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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~ 作者:九頭七尾

第一章

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第51話 先にお風呂に入りませんか

「あれがエルフか……」

「すげぇ美人ぞろいだ……」

「いや、あの中には男のエルフもいるはずだぞ」

「え? マジか。あれで男なのか……?」


 突然やってきたエルフたちが珍しいようで、話を聞きつけた村人たちが続々と集まってくる。


「あんまりジロジロ見るんじゃないわよ」

「「「……す、すいません、セレンさん」」」


 セレンがそれを咎めると、村人たちは慌てて下を向いたり明後日の方向を向いたりする。

 しかしやはりエルフに興味津々らしく、横目でその動きを追いかけていた。


「申し訳ないわね、フィリア」

「いや、セレン殿、気にしなくていい。我々の里に案内したときも、似たようなものだったからな」


 どうやら二人はすでに打ち解けているらしい。


 他のエルフたちは警戒したりや緊張したりしているようだけれど、フィリアさんだけは注目を浴びてもどこ吹く風とばかりに堂々としている。

 ……すごく男前だ。


「それにしても、いつの間にこんな荒野に村が……? 作物など育たない場所だったはずだが……。あの巨大な塊は何だ? まるで家らしきものが見当たらないが……」

「あ、あれが家なんです。一応、マンションっていうらしいんですが、簡単に言うと幾つもの家屋がくっ付いた形で、集合住宅になっているんです」

「まんしょん? 人族は不思議な家に住んでいるのだな」

「いえ、あれはこの村特有のものなんです」


 ひとまず僕は彼女たちを村長宅、つまり僕の家に連れていった。

 門を潜って庭に入り、村人たちの視線が途切れると、フィリアさん以外のエルフたちは明らかにホッとしたような顔をする。


「安心してください。ここは僕たちだけなので」


 エルフたちを迎えるこちら側は、僕とセレン、それからミリアの三人だけだ。


 護衛のため狩猟チームから何人か来てもらってもいいかなと思ったけれど、フィリアさんたちを信頼することにした。

 僕たちに危害を加える気はないだろう。


「お気遣いに感謝する」


 こちらの意図に気づいたようで、フィリアさんが礼を言ってくる。


「正直、我々は人族に対してあまりいいイメージを持っていなかった。だが、少なくとも貴殿らは信用できるようだ。いや、恩人にこのようなことを言うのもどうかとは思うが」

「気にしないでください。悪い人がいることは確かですし、過去にはエルフの皆さんを苦しめたこともあると聞いていますから」


 それからリビングに案内し、ソファに座ってもらおうとしたとき、僕はあることに気づいてしまう。

 そして恐る恐る提案した。


「……あの、よかったら先にお風呂に入りませんか?」


 はっきりとは言えないけれど……フィリアさんたち、結構身体が汚くて……その、に、ニオイもちょっと酷い感じだったのだ。

 同じことを思っていたのか、セレンが即座に同意する。


「それがいいわね! この村、いつでも温かいお風呂に入ることができるのよ」

「なるほど……確かに、村人たちが随分と清潔なように感じたが……」


 詳しく聞いてみると、どうやらエルフの集落にお風呂などないらしい。

 近くを流れる川で水浴びをし、汚れを落としているそうだ。


「ただ、やはり冬が近づいてくると、身体を拭くくらいになってしまう」


 寒いもんね。


「し、しかし、フィリア戦士長、さすがに無防備すぎるのでは……」

「問題ない。どのみち彼らが我々を害そうという気なら、そのような手を使わずとも簡単なことだろう」


 ちょっと警戒されちゃったみたいだけれど、フィリアさんが部下の進言を一蹴する。


「ええと、男性用のお風呂はこっちです。女性用はセレンに付いていってください」


 一応この屋敷には露天風呂が二か所あるのだ。

 元から付いていたお風呂もある。


 驚くべきことに、彼らのうち半分が男性だった。

 見た目じゃ全然分からなかったよ!


 美形なだけじゃなく、体格も女性とほとんど変わらないからね。

 一番背が高いのはフィリアさんだし。


 そうして僕は男性陣を露天風呂へと連れていた。


「こんな外にお風呂が……?」

「池ではないのか?」

「いや、湯気が出ているぞ?」


 驚く彼らを促して服を脱いでもらいつつ、僕も裸になった。

 一緒に入った方が警戒を解いてもらえそうだからね。


 と、そこへ。


「ふむ、あれが露天風呂か。開放的でよいな」

「でしょ? 毎日あれに浸かるだけで、一日の疲れがすべて吹き飛ぶのよ」


 なぜかフィリアさんたち女性陣までこっちにやってきた。


「ちょっ、何で!?」


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