大内裕和中京大教授、「盗用ネタ」初披露は大阪弁護士会主催の講演か

 大内裕和中京大学教授の盗用問題であらたな事実が判明した。

 雑誌『選択』2012年4月号に掲載された筆者(三宅)執筆の記事「奨学金『取り立て』ビジネスの残酷」の一部が、2013年10月刊行の単行本『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房、三宅らとの共著)の1章(大内氏執筆)にほぼそのまま無断で流用され、以後多数の雑誌にも同様の流用がくり返されていることは、これまでお伝えしたとおりである。

 今回わかったのは、「あけび書房」本の刊行直前の2013年10月12日、大阪弁護士会主催の講演で、大内氏はすでに『選択』記事を流用した話をしていたという事実である。



 大内氏が作成した講演の要約文書には、「奨学金制度の現状と課題」と題してこんな記載がある。

2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行く。この金の行き先は銀行と債権回収専門会社
 2010年度期末で民間銀行からの貸付残高はだいたい1兆円で、年間の利払いは約23億円です。サービサーは同年度、約5万5000件を日立キャピタル債権回収など2社に委託し、16億7000万円を回収していて、そのうち1億400万円が手数料として這われている

(以下略)


 
 私が書いた『選択』の記事はこうだ。

◆元記事 『選択』(2012年4月号)三宅記事

 一〇年度の利息収入は二百三十二億円、延滞金収入は三十七億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている。この金の行き先のひとつが銀行であり、債権管理回収業者(サービサー)だ。一〇年度期末で民間銀行からの貸付残高はざっと一兆円。年間の利払いは二十三億円。また、サービサーについては、同年度で約五万五千件を日立キャピタル債権回収など二社に委託し、十六億七千万円を回収、そのうち一億四百万円が手数料として払われている。

(101頁3段目13行目〜4段目4行目)

 大内氏は、自身が2017年に出版した図書『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)のなかで、私が『日本の奨学金はこれでいいのか!』の2章で書いた記述を流用した。これに今年夏気づいた私は、大内氏に説明を求めた。すると大内氏は、盗用・剽窃ではないと回答した。その根拠として、あけび書房本の自身の記述や大阪弁護士会主催の講演での要約をあげ、内容・表現ともにすでに公表ずみであるなどと釈明した。

 今回の問題は、大内氏の釈明にある「根拠」を精査するなかで判明した。

私が大内教授問題を追及する理由

 大内裕和中京大教授の著述をめぐる問題をいくつも投稿してきた。あるいは、「個人的な話で興味がない」と不満に思われる方がいるかもしれない。たしかに、ジャーナリストを職業にしている以上、もっとほかに書くべきことがあるのかもしれない。

 だが一方で思う。

 自分の権利が守れないものに他人の権利を守ることなどできるはずがない。

 今回発覚した大内氏の盗用は、私の仕事や人格に対するひどい侮辱であり、権利侵害である。この問題に向き合うことなく、ほかの仕事に充実した気分でとりくむことはとてもできそうにない。

 ジャーナリスト業の経営を考えれば、大内問題ばかりにこだわっているのは得策ではない。それでも私は、自分の良心にしたがって、大内氏から納得のいく説明と謝罪を得るまで追及するだろう。しなければならないと思う。それが、これまで支えていただいた読者に対して、私が職業人としてとるべき誠実な姿勢だと信じるからである。
 
 

大内裕和中京大教授の科研費助成研究に「不正の疑い」、日本学術振興会に告発

 大内裕和中京大教が科学研究助成費助成(科研費)をつかった研究の一貫として発表した「奨学金」に関する著作多数に、本ブログ筆者(三宅)が過去に発表した雑誌記事の一部と酷似する記述があるなど「盗用」が疑われる問題について、29日、文科省の委託により科研費事業の事務を担う独立行政法人日本学術振興会に対して告発を行った。以下内容を転載する。

 ★独立行政法人 日本学術振興会監査・研究公正室 研究公正係
  https://www.jsps.go.jp/j-kousei/madoguchi.html

=========
日本学術振興会御中  2020年9月29日
前略
 私はジャーナリストの三宅勝久と申します。科研費の助成を受けた大内裕和中京大学教授による研究「1950年代における地域文化活動の実証的研究-民衆の自己教育運動の史資料発掘」(22330222)に関して、不正が疑われる事案が発覚しましたので通報いたします。しかるべき調査・対応をとられるようお願いいたします。
早々

