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 長崎県川棚町の石木ダム建設予定地で、計画に抗議する住民たちがしつらえた倉庫などの撤去を、県が求めた期限が19日に迫る。事業を進める県は「衝突は避けたい」としつつ、期限直後の撤去も否定はしない。住民側は抵抗する構えだ。

 県は、ダム本体工事に先立ち、水没する県道の代替道路約3キロの建設を進めるが、住民が座り込みを続ける場所の前後では作業が進んでいない。

 住民は、この一帯3カ所にテーブルやいすなどを持ち込んで休憩場所にしている。県は今月上旬、これらの私物の撤去を求める県石木ダム建設事務所長名の看板を3カ所に立てた。19日までに撤去しなければ県が撤去すると通告している。県河川課の担当者は「この区間の現場の盛り土工事の工期が8月末までに迫っているためだ」と説明する。

 水没予定地の川原(こうばる)集落では昨年、移転を拒んで住み続ける住民13世帯の土地が強制収用され、所有権が国に移った。付け替え道路の用地一帯は、買収に応じて集落を離れた住民から県が取得した土地だ。

 県の通告を受け、住民13世帯は全戸で話し合い、「抵抗もせずに明け渡せば、本体着工に向けて県を勢いづかせる」との考えで一致した。住民の一人は「新型コロナウイルス感染拡大のもと、(衝突は)もちろん避けたいが、これまでの闘いの延長線上にある当然の結論」と話す。

 県の担当者は「住民との衝突は避けたい。全体の工期への影響を見極めながら撤去の時期を検討する」と話している。(原口晋也、榎本瑞希)