挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
極めたヒールがすべてを癒す!~村で無用になった僕は、 拾ったゴミを激レアアイテムに修繕して成り上がる!~【書籍化決定!】 作者:藤七郎は疲労困憊
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
7/43

第7話 冒険者になる

 リノのお姉さんミーニャを治して二人の信頼を勝ち取った次の日。


 朝からリノがミーニャを連れて宿屋へとやってきた。

 元気いっぱいの満面の笑みで挨拶してくる。端正な顔立ちは朝日を浴びて輝いて見えた。


「おはようございます、ラースさん!」


「ラース、おはよう」


「ああ、おはよう。リノ、ミーニャ。来てくれてちょうど良かった」


「何するんですか?」


「あれから考えたんだけど、やっぱり冒険者になろうかと思ってね。ダンジョンに潜るならミーニャとパーティー組んだ方が何かと便利だし、身分証代わりにもなるし」


 ミーニャが黒髪を揺らして頷いた。


「それがいい。私が口利きすれば、ラースは冒険者になれる」


「ありがとう、ミーニャ」


「さすが、お姉ちゃんですっ」


「じゃあ、さっそく行こうか」


「ん」


「あたしは、せっかく今月末までみかじめ料払ってるので、ゴミ漁りに行ってきますねっ!」


 笑顔で言うリノと別れて、僕とミーニャは冒険者ギルドへ向かった。


       ◇  ◇  ◇


 大通りにある、白壁が美しい冒険者ギルド。

 僕はミーニャを連れて中へと入った。


 受付の女性が、ちらっと僕らを見て手元の書類に目を戻す。

 そして、はっと目を見開いて顔を上げた。僕の後ろを二度見する。


「えっ!? 黒疾風ブラックブロウのミーニャさん!?」


 その反応に僕は驚いた。

 ――ミーニャは二つ名を持つほどの実力者だったらしい。


 ミーニャは背筋を伸ばして猫耳をピピっと動かすと、ツンと澄ました顔で言う。


「そう。体が治ったから、また来た」


「あ、はい! どうぞこちらへ! ――今日はどういった要件で?」



 僕はカウンターの前まで行った。


「今日は、冒険者になりに来ました」


「冒険者になる場合、養成所で訓練を積んでから試験を受けるか、高ランク者の推薦が必要ですが……登録料は5000カルスです」


「ん。私が推薦する。すでにラースは冒険者としてやっていける実力がある」


「わ、わかりましたミーニャさん! すぐに用意しますね」


 受付の女性は、慌てつつ奥へと向かった。部屋の奥の偉そうな人に話しかけつつ、水晶玉やカードを用意していく。



 一方ミーニャは、ギルドの奥にいる冒険者を黒い瞳でじっと見ている。

 なんとなく、ミーニャの引き締まった肢体から放たれる冷たい殺気が感じ取れた。

 僕は、そうっと小声で尋ねる。


「どうしたの、ミーニャ?」


「ん。奴らがいる。不愉快」


 ミーニャの視線をたどって、僕は部屋の奥を見た。


 ギルドの奥は酒場のようになっており、そこで酒を飲んでいる男たちがいた。

 僕の体と比べて何倍も大きな男たち。胸板が厚く盛り上がっている。

 見ただけで屈強な、歴戦の戦士と見て取れた。

 酒の入ったコップを片手に持ちつつ、大きな声で騒いでいる。


 そっと小声で尋ねる。


「あいつらが、ミーニャを痛めつけたの?」


「そう。……やられたらやり返す」


「うん……その時は僕も手伝うよ。でも、人目につかないところでね」


「わかってる」


 ミーニャは黒い尻尾をピーンと立てて頷いた。



 受付の女性が戻って来る。

 カウンターに水晶玉を置いた。


「では、こちらを軽く握ってください。冒険者カードにステータスを書き込みますので」


「はい」


 僕は素直に水晶玉を握った。かすかに清浄な青い光を放った。

 そしてカードに書き込まれた。


 女性がカードを渡してくる。


「はい、登録できましたので、カードをお渡しします。こちらは身分証にもなるので、なくさないようにしてください」


「わかりました」


「では5000カルス、お願いします」


「はい」


 僕は金貨5枚を渡してから、カードを受け取った。

 カードにはいろいろな数値やスキルが書かれていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ステータス】

名 前:ラース    性 別:男

年 齢:17     種 族:人間


天 職:無職

職 業:冒険者:Lv1(E)


【パラメーター】(LvUP時、全+0.1)

筋 力:11     敏 捷:13

魔 力:$3#4   知 識:09

幸 運:=8


生命力:48     精神力:E7%&


攻撃力:150    防御力:210

魔攻力:W!=%   魔防力:?~K*


【戦闘スキル】

短剣捌きLv1:短剣全般を扱うスキル。切る、枝を払う、などがうまくなる。(熟練度:100/100)

投擲スローLv1:狩人の初期スキル。石や短剣などを投げてダメージを与える。(熟練度:100/100)


【補助スキル】

回復ヒールLvI√&:聖職系の初級魔法。生命力を少し即時回復させる。(熟練度:F*9&B1/65535)

治療知識Lv1:怪我、骨折、病気の治療方法を判断する。(熟練度:100/100)

逃走Lv1:危険な対象から逃げ出す。(熟練度:100/100)

MS%W16:おぃくjhytgfれdwsくぁ(熟練度I/0)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 僕はカードを見ながら首をひねる。


「EはEランクってことで、レベルアップした時には能力値が+0.1かぁ。弱い……ん?」


 なんだか、幾つかの表記がおかしかった。


 よくわからないので女性に尋ねる。


「あの……表記が変なんですけど」


「登録失敗したかしら? あー、ひょっとして魔法使えない職業なのに無理に魔法使ってるんでは? 表記おかしくなるんですよ――ちょっとここでは直せないので、しばらくはそのカードで我慢してください。通常の使用はできますので」


「はぁ。わかりました」


 ――ていうか、僕の天職って無職だったんだ。村人ですらないなんて。

 無職ってあれだよね? 職がない人のことだよね?


 そりゃいろいろ頑張っても、無駄なはずだよ。

 初級のヒールですらたくさんの時間かかったうえに、いまだ飛ばせないし。

 やれやれだ。



 僕がカードを見て気落ちしていると、ミーニャが傍へ来た。


「じゃあラース。さっそくダンジョンへ行く?」


「うん、お願いするよ」


「じゃあ、パーティー組む――お願い」


 ミーニャは受付の女性にカードを渡した。

 女性は二人のカードを重ね合わせて、プレス機のようなものに挟んだ。

 ガチャンと音がしてカードにパーティーが記入された。

 パーティー効果のためか、僕はミーニャのいる方向がわかるようになった。



 それから僕はミーニャに連れられて街の外の丘にあるダンジョンへ向かった。

 彼女は顎をツンと上げて、堂々と大通りを歩く。後ろから見ていると、長い尻尾がゆらりゆらりと揺れて、強者の雰囲気を漂わせていた。

ブクマありがとうございます!


次話は明日更新

→第8話 ミノッサスダンジョン

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
作者の別作品もよろしく!
日間1位! 週間1位! 書籍化!
おっさん勇者の劣等生!~勇者をクビになったので自由に生きたらすべてが手に入った~
 結果を出してたのに評価されなくて追放されたおっさん勇者が、再評価されるお話です。

小説家になろう 勝手にランキング

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。