●告発内容
 大内氏は「研究成果」として次の各刊行物を報告している。

1  大内裕和、岩重佳治ほか、『日本の奨学金はこれでいいのか!ー奨学金という名の貧困ビジネス』(あけび書房、 2013 年) 11−60頁

2 大内裕和「現在の奨学金制度:何が問題なのか」
『ヒューマンライツ』318 巻(2014年) 2−9頁

3 大内裕和「子どもの貧困 : 奨学金問題の視点から」
『貧困研究』12 巻(2014年) 38−44頁

4 大内裕和「奨学金返済の重荷と雇用劣化が中間層解体と人口減を深刻化する」
『Journalism』294 号(2014年) 52-59頁

5 「大内裕和、奨学金制度はこれでいいのか」
『人間と教育』81号(2014年) 96−103頁 

6 大内裕和、ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金、
『現代思想』41巻17号(2013年) 112−118頁

 以上6編の記事・著述のなかに、他者の著作物の盗用、データの盗用・改竄がみられる。

 「1」は単行本『日本の奨学金はこれでいいのか!』(2013年10月あけび書房刊、大内、三宅ら複数の著者による共著)の1章部分であるが、24頁16行目〜25頁6行目の記述は雑誌『選択』2012年4月号掲載記事「奨学金『取り立て』ビジネスの残酷」(三宅勝久執筆、著作権は三宅に所属)の101頁3段目13行目〜4段目4行目の記述と表現・内容ともにきわめて似ている。著作・データの盗用にあたる。債権回収会社の回収額に関するデータは、三宅が『選択』記事を書く際に取材を通じて得た情報であり、三宅自身の著作物を除いて一般に公表されていない。

 2〜6の各雑誌記事についても、『日本の奨学金はこれでいいのか!』と同じ箇所において、『選択』記事と酷似した記述がそれぞれ認められる。

 またこれらの雑誌記事のなかに、債権回収会社への日本学生支援機構の手数料支払額として「約1億400万円」との記載があり、盗用データの改竄が疑われる。三宅の取材に対する日本学生支援機構の回答は「1億400万円」であり、『選択』の記事に三宅は回答どおりの数字を記載した。ところが、大内氏はこれを根拠なく概数にしたとみられる。

 大内氏の上記行為は、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」及び「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」に照らして明らかに問題がある。研究助成を行った貴法人においてしかるべき調査および所属研究機関に対して調査指示をなされるよう求める。

 資料
『選択』2012年4月号記事(三宅執筆)
https://www.sentaku.co.jp/articles/view/11610
『日本の奨学金はこれでいいのか!』抜粋(大内氏執筆部分)
『ヒューマンライツ』318 巻抜粋
『貧困研究』12 巻抜粋
『Journalism』2014年11月号抜粋
『人間と教育』81号抜粋
『現代思想』41巻17号抜粋

以上

三宅勝久

大内裕和中京大教授の「奨学金」”盗用”記事は文科省助成研究だった!

 日本の「奨学金」に関する世論に大きな影響をあたえている市民団体「奨学金問題対策全国会議」の共同代表を、その設立(2013年3月)以降7年半にわたって務めている大内裕和中京大教授が、盗用が濃厚に疑われる記述をいたるところで行っている問題で、問題記事のうち6編が文部科学省の「科学研究助成金」(科研費)の助成を受けた研究であることがわかった。

 大内氏は自身の記述に科研費助成を受けたことをいっさい書いていない。そのため私はこれまで気がついていなかったが、本ブログの読者からの指摘で発見することができた。感謝申し上げたい。取り急ぎ一報をお伝えする。

 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330222/

大内裕和中京大教授、『現代思想』の寄稿文にも「盗用」ネタ

 月刊『現代思想』2013年12月号に掲載された大内裕和中京大教授の記事「ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金」のなかに、私(三宅)が『選択』2012年4月号に書いた記事の内容と酷似する記述が見つかった。引用あるいは参考文献として『選択』記事は示されていない。大内氏の独自調査で得た事実を大内氏独自の文章で表現したような書きっぷりだ。

◆月刊『現代思想』2013年12月号掲載の大内氏の記事(該当部分)

 二〇一〇年度の奨学金利息収入は232億円、延滞金収入は三七億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行く。この金の行き先は銀行と債権回収専門会社である。

(117頁上段14行目〜17行目)
 

 一方私が書いたネタ元の記事はこうだ。

◆元記事 『選択』(2012年4月号)三宅記事

 一〇年度の利息収入は二百三十二億円、延滞金収入は三十七億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている。この金の行き先のひとつが銀行であり、債権管理回収業者(サービサー)だ。

(101頁)

 『選択』関連だけで6本の盗用が確認できた。調べればまだありそうだ。

大内裕和中京大教授、雑誌『Journalism(ジャーナリズム)』でも盗用ネタ使い回し

 きょうも、大内裕和中京大教授による盗用問題の続報である。
 
 月刊雑誌『Journalism(ジャーナリズム)』(朝日新聞社)2014年11月号に掲載された大内氏の記事「奨学金返済の重荷床要劣化が中間層解体と人口減を深刻化する」のなかに、私(三宅)が『選択』2012年4月号に書いた記事の内容と酷似する記述がある。例によって、引用であるとか何がしかの文献を参考にした、などの注釈はない。普通によめば大内氏の独自調査で得た事実を大内氏独自の文章で表現したと理解するしかない。

