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極めたヒールがすべてを癒す!~村で無用になった僕は、 拾ったゴミを激レアアイテムに修繕して成り上がる!~【書籍化決定!】 作者:藤七郎は疲労困憊
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第9話 黒猫の誘い

本日2話目。

 地下一階に降りる。

 壁や床は石を敷き詰めた部屋になっていた。通路も同じく石造り。

 ダンジョンって感じになった。壁や天井がほのかに明るい。


 人が五人ほど並んで歩ける通路を歩いていく。

 時々、部屋を覗いては魔物を倒す。何匹いようとミーニャが黒い暴風となって瞬殺する。

 僕は何もしなかった。ただの荷物運びだった。


 とある部屋では、パーティーが休憩を取ったらしくゴミが落ちていた。

 武器や防具のほかに、壊れた鍋やコップ、破れた外套がある。

 一応、拾いながらも疑問に思ってしまう。


「なんで鍋やコップが壊れてるんだろ?」


「移動中に不意を突かれて襲われたら、だいたい荷物が被害を受ける」


「ああ、なるほど……これは使用者を守った証なんだ……」


 そう思うと、激戦の生き証人な気がして、穴の開いた鍋もなんだか素敵に思えた。



 ダンジョンのゴミ拾いは続いたけれど、特に危険はなかったのでさらに降りた。

 地下三階や四階に行ったけれど、強くなったはずの魔物はミーニャがすべて瞬殺した。

 魔物がグループで現れようとも、姿が分身する勢いで切り捨てていく。

 というか僕が魔物を視認した次の瞬間には、ミーニャの残像が視界にあふれて、気が付くと死体が転がっている。


 Bランクってこんなに強いんだ! と驚くしかない。

 それとも双剣士という職が強いのか。


 ……僕なんかと一緒に行動して、損させてるんじゃないかと気になった。

 もっと強いけど儲かる魔物がいるダンジョンに行った方がいいんじゃないかな?

 そんなことを考えつつ、魔核を拾い、アイテムを拾い、ゴミを拾った。



 ちなみに魔物は、パワー系が多かった。

 オークや幽霊鎧、一つ目巨人に岩ゴーレム。


 気になって尋ねるとミーニャは答えてくれた。


「ダンジョンにはダンジョンマスターに似たモンスターが出現しやすい。ここミノッサスのダンジョンマスターはミノタウロスだった。膂力の強い化け物。だからこのダンジョンには力の強いモンスターが出る」


「危なくない?」


「パワー系が多い場合、魔法を使う魔物の出現がとても少なくなるので、むしろ冒険に慣れてない人向け」


「なるほど。魔法の対処って難しそうだもんね」


 僕の答えに、ミーニャはこくっと頷く。黒髪がさらりと揺れた。



 それからも徘徊は続き。

 地下五階を一回りすると、持ってきた背負い袋はアイテムとゴミでいっぱいになった。

 袋のひもが肩にずっしりと食い込む。


 その様子を見たミーニャが、首をかしげる。


「そろそろ帰る?」


「うん、今日は十分かも」


「わかった」


 ミーニャは黒い尻尾を優雅に動かして先を歩き出す。



 階段を登りながら思う。

 ゴミが沢山拾えた。

 魔核やドロップアイテムも手に入った。


 短剣6本、小剣2本、長剣3本、両手剣1本、斧槍2本、細剣4本。鍋1、水筒3、コップ2、袋4、外套3、服1、ベルト1、兜1、帽子2。鎧らしき鉄の塊1。盾の破片2。

 全部、穴が開いたり、折れたり、破れたりしている。


 元は名刀っぽいゴミまで拾えたし、全部ヒールで治して売ったら、すごいお金になるんじゃないかな?

 背負った荷物は重いというのに、僕の足取りは軽くなる一方だった。



 ――が。


 地下三階まで戻って来た時だった。

 階段の部屋を出た僕は、いきなり横に引っ張られた。


「えっ!?」


「武器を捨てな! じゃないとこいつの命がなくなるぜ!」


 僕は男に後ろから羽交い絞めにされて、のどに剣を突きつけられていた。

 ギルドで見かけた男たちだった。確かミーニャをリンチした奴ら……。


 廊下の先を行くミーニャが、猫耳をピコっと動かして振り返る。眉間に深いしわが寄っていた。


「あなたたち……あと二人いる」



 彼女の言葉に、廊下の陰から二人の男が現れた。

 下卑た笑いを浮かべて近づいてくる。


「へへっ、ミーニャさんよぉ、久しぶりだな。まさか、生き返るとはよぉ」


「何かよう?」


 ミーニャは殺気を込めて睨みつける。


「また、おねんねしてもらいたくってなぁ。あんた、邪魔なんだよ。獣人のくせにでかいツラしやがって」


 別の男が、ミーニャを足から頭まで嘗め回すように見た。


「つーかよぉ、いつの間にか色っぽい体付きになったじゃねぇか」

「言われて見りゃ、そうだな」「ガキだとばかり思ってたら、いい体してるじゃねぇか」


「ミーニャ! 僕のことはいいから、逃げて!」


 ――ナイフで首を斬られるぐらい、僕なら死なない。



 けれどもミーニャは逃げなかった。

 眉間にしわを寄せて睨んでいたけど、唐突に上着のボタンを外し始めた。

 ふくよかな胸の谷間が晒される。


「ラースの命を助けてくれるなら、私はどうなってもいい」


「気の強いガキだと思ってたが。自分の立場ってもんが、わかってるじゃねぇか」


「ただ痛めつけるってのは芸がないよな」「ああ、お互い楽しんでからってのがいいんじゃねーか?」


 男たちは舌なめずりしながら近づいていく。


 ミーニャは後ろに下がりつつ、ますます服をはだけていく。


「でも、一つだけ――お願いがある」


「こいつの命はお前のご奉仕次第だぜっ、ひひひっ」


「違う。どうせ犯されるなら、彼氏――ラースに見られながら犯されたい……そっちの方が、興奮する」


「なっ!?」「なんだと!?」


 男たちは驚くが、髭面の男が目を血走らせて興奮した声で言う。


「へへっ――さすが黒疾風のミーニャさんだぜぇ……性癖までハイレベルときやがるっ!」


「じゃあ……来て」


 ミーニャは服の前のボタンをすべて開けた淫らな姿になると、つんと顎を澄まして廊下に面した部屋の一つに向かった。



 空気に飲まれていた男たちだったが、一人が慌てて叫ぶ。


「おい、どこに行きやがる!」


 しかしミーニャは男の声を無視して、扉に手をかけながら流し目で振り返る。


「あなたたち、猫の交尾は見たことある?」


「は? ……あの、あーおあーお、ってうるさいやつのことか? それがどうした?」


 ミーニャは黒い瞳を怪しく光らせて男たちを見渡して言った。


「そう――猫の交尾は、すべてレイプ」


 ピーンと立った黒くて長い尻尾が、誘うかのようにゆらりと揺れた。


「なっ!?」「なに!?」「まじかっ!?」


「ちょっ!? ちょっとミーニャ! それ、今ここで言う必要ある!?」


 僕のツッコミなど無視された。

 僕らが驚き戸惑っている隙に、ミーニャは空き部屋の一つにするりと入ってしまった。


「ま、待て!」「お望み通り、してやるよぉ!」「たまんねぇぜ!」


 男たちが荒い息をしながら追いかけて、部屋に飛び込んだ。

 僕は男に引きずられて部屋に入った。

ブクマありがとうございます。


次話は深夜更新。

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