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世界最強の大魔王、貴族の落ちこぼれに転生する~無能・生き恥・面汚しと蔑まれ、実家を追い出されたけど、二千年前の力が覚醒して無双する~ 作者:月島 秀一
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第3話:追放と覚醒【三】


 レオ兄さんを倒した俺は、すぐに現実へ引き戻された。


「に、兄さん……? しっかりしてよ、レオ兄さん……!」


 ボロボロになった彼の体を抱き上げ、その肩を()すったが……なんの反応もない。


「し、死んでる……っ」


 瞳孔(どうこう)は完全に開き切っており、胸はピクリとも動かず、脈も完全に止まっていた。


「あれ、もしかしなくても……死んでる、よな?」


「う、嘘だろ……。レオニクスは、あの『火焔(かえん)の騎士』だぞ? 同じ勇者の末裔(まつえい)でも、ここまで力の差があるのかよ!?」


「というか、そもそもこれって人殺しなんじゃ……っ」


 あまりにも突然の死に対し、周囲が大きくざわつき始めた。


(……レオ兄さんは、確かに一度死んでしまった)


 だけど、まだ間に合う。


「――<蘇生(シリカ)>」


 十秒以内に死亡した者の魂を引き寄せ、もとの体に定着させる秘術。

 神殿の最高位――賢者様にのみ許された第六位階の大魔法を発動させた。


「ぅ、ぁ……お、俺は……?」


蘇生(シリカ)>によって、なんとか息を吹き返したレオ兄さんは、ゆっくりと上体を起こし、不思議そうに周囲を見回す。 


「あぁ、よかった……。兄さん、目が覚め――」


「――ひ、ひぃいいいいいいいいい!?」


「え?」


 彼は情けない声をあげながら、尻餅(しりもち)をついたまま後ろへズリズリと下がった。


「わ、悪かった……! 俺が悪かったから、これまでいじめてきたのも全部ひっくるめて謝るから……命だけは、命だけは勘弁してくれぇ……っ」


 レオ兄さんは額に頭を(こす)り付け、ガタガタと震えながら謝罪の言葉を述べる。


「う、うん、わかったよ。そんなことより、体の具合は――」


 俺が一歩前に踏み出したその瞬間、


「く、来るなぁ! ば、ば、ば、化物ぉおおおおおおおお……ッ!?」


 レオ兄さんは泡を食って逃げ出した。


「……えー……」


 俺が呆然(ぼうぜん)としていると――周囲の人たちが一斉にこちらへ押し寄せてきた。


「す、すげぇええええ! 殺して、生き返らせたぁああああ!?」


「なぁおい、さっきの斬撃はどうやったんだ!? 一振りで十回ぐらい斬らなかったか!?」


「いやいや待て待て! そんなことよりもあのとんでもねぇ回復魔法だよ! まるで『伝説の賢者様』みたいだったぞ!?」


「人が悪いぜ、ルーグの坊主! 何が『なんのギフトもいただけませんでした』、だ。お前さん、ギフトなんざなくとも鬼のように強ぇじゃねぇか!」


 大勢の人たちから()みくちゃにされた俺は、


「す、すみません……失礼します……っ」


 なんとか必死にキャルルを抱きかかえ、すぐにこの場を走り去るのだった。



 一時間後。

 乗り合いの中型馬車へ駆け込んだ俺とキャルルは、大きなため息をつく。


「ふぅ、酷い目に()ったな……」


「きゃるぅ……」


 街のあちこちを走り回ったため、彼女もちょっとばかし疲れているようだ。


 それからしばらくの間、俺は車窓(しゃそう)から外の景色を眺め、キャルルは足元ですやすやと気持ちよさそうに眠り、それぞれ思い思いの時間を過ごした。


 都から離れるにつれて、街道を行き()う人の数はどんどん減っていき、その代わりに美しい自然が増えていく。


「うわぁ、綺麗な風景だなぁ……。こんなことならせめて、鉛筆とキャンバスだけでも持って来ればよかったな……」


 俺は昔から絵を描くのが好きだった。

 抽象派・印象派・写実派とか、難しいことはあまりよくわからないし、多分そんなに上手でもない。


 ただ、気の向くままに筆を動かして、この世界の平和な風景を描くことが大好きなのだ。


 父さんや母さんから白い眼で見られ、兄さんたちからいじめられている中でも、一人で黙々と絵を描いている時間だけは幸せだった。


(生活が落ち着いたら、世界中を旅して絵を描いて回るのもいいかもしれないなぁ……)


 そうして一時間・二時間・三時間と馬車で揺られ続けていると――とある停留所で、二人のお客さんが乗って来た。

 八十歳は超えていそうなおばあさんと七歳ぐらいの小さな女の子だ。


(あの子……目が悪いのかな?)


