演劇・ミュージカル
【演劇ライター・大原薫の観劇コラム】小池徹平と三浦春馬が熱演!『キンキーブーツ』日本公演
2016/08/03
©引地信彦
祝祭的な輝きの中で作品のテーマが息づく
小池徹平さんのチャーリーは帝国劇場『1789~バスティーユの恋人たち~』に続くミュージカル主演。自分がどうあるべきか惑いながらも目の前の問題に体当たりしていくうちに、自分自身を発見していくチャーリーの心情を丁寧にたどる。チャーリーの心の旅路がよくわかる演技で、等身大の姿を見せた。シンディ・ローパーさん作曲によるハイトーンが続く難曲にも果敢に取り組み、魅力ある歌声を聞かせる。「THE SOUL OF A MAN~真の男~」で激しく自分の思いをぶつける姿に観客に共感を抱かせる、愛すべきチャーリーだった。
©引地信彦
三浦春馬さんのローラ。華やかな赤のドレスに身を包んでドラァグクイーンのショーに登場した瞬間から、客席はローラの虜に。「愛を持って人々を受け入れるローラ」の存在を圧倒的に印象付けた。肉体改造を経て、ただ美しいだけでなく逞しさのあるドラァグクイーン姿を見せ、ニューヨークでレッスンを積んだ歌もダンスもパーフェクト。華麗なドラァグクイーンとナイーブな男性サイモン(ローラの本名)との振幅も印象的だ。「三浦春馬meets キンキーブーツin LA」連載取材を通じて三浦さんの誠実な人柄に感心したのだけれど、真摯に役柄に取り組み最大限の努力を重ねた結果としての今回のローラ。ローラを愛し、演じる喜びにあふれる姿が観客を魅了する。
ミュージカルというと豪華絢爛な歌と踊りが身上だが、この作品の主な舞台は靴工場。地に足がついた人たちの働く姿をリアルにミュージカルの世界に乗せ、しかもそれが非常にチャーミングなのだ。ここが他の作品とは一線を画するところ。ローレン役のソニンさんはチャーリーに恋する女心をコミカルに見せて、客席を沸かせる。チャーリーを励ます場面では深い情感が漂い、ローレンがチャーリーの心情に変化を与えるきっかけとなったことに説得力があった。ローラと敵対する靴職人ドン役の勝矢さんにリアリティがあって、作品の一番キーとなる歌詞をドンが歌うのもうなずけるところ。
脚本はハーヴェイ・ファイアスタインさん。『トーチソング・トリロジー』『ラ・カージュ・オ・フォール』などの脚本で知られるが、本作のテーマは『ラ・カージュ~』の「I AM WHAT I AM~私は私~」に通じるものがあると思う。あるいは、「女の子たちは誰の制約も受けず自分らしく歩いていきたいの」と歌うシンディさんのヒット曲『GIRLS JUST WANNA HAVE FUN』にも。弱い自分をも受け入れ、自分らしく生きること。祝祭的な輝きを放つラストシーンを見ながらノリノリで手拍子するうちに、そんなテーマがストンと胸に落ちてくる快作だ。
©引地信彦
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