◆『月刊雑誌『Journalism(ジャーナリズム)』(朝日新聞社)2014年11月号掲載の大内氏の記事(該当部分)

 原資の確保を優先するのであれば、元本の回収がなにより重要なはずであるが、日本学生支援機構は04年以降、回収金はまず延滞金と利息に充当する方針を続けている。10年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行っている。
 この金の行き先の一つが銀行で、もう一つが債権回収専門会社である。10年度期末で民間銀行からの貸付残高は約1兆円で、年間の利払いが23億円である。同年度、債権回収約5万5000件を日立キャピタル債権回収など2社に委託し、16億7000万円を回収していて、そのうち約1億400万円が手数料として支払われている。

(55頁下21行目〜56頁上段10行目)
 



 一方私が書いたネタ元の記事はこうだ。

◆元記事 『選択』(2012年4月号)三宅記事

 原資の確保であれば元本の回収がなにより重要だ。ところが、日本育英会から独立行政法人に移行した〇四年以降、回収金はまず延滞金と利息に充当するという方針を頑なに実行している。一〇年度の利息収入は二百三十二億円、延滞金収入は三十七億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている。この金の行き先のひとつが銀行であり、債権管理回収業者(サービサー)だ。一〇年度期末で民間銀行からの貸付残高はざっと一兆円。年間の利払いは二十三億円。また、サービサーについては、同年度で約五万五千件を日立キャピタル債権回収など二社に委託し、十六億七千万円を回収、そのうち一億四百万円が手数料として払われている。

(101頁3段目13行目〜4段目4行目)

 債権管理回収業者に日本学生支援機構が払った2010年度の手数料額は、私の記述が「1億400万円」なのに対して、大内氏のこの雑誌の記事では「約1億400万円」と概数になっている。

大内裕和中京大教授、雑誌『人間と教育』掲載記事でも盗用発覚

 大内裕和中京大教授による盗用問題について続報をお届けしたい。
 
 雑誌『人間と教育』81号(2014年3月刊)に掲載した大内氏の記事「奨学金制度はこれでいいのか」のなかに、私(三宅)が『選択』2012年4月号に書いた記事の内容と酷似する内容が、あたかも独自に調査して得た成果であるかのように記載されている。

◆『人間と教育』81号(2014年3月刊)掲載の大内氏の記事(該当部分)

 原資の確保を優先するのであれば元本の回収がなにより重要なはずであるが、日本学生支援機構は2004年以降、回収金はまず延滞金と利息に充当するという方針を続けている。2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行っている。
 この金の行き先の一つが銀行で、もう一つが債権回収専門会社である。2010年度期末で民間銀行からの貸付残高はだいたい1兆円で、年間の利払いは23億円である。債権回収専門会社については同年度、約5万5000件を日立キャピタル債権回収など2社に委託し、16億7000万円を回収していて、そのうち1億400万円が手数料として払われている。

(99頁上段28行目〜下段9行目)
 

 参考文献に『選択』の記事はない。あるのは『日本の奨学金はこれでいいのか!』のみだ。すでに繰り返しお伝えしているとおり、この本の1章は大内氏が書いたもので、その一部は『選択』記事が丸写しにされている。

 一方私が書いたネタ元の記事はこうだ。

◆元記事 『選択』(2012年4月号)三宅記事

 原資の確保であれば元本の回収がなにより重要だ。ところが、日本育英会から独立行政法人に移行した〇四年以降、回収金はまず延滞金と利息に充当するという方針を頑なに実行している。一〇年度の利息収入は二百三十二億円、延滞金収入は三十七億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている。この金の行き先のひとつが銀行であり、債権管理回収業者(サービサー)だ。一〇年度期末で民間銀行からの貸付残高はざっと一兆円。年間の利払いは二十三億円。また、サービサーについては、同年度で約五万五千件を日立キャピタル債権回収など二社に委託し、十六億七千万円を回収、そのうち一億四百万円が手数料として払われている。

(101頁3段目13行目〜4段目4行目)

 こうして調べていて気づいた。「民間銀行からの貸付残高は約1兆円」と私が書いたのは、より正しくは「民間銀行からの借り入れ残高」である。文章を発表するというのは恥をかくことでもある。それにしても、こうした修正を要する表記もそのまま大内氏は写している。他人の文章を盗んでしまう無神経さ、非常識さとともに、自分の文章や言葉にこだわりがない人なのかもしれない。