- イタリアでは9月第3週に、1日の新型コロナウイルス新規感染者が1500人を下回った。一方、フランスは1万400人、スペインは1万500人、そしてイギリスでは3700人だった。
- イタリアが、スペインやフランスのようにウイルスの第2波によって大きな被害を受けていないのは、ソーシャルディスタンスや手洗い、マスク着用といった対策を今も続けているからだ、とウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
- イタリアでは、猛威を振るった第1波によって25万人が感染し、3月のピーク時には1日に6000人が新規に感染したとガーディアン(The Guardian)は伝えている。
- パンデミック以来、公共の建物内や公共交通機関、また人気の多い屋外でも、マスク着用が義務付けられるようになった。
- イタリア政府は観光産業の成長には目を向けておらず、8月にはクラブの営業も禁止している。
イタリアを襲った新型コロナウイルスの第1波はあまりにも被害が大きく、6カ月が経った今もイタリア国民は対策の習慣を守っている。一方で、対策の手を緩めた他のヨーロッパ諸国は第2波に直面している。
感染者がヨーロッパ全土で再び広がる中、イタリアは9月第3週、1日あたりの新規感染者が1500人を下回った。一方で、フランスの1日あたりの新規感染者は約1万400人、スペインは約1万500人、イギリスでは約3700人だった。
イタリアがスペインやフランスのような第2波に直面していないのは、イタリア国民がソーシャルディスタンスや手洗い、マスクの着用などの対策を続けているからだとウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal:WSJ)は報じている。
イタリアで猛威を振るった新型コロナウイルスの第1波によって、約25万人が感染し、3月のピーク時は1日あたり約6000人が感染していたとガーディアン(Guardian)は伝えている。
特に被害の大きかったロンバルディア地方のベルガモ市では遺体安置所が不足し、感染による死亡者の遺体がイタリア軍によって周辺地域へ移送された。一方、病院は患者であふれかえり、酸素が供給される事態になった。
ディナーパーティーが大好きだというミラノ在住のエンリカ・グラツィオリ(Enrica Grazioli)さんはパンデミック以降、まったくゲストを招いていないとWSJに語った。
グラツィオリさんは、対策は大袈裟だったかもしれないとしながらも、「だが、我々は甚大な死者数を出した国家的な悲劇に見舞われた。そしてこのことはそう簡単には忘れられない」と語った。
イタリアでは、公共の建物内や公共交通機関、そして屋外でも人が多く集まる場所では現在もマスクの着用が義務付けられている。
WSJによると、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)とデータ分析企業YouGovによる調査で、85%のイタリア国民が公共の場ではマスクを着用していると答えており、これはスペインを除けばヨーロッパで最も高い比率だという。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの分子寄生虫学者でイタリアのパドヴァ大学に出向しているアンドレア・クリサンティ(Andrea Crisanti)氏はテレグラフ(Telegraph)に、イタリアが2週間の検疫期間を維持していることを重要な要素として挙げている。他のヨーロッパ諸国は、検疫を7日から10日程度にまで緩和している。また、感染状況の把握も重要な要素だとクリサンティ氏は述べた。
「無症状者を含む陽性者が出るたびに、患者の家族、友人、そして職場関係者に至るまで、すべての人を検査した。こうして今、我々はすべてのクラスターを掌握した」
また、イタリア政府は観光部門の成長を度外視しており、8月にはクラブの営業を禁止したとテレグラフは伝えている。一方でスペインは、家族の集まりや路上でのパーティー、そしてナイトクラブの営業など、規制を緩和したことで第2波の拡大を招いたとみられている。
イタリア政府も懸命に取り組んでいる。
イタリアの国立衛生研究所によると新型コロナウイルスへの感染が分かったイタリア人の3分の2以上は、症状が出たからではなく、スクリーニング検査と感染経路を遡ることによって発覚した、とWSJは報じている。
だが、イタリアも感染の第2波を完全に封じているわけではない。イタリアの学校は7月14日から再開しており、学校を介した感染拡大の可能性が懸念されている。
ミラノのサクロ・クオーレ・カトリック大学の心理学教授グエンダリナ・グラフィーニャ(Guendalina Graffigna)氏は、WSJに「人々は3月、4月には感染を恐れていた。それは短期的な結果に影響を与えたが、これがいつまで続くかは明確でない」と述べた。
「我々は地中海国家の人間で、他の国々に比べて感情で動くことが多い」とグラフィーニャ氏は語った。
(翻訳:忍足亜輝、編集:Toshihiko Inoue)