 女の子は目をつぶったまま、おばあさんに手を引かれて、馬車に乗り込んできた。


「――段差があるから、気を付けるんだよ」


「うん、ありがとう」


 乗車口から聞こえてきた会話から察するに、どうやらあの子は目が見えないようだ。

 ちょうど隣が空席だったこともあり、二人はゆっくりこちらへ向かってくる。


 そのとき、不意に馬車が大きく揺れた。


「え、わっ!?」


 目の見えない少女はバランスを崩し――眠っているキャルルの尻尾を思いっ切り踏み付けてしまった。


「――きゃ、きゃるぅ!?」


 彼女は甲高い悲鳴をあげ、その場でぴょんと跳び上がる。


「キャルル、大丈夫か!?」


「キャルルルルルルルル……ッ」


 安眠を邪魔された彼女の機嫌は悪く、牙を()き出しにして喉を(うな)らせた。


「ご、ごめんなさい……っ」


「も、申し訳ございません。この子は目が不自由なもので、悪気はないのです……。どうか、お許しください……っ」


 女の子とおばあさんは、腰を折って謝罪の言葉を述べた。


「……きゃるぅ」


 キャルルは不承(ふしょう)不承(ぶしょう)といった風に牙を収め、俺の足元でクルクルと丸くなって再び眠りにつく。


「お気になさらないでください。ちょっとびっくりしただけみたいですから。こちらの方こそ、驚かせてしまってすみませんでした」


 俺がぺこりと頭を下げれば、二人はもう一度「すみません」と言って隣の席へ座った。

 ちょっとした騒ぎが収まったところで、俺は気になっていたことを聞いてみることにした。


「あの……目が悪いんですか?」


 こちらの問い掛けに対し、女の子は小さくコクリと頷き、おばあさんは元気のない声で話し始める。


「はい……。この子は――ルゥは、私の可愛い孫娘なのですが……。生まれたそのときから、ずっと目が見えないのです。ただ、お医者様の話によれば、目そのものにはなんの異常もないようでして……」


「目に異常がないのに、目が見えない……?」


 なんだかそれは、道理が通っていないように思えた。


「はい、私にも何がなんだかよくわかりません……。お医者様は『神殿の賢者様に頼めば、なんとかしてもらえるかもしれない』と言ってくださったのですが……。そんな大金、私の残り少ない人生を全て懸けたとしても、到底用意できるものではありません……」


 神官様の回復魔法を用いた治療は、お医者様の一般的な治療よりも遥かに高額だ。

 その治療費は、高位の神官様に頼むほど大きくなっていき……。

 神殿の最高位――この国でもわずか数人しかいない『賢者様』に頼もうものならば、それはもう天文学的な額のお金を用意しなければならないと聞く。


「無理を承知のうえで、何度か神殿へも足を運んでみたのですが……全て門前払い。今はわずかな可能性に()けて、あちこちの街へ出向き、お医者様に診てもらっております。実は今日もその帰りなんですよ……」


