今回は、ニッカウヰスキーによるワールドウイスキー、ニッカ セッションを飲みます。

余市、宮城峡に加え、ベン・ネヴィスも

n_session_ニッカ セッションの最大の特徴は、余市、宮城峡のモルトに加え、ニッカウヰスキーが所有するスコットランド西ハイランド地方にあるベン・ネヴィスのモルト、その他スコッチモルトをブレンドした「ワールドウイスキー」、多国籍ウイスキーであることです。

ここ数年、ハイボールブームから始まった日本のウイスキー消費の増加は、「マッサン」の放映によって拍車がかかり、さらには海外でのジャパニーズウイスキーの評価上昇、中国人観光客などのインバウンド需要の増加も加わったことで、日本のウイスキーメーカーは原酒枯渇の危機に瀕してしまいました。

ウイスキーは数年間の熟成が必要であるため、ブームに乗って一気に増産してカバーできるものではなく、増産したウイスキーの熟成が終わるまで、様々な代替策でしのいでいるのが現状です。

近年では、サントリーが「Ao(碧)」、キリンが「陸」と、日本のモルト、グレーンだけでなく、スコッチ、アメリカンなどの他国のモルト、グレーンをブレンドした多国籍なウイスキー「ワールドウイスキー」をリリースしています。

そしてニッカも満を持して、ワールドウイスキーに参戦したと言えます(過去のボトルで海外の原酒を使っていたという噂はありますが)。

ニッカ セッションでは、国内の余市、宮城峡のモルトはもちろんのこと、ニッカウヰスキーが所有しているベン・ネヴィス蒸溜所のモルト、その他スコッチ蒸溜所のモルトもブレンドされています。

ベン・ネヴィス蒸溜所は、モルト原酒のほかグレーン原酒の製造も可能な蒸溜所で、シングルモルトであるベン・ネヴィス10年のほか、フォート・ウィリアム、ネヴィス・デューといったブレンデッドウイスキーも販売しています。

そもそもの製造量、貯蔵量も、ブーム以前の消費の落ち込みで減らしていた余市、宮城峡よりも比較的潤沢といえるわけで、苦境の中で、このワールドウイスキーは生まれたと言ってもいいでしょう。

他の日本メーカーと比べて、グレーンウイスキーを使わない、ブレンデッドモルトで勝負したところがニッカの本物志向を追求するポリシーを貫いたように思えます。

今回は比較する参考として、ベン・ネヴィス10年も飲んでみます。

ニッカらしさを維持しつつ、変化も楽しめる

グラスからの香り、液色

グラスからは、鼻を突き刺すほど強いラムレーズンの香りがします。
液色は薄い琥珀色です。

ストレート

まず余市の塩気と、正露丸を思わせるピートが先にしっかり訪れます。その後ラムレーズン、キャラメル、バニラ、レモン、カカオへと続きます。

味わいは、アルコールからの辛みは少なめで、全体的に酸味が比較的強く感じられます。

ベン・ネヴィス10年と比べても、やはりピートの強さは半端なく、余市モルトをかなり前に出している印象に思えます。一方でバニラの甘い香りはベン・ネヴィスのモルトの影響も覗えます。

ロック

ピートのスモーキーな香りは、余市の燻製っぽさが目立つように変わります。ラムレーズンはマスカットのようなフレッシュな香りに変化し、青リンゴの香りも現れてきます。奥からはバニラと共に樽のウッディな香りも加わります。

味わいは、ほろ苦さが多少感じられるものの、酸味が中心であることに変わりはなく、後味に甘みが加わります。

ベン・ネヴィス10年では、レモンのような爽やかさとバニラの甘い香りはありますが、セッションほど強くは感じられません。

一方で甘みの部分ではベン・ネヴィスの影響が多少感じられるように思えます。

ハイボール

ピートの香りは抑え気味になり、レモン、マスカット、青リンゴ、バニラの香りが主体となります。
味わいは、少々苦みが強めに感じられるものの、酸味がそれを上回ります。

ベン・ネヴィス10年だと、香りはバニラ、ウッディさがメインですが、セッションほどの香りの強さはありません。
味わいは、少々苦みが強いように思え、セッションの傾向に近づきます。

おまけ

おまけとして、手元にあったニッカ カフェモルトを加えた状態でストレートで飲んでみました。
余市のピーティさは抑えられ、カフェモルトからのバナナの香りが加わり、ノンエイジ同士なのにとてもソフト、アルコール感がほとんどなくなってしまいました。
もしかしたら、双方とも長期熟成された原酒も加えているのかも知れません。

まとめ

ベン・ネヴィスなどのモルトを入れても、ニッカらしさを失わない、余市、宮城峡のモルトの比率を高めにしたような印象に思えます。
一方で正露丸を思わせるピートは、アイラモルトを使っている可能性もあるでしょう。

いずれにしても、海外のモルトを入れても、ブラインドテストでニッカだと言えるほどしっかりとした余市の香りを残していることは、ニッカファンにとっては安堵するかも知れません。

一方で飲み方や時間の経過と共に香りや味わいが変化する様は、まさにセッション、ジャズにおけるジャムセッションを想起させられます。

インディゴのボトルも印象的で、棚に並べておくだけでもかなり目立ちます。

700mL、アルコール度数43度、価格は4000円ほど。
ノンエイジのブレンデッドモルトとしては高めですが、まろやかで熟成感もしっかりしているので、値段相応の品質を感じられるでしょう。

5万ケースを限定で出すとのことですが、近所の酒屋さんでも大量にボトルが並んでいたので、入手困難とはならないでしょう。

通販では、一気になくなると思い込んでプレミアムがついていますが、購入は直接お店で買う方が遙かにお得です。

<個人的評価>

  • 香り A: 余市由来(アイラも含め?)のしっかりしたピートが印象的。ラムレーズン、バニラ、レモン、カカオもしっかり。
  • 味わい A: ノンエイジと思えないほどアルコールからの辛みは少ない。酸味がメインで後から甘みが加わる。
  • 総評 A: ベン・ネヴィスを加えながらも、ニッカらしさを失わないブレンドは流石。