将軍選びで鼻を明かしたい。

扇を握りつつ、そう明かす前久。

覚慶の元服をするから越前に行けと、帝からご下命があったとこぼします。そこで名代として伊呂波太夫を派遣したいそうです。

伊呂波太夫は目を不敵に光らせ、路銀はいかほどかと聞いてきます。

金を取るのかと渋い顔をする前久。姉みたいなものでも、そこは明朗会計。なんでも前久が生まれる以前に、近衛家とは縁を切ったそうです。それでも弟のように可愛がったのに、と不満そうな前久ですが、逆らえません。

伊呂波太夫は、京都を美しくし、塀をなおすためにも金を稼ぐと言い切ります。そう言われて、前久は逆らえないのでした。

 

これが2020年代の大河ドラマよ

それにしても、毎週脚本が素晴らしいこのドラマ。

池端さんが室内劇を描くと、語彙力とセリフの長さがぐっと、これまた厚みを増す。

台本を渡された側が、どうやって読むのかずっと考えて、覚えて、演じる。大変だろうとは思う。

でも、そういう難しいボールを投げられることは、栄誉でもあることでしょう。信頼し合う現場の力を感じます。

「三淵の奸計(かんけい)」というタイトルからして、よいではありませんか。

策略とか、そういうわかりやすさではなく、「奸計」ですもの。今年の大河は、リミッターを外してきた気がします。

「もっと簡単にしないと、視聴者はついてこられませんよ」

「ほっこりするような場面が欲しいですね」

そういう甘やかしがない、スパルタです。

公式サイトで丁寧に解説しつつ、難易度はぐっと上げる。前川良一さんの担当回でも『軍師官兵衛』とは難易度が違う。

鍛えてくるという力強い宣言を感じるし、これが2020年代のドラマでもあります。

どの家庭でもスマホやタブレットがあるわけではないとはいえ、世界的にそういう視聴方法を模索する時期に来ているわけです。

掲示板に書き込んで、SNSでつぶやいて、スマホをぽちぽちしながら見るのならば、難易度はむしろ落とすべきだという考えが、2000年代から2010年代にはあったかもしれない。

けれども、配信時代は難易度をあげて、ファンの考察を盛り上げた方がよろしい。そういう時代になってきました。

リミッターをはずせて、作る側も嬉しいことだと思います。大変だけど、挑戦のしがいがあると。

 

上洛に協力できる大名はどれだけいる?

かくして足利義昭は、一乗谷に招かれ、永禄11年(1568年)4月、元服を果たすのでした。

烏帽子親を務めるのは義景。

二条晴良も見守っております。

将軍となり、三好勢へ巻き返しを図る準備は整いました。

「あなめでたや〜」

そう祝いの声が響く。こういう儀式を再現することにも意味があります。勉強になります。

明智家では、光秀と左馬助が話し合っています。

このころの戦国大名はどうなっているか?

【越後】上杉

動けそうにない。甲斐・武田に寝返った家臣(本庄繁長)を討ち果たすと大騒ぎ。

【近江】六角

織田信長に敗北した斎藤義龍を匿っているとか。三好の手の者が出入りしていて、当てにならない。

大きなところで、上洛できるのは朝倉と織田のみ。それで京の三好勢と戦えるのかどうか?

元服を果たした三淵藤英細川藤孝兄弟は、やれると言っている。朝廷もそのつもりだからこそ、二条様をよこしたと。

この会話そのものが、おそろしいものがありますね。

そんなに朝廷は綺麗な人々ではない。

どうしたって、後世の人間はバイアスをかけてしまう。上杉家の義と愛とか。朝廷の輝かしさとか。でも、当時の人は生々しく、冷静に考えるとしょうもない足の引っ張り合いをしていると。

こういうゲスな、美化していない日本史こそ、見たかったんですよね!

どいつもこいつも……戦だの勢力争いで、人が死ぬ。そういう現実はあるわけです。

それでも争う、権力をめぐり足を引っ張りあう。つくづく汚い。それも歴史だし、学ぶ意義だと思います。

そして、それこそがトレンドだとも感じます。

『十三人の刺客』にも、『鎌倉殿の十三人』にも期待だ!

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