「なるほど、そうだったんですね……」


 俺とおばあさんがそんな話をしていると、ルゥという名前の女の子が口を開く。


「……おばあちゃん、いつも迷惑ばかり掛けてごめんなさぃ……」


「いやいや、ルゥはなんにも気にしなくていいんだよ。あなたはなんにも悪くないんだから」


 おばあさんは柔らかく微笑み、ルゥの背中を優しく()ぜてあげていた。


「あの……俺、ちょっとした回復魔法なら使えますので、もしよかったら少し()せてもらえませんか?」


完全回復(リ・ティルト)>ならば、ルゥの視力を回復させてあげられるかもしれない。


「ほ、本当ですか!? ぜひお願いしま――」


 おばあさんが目を輝かせたそのとき、


「――残念だけど、その子の目は治らない」


 馬車の一番奥に座っていた女性が、突然そんなことを口にした。


「えっと、あなたは……?」


 俺が質問を投げ掛けると、彼女はスッと立ち上がり、こちらへ歩いてくる。


「ノエル=スノーフィールド。神殿を追放されたはぐれ賢者」


 ノエル=スノーフィールド。


 肩口あたりで揃えられた、透き通るような白銀の髪。

 身長は百五十五センチほど。

 年齢はおそらく、十五歳前後だろう。

 柔らかい目元・宝石のような紫紺(しこん)の瞳・新雪(しんせつ)を思わせる白い肌――百人が百人とも振り返るような美少女だ。


 目鼻立ちはとても整っているのだが、表情の変化にやや(とぼ)しく、どこか落ち着いた雰囲気を(まと)っている。

 服の上からでもわかる大きな胸・健康的なくびれのある腰つき・真っ直ぐ伸びた手足――プロポーションについても非の打ちどころがない。

 丈の短い真っ白なワンピースの上から、濃紺のアクセントが入った純白のローブを羽織っており、足には清潔感のある白のニーハイソックスを穿()いている。

 右手に握られているのは白銀の杖。その先端には紺碧(こんぺき)の結晶が付けられており、何やらとても高そうだ。


 ノエルさんは小さく息を吐き出し、ルゥの方に杖を向けた。


「――<上位回復(レタ・ティルト)>」


 清浄な魔力が溢れ、第三位階の回復魔法が発動。

 ルゥの目元に淡い光が集まったのだが……それは突然パンッと弾けるように消滅した。


「……やっぱり駄目……。あなたの目は運命神(うんめいしん)によって、閉じられてしまっている。残念だけど、今後一生開かれることはない」


「こ、今後一生……っ」


 過酷な宣告を受けたルゥは、思わず言葉を詰まらせてしまう。


「ど、どうしてそんなことがわかるんですか? もしかしたら、治るかもしれないじゃないですか……!」


 俺が思わず立ち上がり、抗議の声をあげると――ノエルさんは小さく頭を下げた。


「気を悪くさせたのなら謝る。だけど、私も一緒だから……」


 彼女はそう言って――突然服を少しずらし、その(あで)やかな左肩を露出させる。


「え、ちょ、いったい何を……!?」


「これが運命神の呪い」


 ノエルさんが指をさした場所――左肩には、小さな黒い紋様が刻まれていた。


「生まれたときからずっと、この左腕はピクリとも動かない。運命神によって、運動機能を奪われてしまったの。私はこれまで必死に回復魔法を勉強して、神殿の賢者にまでなったけれど……結局、この腕を治すことはできなかった。運命神の定めた運命は絶対。――だから、諦めた方がいい。無理な希望を持つのは、とてもつらいこと」


「だ、だけど……っ。諦めてしまったら、可能性がゼロになってしまうじゃないですか!」


「……あなたはとても優しい人。ただ、現実は残酷。もしも回復魔法に覚えがあるなら、試してみるといい」


「……わかりました」


 俺は右手に魔力を集中させ、ルゥの前に腰を下ろす。


「今から回復魔法を使うから、ちょっとだけ動かないでね?」


「う、うん……っ」


「ふぅー……<完全回復(リ・ティルト)>」


 魔法が正しく発動し、彼女の目元へまばゆい光が集まっていく。


「……驚いた。まさか大儀式もなしに第五位階の魔法を発動させるなんて……っ」


 ノエルさんは一瞬驚いた顔を見せた直後、すぐに首を横へ振った。


「だけど、駄目。やっぱり彼女の『全盲(ぜんもう)』という運命は、運命神の秩序によって定められて――」


 彼女が諦めの言葉を口にしたその瞬間、


「――つまらんな」


 俺の口から、自分でもびっくりするぐらい冷たく乾いた声が漏れた。


「え?」


「あっ、いや、すみません……っ。今のはちょっとした独り言みたいなものだと思うので、なんというかその……気にしないでください」


 苦笑いを浮かべながら、なんとか無理矢理に誤魔化した。


(だけど、おかしいな……。どうして<完全回復(リ・ティルト)>が正常に機能しないんだ?)


