災害が起きた時に被害を最小限に抑え、素早く復旧・復興を進めるには、地域での官と民、関係団体の連携が欠かせない。
ここ数年、被災地では、支援にあたるNPOを中心に、ボランティアの受け入れを担う社会福祉協議会、地元自治体などが「情報共有会議」を設けることが定着してきた。これを一歩進め、平時から協力関係を築いておきたい。
7月の熊本豪雨では、NPO「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク」(KVOAD、熊本市)が開く「火の国会議」が、防災関係者の間で改めて注目された。
16年4月の熊本地震後に立ち上げられ、物資の提供や支援活動に関する情報を持ち寄り、被災者のニーズとつないできた。震災から4年を経ても定期的に会合を重ねていたことが、豪雨災害への備えになった。
今回、新たに直面した課題がコロナ禍への対応だ。全国からボランティアや支援団体を受け入れてよいか。難しい判断だったが、KVOADが調整し、災害支援の全国団体が示した指針も参考に「県内からに限定」との方針への協力を呼びかけた。
一方で、土砂の撤去や家屋修理など、県内では不足する専門的な要員については、一部の被災自治体が県外の団体を受け入れた。この時の対応にもKVOADがかかわり、支援や周知に努めた。
岡山県では2年前の西日本豪雨をきっかけに「災害支援ネットワークおかやま」が発足した。NPO、大学、企業など約190の団体が名を連ね、「被災家屋」「生業」などテーマごとに部会を設けて活動中だ。
ただ、こうした事例はあまり多くない。この夏の内閣府の調査では、40の道府県が「連携の仕組みがある」としたが、年に何回か会議を開くだけというところも目につく。
連携を災害時の実践につなげるには、何が必要か。
6年前に立ち上がった「おおさか災害支援ネットワーク」は先行例として知られる。参加団体が回り持ちで事務局を担い、「顔の見えるゆるやかな連携」をうたってきた。しかし、2年前の大阪北部地震の際、支援活動の調整や地域外との連絡を十分に行えなかった。「問題解決型」の組織を意識し、障害者への支援など具体的な課題ごとに模索を続ける計画だ。
連携は一朝一夕には深まらない。北海道と岩手、岡山では、金融機関の「休眠預金」を社会課題の解決に使う試みの一環として、災害支援のネットワークを整える事業が始まった。こうした公的支援を増やすなど、各地の取り組みを後押ししたい。
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