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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~ 作者:九頭七尾

第一章

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第4話 彼女を村人にしますか?

「す、素晴らしいです、ルーク様! 一瞬でこんなものを作ってしまわれるなんて!」


 どこからともなく出現した小屋を前に、ミリアが僕を称賛してくる。


「人間が生活する上で重要なのが、衣、食、住です。そのうちの一つを、こんなに簡単に解決されてしまいました」

「うーん、と言っても、僕は何もしてないんだけどね……」

「(わたくしとルーク様との愛の巣が……ぐふふふ……)」

「ミリア?」


 小屋を作ったので、村ポイントの残りが30になった。


「小屋がもう一ついるかな? それとも畑や井戸を作るか……どちらも20ポイントで作れるみたいだし」

「なんと、作れるのは小屋だけではないのですか?」

「うん」


 僕が迷っていると、ミリアが叫んだ。


「井戸にしましょう!」

「え? でも、こんなに狭いし……二人で寝るのも……やっぱり小屋はもう一つあった方がいいと思うんだけど」

「いいえ! 狭いと言っても、スペース的には十分でしょう! それよりも今、最優先するべきは水です! 人間、食事ができなくてもそう簡単には死にませんが、水がなければ数日程度で死んでしまうと言われています!」

「そ、そうなの……? じゃあ、井戸にしようかな……」


 ミリアの熱に押されて、僕は井戸を選択することにした。

 一応、まだ数日分の水くらいはあると思うんだけど……。


「(危ないところでした……ですが、これで夜はルーク様と一緒……ぐふふふ……)」


 なぜかホッとしているミリアを横目に、僕は井戸を作り出す。


〈村ポイントを20消費し、井戸を作成します〉


 またしても一瞬だった。

 岩を組み合わせて作られた円形の井戸が出現したのだ。


「あれ? でもこれ、蓋が開かないんだけど」


 井戸の蓋を取り外そうとしても、ビクともしない。

 もしかしてこれ、井戸そのものと接着してるんじゃ……。


 代わりに不思議なモノがくっ付いていた。


「何だろう、これ? うわっ!?」


 取っ手のようなものをぐいっと押してみたら、突然、管のようなところから水が噴き出してきた。

 慌てて元に戻すと、すぐに水が止まる。


「もしかして、これを操作して水を出せるってこと?」

「とても便利ですね……お城の井戸は水を汲み上げるだけでも一苦労で、こうした肉体労働を専門とする奴隷に任せていました」


 そもそもこうして安全に手に入る水を確保できただけで大きいという。

 こんな荒野に水場なんてない。

 だから井戸がなければ、雨が降るのを待って、雨水をどこかに溜めておく必要があった。


 もし雨が降らなかったら農業もできないし、先ほどミリアが言ったように、喉の渇きで死んでしまったかもしれない。


 これで村ポイントが残り10になった。

 10ポイントで作れるものはないので、一日待たなければいけない。


「一日で10回復するみたいだし、明日にはもう一つ小屋を作れるかな」

「次は畑にしましょう! 絶対に畑にすべきです! 作物の種は幾らか持ってきましたが、植えたからといって、すぐに収穫できるわけではありません! できるだけ早く種蒔きをすべきでしょう!」

「う、うん……じゃあ、そうしようかな……」


 ミリアの剣幕に押されて、僕は頷くしかない。


 と、そんな彼女の顔のすぐ下に、文字が浮かんでいた。


〈彼女を村人にしますか?〉

「え? ミリアを村人にできるってこと?」

〈はい。本人が許可すれば、村人にすることが可能です〉


 そう言えば、先ほど村人の数が0になっていたけど、どうやら僕自身は村人の数には数えられないらしい。

 つまりミリアが村人になってくれたら、最初の一人ということになる。


「えっと……」

「もちろん構いません。ぜひ村人にしてください」


 僕が言おうとしていることを察したのか、ミリアが先回りして言ってきた。


「いいの?」

「先ほど申し上げましたでしょう。ルーク様の行くところであれば、火の中水の中、どこへだってお伴いたしますと。ルーク様がここに留まって村をつくるというなら、わたくしは微力ながらぜひそのサポートをさせていただきたいです」


 ミリアの意志は固いみたいだ。


「ありがとう、ミリア」

〈ミリアを村人にしました〉


 こうしてミリアが最初の村人となったのだった。


 それと同時に、僕はちょっとした決意をしていた。

 この謎のギフトの力を使って、本当にこの荒野を開拓し、自分の村を作ってみせようじゃないか、と。


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