 魔法の『発動』には成功しているのだけれど、何故かその『効果』が発揮されず、ルゥの目は一向に開く気配がない。


 よくよく目を凝らして、現状をしっかり観察してみると――俺の手のひらと彼女の目の間に『小さな黒い粒』が見えた。


「……なんだこれ……?」


 よくわからないけれど、この変な粒が正常な回復を阻害しているように感じた。


「まさかそれが見えるなんて……とてもいい眼をしている。その塊は、運命神の力の結晶。何人たりとも破壊することのできない、絶対的な神の秩――」


「――邪魔だな」


 黒い粒を指で()まんでやれば――プチッと潰れた。


「……え? ……え!?」


 直後、<完全回復(リ・ティルト)>が正常に効果を発揮し、ルゥの目がゆっくりと開かれていく。


「――これでよしっと。どうかな? ちゃんと見える?」


「……み、見える……っ」


 彼女はゆっくりと周囲を見回し――とある一点で固まった。


「……おばあちゃん……?」


「あぁ、ルゥ……。本当に見えているんだね……!」


「あはは、想像していた通りだ。おばあちゃん、とっても優しい顔をしてる」


「ルゥ、ルゥ……っ」


 ルゥとおばあさんは、ボロボロと大粒の涙を流しながら、二人でギュッと抱き締め合った。


「お兄ちゃん、本当にありがとう……!」


「ありがとうございます、ありがとうございます……っ。いったいなんとお礼を申し上げればよいのか……ッ」


 ルゥは大輪の花が咲いたような笑みを浮かべ、おばあさんは何度も何度も感謝の言葉を述べた。


「いえいえ、ルゥの目が見えるようになってよかったです」


 俺がそう言って、自分の席に戻ろうと振り返れば、


「あなた、いったい何をしたの!? どうやって運命神の秩序を破壊したの……!?」


 目と鼻の先にノエルさんの綺麗な顔があった。

 女の子特有の甘い香りが鼻腔(びこう)をくすぐり、頭がちょっとだけクラリとする。


「な、なんだかあの黒い粒が悪さをしているみたいだったので、指で潰してみました。それとその、ちょっと近いです……っ」


「つ、『潰してみました』って……ッ」


 彼女はゴクリと唾を呑み、改めてジッとこちらを見つめた。


「あなたは今、『神の秩序』を破壊した。これは人類が、神に打ち勝ったということ。間違いなく、歴史に残る大奇跡」


「奇跡だなんて、そんな大袈裟な……」


 俺は羽虫サイズの小さな塊をプチッと指で擦り潰しただけで、奇跡と呼ばれるようなことは何もしていない。


「あっ、そうだ。ここで会ったのも何かの縁ですし、ノエルさんのも治しておきますね」


 俺は彼女の左腕に<完全回復(リ・ティルト)>を発動。

 するとその直後、やはりというかなんというか、さっきと同じように変な塊が邪魔をしにきた。


「ノエルさんのは、ちょっと大きいですね」


 泥団子ぐらいだろうか。

 まぁ豆粒サイズだろうと、泥団子サイズだろうと大きな差はない。

 ギュッと拳で握ってやったら、光る粒子となって消滅した。


 同時に<完全回復(リ・ティルト)>が正常に効果を発揮し、ノエルさんの左肩に刻まれた黒い紋様は綺麗さっぱりなくなった。


「これで治ったと思うんですが、どうでしょうか?」


「す、凄い……。大奇跡が、二度も……っ」


 ノエルさんは「信じられない」といった風に目を白黒とさせながら、動くようになった左腕をグーパーとしていた。

 どうやら、無事に治ったみたいだ。


「あ、貴方の名前、教えてほしい……!」


「る、ルーグです。後それから、かなり近いです……っ」


「ルーグ、ルーグ、ルーグ……覚えた。もう一生忘れない。お願い、ルーグ。私に魔法を――神の秩序を滅ぼす秘術を教えて……!」


「いや、そんなことを言われましても……」


 俺は誰かに何かを教えられるほど、優れた人間じゃない。

 というかそもそも、『神の秩序を滅ぼす秘術』なんて知らない。


「私にできることならなんでもする。だから、お願い……っ」


「え、えーっと……」


 いったいどうしたものかと(ほほ)を掻いたそのとき――馬のいななきが響き、馬車が急に止まった。


「な、なんなんですか、あなたたちは……!?」


「ごちゃごちゃうるせぇぞ! 手を頭の後ろに回して、地面に這いつくばれ! おら、早くしねぇとぶち殺すぞ!」


「ひ、ひぃ……っ」


