現職の小池百合子東京都知事は5日、元日本弁護士連合会長の宇都宮健児氏(立憲民主党、共産党、社民党が支援)、れいわ新選組代表の山本太郎氏、元熊本県副知事の小野泰輔氏(日本維新の会推薦)らを押さえて、史上最多の22人が立候補した東京都知事選を制した。今回の得票数は366万1,371票で前回の291万票を大きく上回り、2位の宇都宮氏に281万票の差をつけての圧勝だった。新型コロナウイルスの影響が懸念された都知事選だったが、投票率は55%で、前回(平成28年、2016年)の59.73%を4.73%下回った。
小池知事は、統合型リゾート(IR)については、一貫して「メリット・デメリットを見ながら検討している」と発言してきたが、「国の計画が後ろ倒しになってきていることも注視している」とも指摘している。7月26日がデッドラインである国のIRの基本方針策定・公布の予定が見えず、全体にスケジュールが遅れつつある中、既に手を挙げている大阪や横浜、和歌山、長崎に出遅れていた東京都の出方に注目が集まる。小池知事は記者会見で、IRについては触れなかったが、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックについては、開会式閉会式、各競技の簡素化を図りながら実施するとし、令和元年度の税収が大幅に伸びたこともあり、自信を見せた。今回の圧勝で都政運営を安定させ、経済振興策として検討される可能性が出てきた。
東京都は過去、IRについて、歴代都知事の石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏、舛添要一氏が比較的、前向きに取り組んできた。しかし、猪瀬氏、舛添氏の立て続けの失脚で、都政の運営が弱体化し、チャレンジであるIR構想は「検討」課題になりトーンダウンした。今回、小池氏が選ばれたことにより、安定した都政が可能になり、「検討」で先延ばししてきたIR案件を、国の施策の新型コロナウイルスの影響による遅れもあり、後発組であることを逆に強みにして最適な提案を打ち出せる条件はそろってきている。
東京都は実際、「検討」段階とはいえ、着実に取り組みを進めている。
東京都港湾局は、2014年度~2019年度に7回もIRについての調査を実施しており、2018・2019年からは東京都に立地した場合の影響調査に踏み込んでおり、2020年度も継続している。
2018年には「東京ベイアリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」を設置、昨年10月に最終提案「東京ベイエリアTowards2040 11カラーズ;未来創造域のデザイン」を提出。この中で、が「MICE、IR、トランジットツーリズム」という項目で、「世界に向けて『ここにしかない』ベイエリアツーリズムを展開する」として、「東京の国際競争力強化『稼ぐ東京』のためにMICE、IR施設を整備して、国内外から人を集める」と明記している。
港湾局はさらに、昨年10月31日、IRやMICEとは書かれていないものの、「青海地区のまちづくりに向けた民間事業者からの事業提案」の募集(サウンディング調査)の実施を発表、今年の1~2月に対面式で聞き取りを行っている。
新型コロナウイルスの影響で、国も各自治体もIRについての作業が大きく遅れてきており、特に海外の事業者は、ラスベガス、マカオ、シンガポールなどで閉鎖や再開しても大きく縮小した活動を強いられており莫大な損失を被っている。そういう中、有力事業者のラスベガス・サンズが日本のIRから撤退するなどの事態も起きているが、経済圏としての大きさ、アクセスなどは、ほかの候補自治体に比べても東京は圧倒的な優位性を持っている。今回の都知事選の結果、メリット・デメリットを見極めるとしてきた小池知事が動けば、大きなインパクトがあるだろう。
※7月5日20:00記事配信、7月6日7:00最新情報追記
■関連記事
7月26日までにIRの基本方針は策定・公表されるのか!?
https://jair.report/article/330/
■関連資料データベース
令和元年度 東京都港湾局・特定複合観光施設に関する調査分析報告書(2020年3月31日)
https://jair.report/archive/293/
小池知事は、統合型リゾート(IR)については、一貫して「メリット・デメリットを見ながら検討している」と発言してきたが、「国の計画が後ろ倒しになってきていることも注視している」とも指摘している。7月26日がデッドラインである国のIRの基本方針策定・公布の予定が見えず、全体にスケジュールが遅れつつある中、既に手を挙げている大阪や横浜、和歌山、長崎に出遅れていた東京都の出方に注目が集まる。小池知事は記者会見で、IRについては触れなかったが、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックについては、開会式閉会式、各競技の簡素化を図りながら実施するとし、令和元年度の税収が大幅に伸びたこともあり、自信を見せた。今回の圧勝で都政運営を安定させ、経済振興策として検討される可能性が出てきた。
全体にIRスケジュールが遅れる中、後発組もまだ間に合う!?
東京都は過去、IRについて、歴代都知事の石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏、舛添要一氏が比較的、前向きに取り組んできた。しかし、猪瀬氏、舛添氏の立て続けの失脚で、都政の運営が弱体化し、チャレンジであるIR構想は「検討」課題になりトーンダウンした。今回、小池氏が選ばれたことにより、安定した都政が可能になり、「検討」で先延ばししてきたIR案件を、国の施策の新型コロナウイルスの影響による遅れもあり、後発組であることを逆に強みにして最適な提案を打ち出せる条件はそろってきている。東京都は実際、「検討」段階とはいえ、着実に取り組みを進めている。
東京都港湾局は、2014年度~2019年度に7回もIRについての調査を実施しており、2018・2019年からは東京都に立地した場合の影響調査に踏み込んでおり、2020年度も継続している。
2018年には「東京ベイアリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」を設置、昨年10月に最終提案「東京ベイエリアTowards2040 11カラーズ;未来創造域のデザイン」を提出。この中で、が「MICE、IR、トランジットツーリズム」という項目で、「世界に向けて『ここにしかない』ベイエリアツーリズムを展開する」として、「東京の国際競争力強化『稼ぐ東京』のためにMICE、IR施設を整備して、国内外から人を集める」と明記している。
港湾局はさらに、昨年10月31日、IRやMICEとは書かれていないものの、「青海地区のまちづくりに向けた民間事業者からの事業提案」の募集(サウンディング調査)の実施を発表、今年の1~2月に対面式で聞き取りを行っている。
新型コロナウイルスの影響で、国も各自治体もIRについての作業が大きく遅れてきており、特に海外の事業者は、ラスベガス、マカオ、シンガポールなどで閉鎖や再開しても大きく縮小した活動を強いられており莫大な損失を被っている。そういう中、有力事業者のラスベガス・サンズが日本のIRから撤退するなどの事態も起きているが、経済圏としての大きさ、アクセスなどは、ほかの候補自治体に比べても東京は圧倒的な優位性を持っている。今回の都知事選の結果、メリット・デメリットを見極めるとしてきた小池知事が動けば、大きなインパクトがあるだろう。
※7月5日20:00記事配信、7月6日7:00最新情報追記
■関連記事
7月26日までにIRの基本方針は策定・公表されるのか!?
https://jair.report/article/330/
■関連資料データベース
令和元年度 東京都港湾局・特定複合観光施設に関する調査分析報告書(2020年3月31日)
https://jair.report/archive/293/