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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~ 作者:九頭七尾

第一章

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第61話 一緒に食べませんか

「た、倒せた、のか……?」

「さすがに死んでる、だろ……」


 僕の必殺技〝施設プレス〟を喰らっては、さすがにオークキングとは言え、絶命したはずだ。

 ただ、恐ろしいまでの耐久力を知っているので、誰もが確信を持ち切れずに戸惑っていた。


「えーと、それじゃあ、今から石垣と物見塔を消してみます。起き上がってくる可能性はないと思うけど、一応、注意していてください」


 僕はそう声をかけてから、石垣と物見塔を消去した。

 するとそこに現れたのは、心なしか体積が八割くらいになって倒れるオークキングだ。


「……うん、死んでる」


 恐る恐る近づいて確認してみると、完全に呼吸が止まっていた。


「や、やった……」

「オークキングを……倒したんだ……」


 次の瞬間、緊張から一気に解き放たれたように、その場にいた誰もが大声で叫んだ。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」


 近くにいた者と抱き合ったり、ハイタッチを交わし合ったりする村人たち。


「しかし最後のあれは村長だよな?」

「そりゃ、あんな真似、村長以外にできないだろ」

「村長マジすげぇ」


 うんうん、みんなよく頑張ったよ。

 特に狩猟チームは……って、怪我は大丈夫かな!?


 中でも酷かったのは盾役の二人だ。

 僕は慌てて彼らの傍に駆け寄る。


「村長……おれ、村長を護れた……?」

「うんうん、ノエルくんのお陰だよ! って、凄い怪我じゃんか! ほら、ポーション飲んで!」

「え、でも、それ、貴重な……」

「良いから良いから!」


 遠慮しているノエルくんに、僕は無理やりポーションを飲ませる。


 確かにポーションは希少だけど、今回のことでエルフたちには新たな貸しができたわけだし。

 きっとまたお礼にくれるはずだよね!


「ゴアテさんもお疲れさまでした。はい、ポーション飲んでください」

「あ、ありがとうございます、村長」


 断っても強引に飲まされると理解したのか、ゴアテさんは素直に受け取ってくれた。


「おい、オレにはねぇのかよ?」


 と、向こうから声をかけてきたのは、元親玉のドリアルだ。


「最後にちょっと働いただけでしょ? あと、思ってたより盾として弱かったし」

「ちっ、酷ぇ言い様だな」


 そりゃ、犯罪者だからね。

 今回は特別に牢屋から出してあげただけで、同じ扱いをしてもらえると思ったら大間違いだ。


 まぁでも、お陰で助かったのは事実だし、今後の処置については改めて検討するとしよう。


「あ、あの……」


 そこへおずおずと近づいてくるエルフがいた。

 珍しく髭を生やしたダンディなエルフだけれど、今は疲労のためかやつれた印象を受ける。


「貴公が村長のルーク殿で……?」

「はい、そうです。ええと、あなたは?」

「も、申し遅れたのじゃ……儂は、族長のレオニヌス=メル=レボーレ=ランデリヌス=エルシボーラと申しますのじゃ」


 どうやら族長さんらしい。

 ていうか、やっぱり名前が長い……っ!


「この度は大変申し訳ございませんでした……っ!」


 そう言って、いきなり頭を下げ出すレオニヌスさん。

 他のエルフたちもそれに倣って、次々と首を垂れていく。


「もはや我々には、この村に助けを求める以外になかったのですじゃ……っ! しかし貴公らからすれば、我々はオークの群れを引き連れ、村を危険に晒した咎人に他ならぬ! どんなそしりも罰も甘んじて受けましょうぞ……っ!」


 レオニヌスさんは覚悟の決まった顔でそう主張してくる。

 それは他のエルフたちも同様だった。


 あまりに決死の表情をしているので、もしかしたら奴隷として売られるとでも思っているんじゃないだろうか?


「ええと……()()()()()より、皆さん、ここまでずっと逃げてきてお疲れですよね? きっとお腹もすいていると思います」

「……え?」

「実は先ほど大量のオーク肉が手に入りまして……。きっとこの村だけでは消費し切れないと思うので、よかったら一緒に食べませんか?」

「な……」


 驚くエルフたちを余所に、僕は村人たちに呼びかけた。


「というわけで、今夜はオーク肉でのバーベキュー大会です! みんなで協力して準備しましょう!」

「「「おおおおおおおおおっ!」」」


 男たちが雄叫びを上げ、我先にとあちこちに転がっているオーク肉、もといオークを抱え、家屋の方へと走っていく。

 さっきまで恐怖の対象だったはずのオークが、今や完全に肉にしか見えなくなったみたいだ。


「る、ルーク殿……今のは一体……」

「はっはっは!」


 困惑しているレオニヌスさんの横から、大きな笑い声が聞こえてきた。

 フィリアさんだ。


「言っただろう、父上。ルーク殿の器は、この魔境の森よりも大きいと」


 あ、族長さん、フィリアさんのお父さんなのね。


「そしてそんなルーク殿の人柄ゆえか、この村の人族たちも素晴らしい方々ばかりだ。きっと今回のことで、我々を咎めようと考えている者はいないだろう」

「フィリアヌス……どうやらそのようじゃの」


 レオニヌスさんはそこでようやく笑みを見せた。


「皆の者、聞いたか! この村の方々は、我らの良き隣人であることを我は確信する! 彼らの厚意に心から感謝し、親愛を深めようぞ!」

「「「はっ!」」」


 と、そこで僕はあることに気が付いて、彼らに提案した。


「あ、でも、その前にちょっとお風呂に入ってはいかがですか? かなり汗を掻いちゃったみたいですし……」


 ……少し臭うので、とは言えない。


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