
初期症状が分かりにくい糖尿病ですが、引き起こす合併症は、進行すると生命を脅かす恐れがあります。多くの有効な治療法があることを知り、進行を防ぎましょう。
糖尿病・内分泌代謝科部長
村上雅子医師 に聞きました。
Q:糖尿病とはどんな病気?A:すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが足りず、血液に含まれる糖分(血糖)が多くなる病気です。初期段階ではほぼ無症状のため、血液検査で初めて診断される場合がほとんどです。喉が渇きやすい・空腹が満たされない・多尿・疲れやすさなどの症状がありますが、糖尿病が進行すると、網膜症・神経障害・腎症・動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳卒中)など、寿命を脅かす合併症を引き起こします。
Q:どんな人がなりやすいのですか?A:遺伝によるところもありますが、肥満や運動不足、ストレス、感染症、すい臓自体の病気が原因になることがあります。
Q:糖尿病になってしまったらどうしたらいいの?A:糖尿病は、食事療法・運動療法・薬物療法で治療します。中でも食事療法は、合併症予防のためにも続けていくことが大切です。まずは、自分にとって一日に必要なエネルギー量を知り、栄養バランスのいい食事を心がけましょう。塩分のほか、コレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品、中性脂肪を増やす甘いものは控えめに。逆に、充分に食べたいのは、食後の血糖急上昇を抑えてコレステロールの排泄を促す食物繊維。過食や偏食をせずに、規則正しい食生活が大切です。
生命を脅かす糖尿病による
合併症を進行させない! 発病の初期段階では自覚症状がない糖尿病ですが、治療しないで放置していると、合併症が出てきてしまいます。長期間、高血糖状態が続くと血管がボロボロになり、それによって合併症を招くのです。糖尿病の代表的な合併症といえば、神経障害・網膜症・腎症。中でも、最も発症が早いといわれているのが、神経障害です。例えば、糖尿病になると、足の水虫や靴ずれなどのわずかな傷から感染症が悪化して、潰瘍や壊疽(えそ)になりやすくなります。皮膚が黒ずみ、化膿が進行してひどくただれ、今にも骨が見えそうな状態になって初めて治療に来られる方もいます。こうした症状の患者さんはきまって「痛くなかったので」とおっしゃいます。それが合併症の一つ、知覚神経障害なのです。ひどい場合は、足や指の切断、また、敗血症を起こして死に至ることもある恐ろしい病気なのです。失明に至る糖尿病網膜症、人工透析が必要になる場合もある腎症など、日常生活や生命を脅かすのが合併症なのです。糖尿病で治療が不十分なまま放置すると、糖尿病でない人より約10年短命である事が明らかになっています。原因の一つとして、糖尿病患者さんは、そうでない人よりも癌の発症の確率が高いことが上げられます。
日々の生活を見直して
合併症を起こさない体に! こうした合併症に至らないためには予防策の実践と治療が必須です。共通しているのは、食事・運動・薬物療法によって、血糖をより正常にすること、早期発見・治療のために定期的に検査を受けることです。糖尿病の検査の一つに、血糖値の測定があります。健康であれば空腹時の血糖値は70~110mg/dl。126 mg/dl以上になると糖尿病型といえます。食事・運動療法は、自分の体重や年齢、合併症などを考慮するため、医師と相談しましょう。食事療法といっても、特に食べてはいけない食品はありません。医師の指示によるエネルギー量と栄養バランスに気をつけ、過去1カ月の血糖値の平均値「ヘモグロビンA1c」を7%以下に保つことが大切です。生活の質を保てるよう、癌の発症を抑えて、短命にならないよう、さらには早期から認知症を発症しないよう、早速、今日からでも治療を始めましょう。
浅塲さん(左から2番目)を囲んでの看護師間のミーティング
浅塲さんは、患者さんへの対応を提案する看護師の後方支
援といったところ
昨年末、看護師の浅塲(あさば)香さんが、当院第1号となる「がん看護専門看護師」の資格を取得しました。そこで、専門看護師の役割をご紹介します。「専門的な知識と技術を持つ専門看護師は、患者さんが病気と向き合うための支援や、医療者と患者さん・患者さんとご家族のより良い関係の調整、看護師の教育や 研究などさまざまな方面においてサポートします」と浅塲さん。医療面からメンタルまで、一人ひとりの患者さんにとって、将来を見据えた上での最善策を提案 し、治療効果を高めます。身体的・精神的な負担の多いがん治療だからこそ、不安要素を軽減する早期ケアが重要になるのです。医師・看護師・院内の多職種、 そして地域医療と協働し、患者さんが安心して過ごせる環境づくりを目指す専門看護師の存在は、がん治療の現場に新しい風を運んでくれそうです。個別のご相談はがん相談支援センターでお受けしています。