第11話 村レベルが2になりました
「まさか、こんなところに村があったなんて……」
「つい最近できたばかりでまだ三人しかいませんが、一応、僕が村長のルークです」
「村長様、申し遅れました。私はベルリット。一応、この集団を代表しております」
ベルリットと名乗ったその集団のリーダーは、三十代半ばほどの男性だった。
本来なら屈強な体格なのだろうけれど、ロクに食べていないのか、今は痩せ細って骸骨のようだ。
彼だけじゃない。
女性も子供も、例外なく酷い飢餓状態のようだった。
そんな彼らを、僕は村の中へと招き入れていた。
セレンやミリアとも話して、危険はないとの判断だ。
詳しい話を聞いてみると、やはり彼らは難民らしかった。
村を捨てて逃げてきたらしい。
男性が少ないのは強制的に徴兵させられたせいで、高齢者が全然いないのは体力がなくて足手まといになりかねないからと、村に置いてきたからだという。
村長だったベルリットさんの父親もそうして村に残った一人で、今はベルリットさんがこの集団を率いている。
老人は徴兵されたり奴隷にされたりする可能性が低いので、若者の足手まといになるよりは、住み慣れた村に残りたいという人が大半だったみたいだ。
「そうして我々は、当てもなく彷徨った果てに、この荒野へと辿り着きました。水も食べ物も尽きかけた中、ようやく発見したのが、この場所だったのです」
「そうだったんですね……。えっと、まだ収穫前で、僕たちも十分な食糧があるわけじゃないですが……できる限りは用意しましょう。あ、水についてはそこに井戸があるので、好きなだけ飲んでもらって構わないです」
「ほ、本当ですかっ? ありがとうございます!」
飢え以前に、かなり喉が乾いていたようで、難民たちは井戸へと殺到した。
うーん、井戸が一つじゃ足りなさそうかな?
よし、ポイントも余ってるし、もう一つ作っちゃおう。
〈村ポイントを20消費し、井戸を作成します〉
「皆さん! あちらにも井戸がありますので、そっちも使ってください!」
「本当だ!?」
「さっきまであそこに井戸なんてあったか……?」
「何にせよ、ありがたい!」
彼らが喉を潤している間に、昨日セレンが狩ってきたばかりの猪をミリアが調理。
残っていた小麦の在庫も使い果たす。
「少ないですが、どうぞ」
「「「おおおおおっ!」」」
よほど空腹だったのか、難民たちはあっという間にこちらが用意した料理を食べ尽くしてしまった。
「こんなありがたい施しをしていただき、なんとお礼をすればよいものか……」
ひとまず腹が満たされたところで、ベルリットさんが涙ながらに感謝を口にする。
他の村人たちも、まるで神を崇めるような勢いで僕たちを拝んでいた。
それでも、これで彼らの危機が去ったわけじゃない。
この荒野で生き抜いていくなんて、とてもじゃないけれど不可能だろう。
〈彼らを村人にしますか?〉
そのとき僕の心の中を察したかのように、視界の端にその文字が浮かび上がった。
「……ベルリットさん」
「村長様? 何でしょう?」
「良かったら、この村に住みませんか?」
「えっ?」
驚くベルリットさんに、僕は提案する。
「実はちょうど人手を欲していたところなんです。あそこに収穫間際の畑が見えると思いますが、たった三人で収穫するのは大変です。それに、きっと僕たちだけで食べるには多過ぎるでしょう」
「し、しかし、我々の多くは女子供……期待されるほどの労働力を提供できるとは……」
「そうかもしれませんが……でも、気にしないでください。困ったときはお互い様ですよ」
「ああ……ありがとうございます……ありがとうございます……」
僕の言葉に、ベルリットさんが号泣しながら礼を言う。
次の瞬間、視界に次々と文字が現れた。
〈ベルリットを代表する51人が村人になりました〉
〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が10人を超えましたので、村レベルが2になりました〉
〈レベルアップボーナスとして、200村ポイントを獲得しました〉
〈作成できる施設が追加されました〉
〈最大村面積が増加しました〉
〈スキル「村人鑑定」を習得しました〉
〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が30人を超えましたので、村レベルが3になりました〉
〈レベルアップボーナスとして、300村ポイントを獲得しました〉
〈作成できる施設が追加されました〉
〈最大村面積が増加しました〉
〈スキル「配置移動」を習得しました〉
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