 御者(ぎょしゃ)さんの怯えた声に続き、物騒な怒鳴り声が響いた。


 窓の外を見れば、剣を握った人相の悪い男たちの姿。

 どうやらこの馬車は、野盗の襲撃を受けているようだ。


「――おい、乗客ども! 命が惜しければ、両手を上にあげて、一人ずつゆっくりと降りてこい!」


 野盗の命令を受け、乗客たちは一人また一人と馬車を降りていく。


「お、おばあちゃん……っ」


「大丈夫だよ。おばあちゃんが付いているからね」


 不安げな表情のルゥへ、おばあさんが優しく声を掛け、


「ルーグ、どうする?」


 ノエルさんは小さな声で耳打ちをしてきた。


「……ひとまず、言う通りにしておきましょう。今ここで抵抗したら、他の乗客に被害が出てしまいます」


「わかった」


 そうして俺たちは、両手を上にあげたまま馬車から降りた。


「――ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……へへっ、十人もいやがるぜ。今日は大漁だな!」


 顔に傷のある大男は、乗客の数を数えて満足げに笑う。


(前方に五人と後方に三人、合計八人か……。この感じだと、他に仲間はいなさそうだな……)


 敵の正確な位置と人数を把握した俺は、ノエルさんだけに聞こえるよう小さな声で話し掛ける。


「俺が前の五人を斬るので、後ろの三人を任せてもいいですか?」


「任せて。私は賢者、攻撃魔法の心得がある。三人ぐらいなら一瞬で片が付く」


「ありがとうございます。それでは、五秒後に行きましょう」


「うん」


 彼女がコクリと頷いたことを確認してから、小さな声でカウントを始める。


「五……四……三……二……一……!」


 俺が素早く剣に手を滑らせ、ノエルさんが杖を握り締めたその瞬間、


「「「ヴォオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛……ッ!」」」


 まるで地鳴りのような雄叫びが轟き、ズシンズシンズシンと三つの着地音が響いた。


(あれは、グレートオーガ!?)


 三メートルを超える巨躯(きょく)

 隆起(りゅうき)した筋肉を搭載した(いわお)のような肉体。

 通常のオーガよりも、遥かに強力な魔獣だ。


「くっ、<氷槍(ラグザ)>……!」


 反射的に攻撃魔法を展開しようとしたノエルさん。

 俺はそんな彼女に「待った」を掛けた。


「ルーグ、どうして!?」


「あのグレートオーガ、何か様子がおかしいです」


 いったい何故か、理由はわからないが……。三匹のグレートオーガは、こちらにまったく目も暮れず、野盗にばかり攻撃を加えていた。


「グォオオオオオオオオッ!」


「ガァアアアアアアアアッ!」


「ゴゥウウウウウウウウッ!」


「ひ、ひぃいいいい!?」


「い、痛ぇよぉおおおお……ッ」


「誰か、助けてくれぇええええええええ……!」


「くそ、あっちへ行きやがれ!」


「どうしてだ、なんで俺たちばっかり狙うんだよ……!?」


 そうしてあっという間に全ての野盗を葬ったグレートオーガたちは、ゆっくりとこちらへ視線を向け――その場で膝を突いた。


「オガ、ぇ゛リ、ナザイ、マゼ……ッ」


 先頭のグレートオーガは、ひどく聞き取りづらいガラガラ声で何かを口にした後、深く深く頭を下げた。


 俺の気のせいじゃなければ、その目には涙のようなものが浮かんでいるように見えた。


「み、みなさん! 今のうちです! 早く馬車に乗ってください!」


 御者(ぎょしゃ)さんの大きな声が響き、乗客たちは慌てて馬車に乗り込んだ。


「ルーグ! 私たちも行こう……!」


「は、はい!」


 俺はノエルさんに手を引かれながら、乗り合い馬車へ駆け込む。

 俺たちが逃げようとしているのにもかかわらず、グレートオーガは平伏したまま動かない。


(……あのグレートオーガ、俺に何か伝えようとしていなかったか……?)


 いや、さすがにそれはちょっと考え過ぎか。


■とても大切なお願い■


目標の【1万ポイント】まで、後ほんの少し……っ。

なんとか今日中に達成したいっ! が、ここからの伸びが本当に難しいんです……っ。


どうかお願いします。

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