―27― 退屈
Dクラスの教室に入る、ほとんどの生徒がすでに集まっているのか、席はまばらにしか空いていない。
席は自由に座っていいのだろう、と判断をして空いていた席に座る。
「あ、アベルさんお久しぶりです」
前に座っていた女子生徒が俺のほうに振り向き、会釈する。
銀色の髪の毛の生徒だ。
ふむ……お久しぶりと言っているということはどこかで会ったのだろうが、思い出せないな。
「誰?」
失礼を承知でそう聞いた。
「えっ!? 忘れたんですか! ミレイア・オラベリアです。あの、寮でお会いしましたよね!」
「あー」
印象が薄いから忘れていた。
これでも物覚えはいいほうだと自負しているんだがな。
「悪いな、ミレイア。同じクラスに知り合いがいて嬉しいよ」
「はい、私も同感です! これからもよろしくお願いしますね!」
ふと、そんな会話をかわしていたらガラリとドアが開く。
それまでざわついていた教室が静かになった。
「今日からお前らDクラスを担当することになったセレーヌ・バンナだ。今後ともよろしく」
入ってきたのは女の教師だったらしく、壇上にてそう挨拶をした。
特徴といえば、艶のある黒髪を後ろでまとめていることか。教師という職業柄なのだろう、女にしては気の強そうな印象を受ける。
それから先生による学院の説明が始まった。
退屈だった。
魔術の講義なら、多少興味を持って聞けそうなんだけどな。
退屈で仕方がないので、俺は『科学の原理』を机に開いては没頭していた。
「あ、アベルさん、このままだと置いていかれますよっ」
肩を揺さぶられる。
何事かと思い、本から視線をあげた。
「やっと気がついてくれた。アベルさん、読書に夢中で全然私の声届かないんだもん」
教室を見ると生徒たちが立ち上がっている。
どこかに移動するらしい。
「ありがとう。声をかけてくれなかったら一人取り残されるところだったな」
俺の肩を揺さぶってくれた生徒にお礼を言う。
それで、
「お前誰だっけ?」
「み、ミレイアですよ!? もう私のこと忘れたんですか! 流石に酷いですよ」
ミレイアがその場で慌て出す。
今のは冗談だったのだがな。
流石にこの短時間でミレイアのことを忘れるはずがない。
「アベルさん、本当に私のこと忘れたんですか! どんだけ私印象ないんですか!」
俺には妹以外の同年代の話し相手がいなかったからな。
友達との会話に慣れてない。
冗談の一つでも言えばいいかと思ったが、どうやら失敗したようだ。
「すまんな、今のは冗談だ」
「ほ、ホントですか!? ホントに冗談なんですか?」
なぜか信じてもらえてないようだ。
まぁいいかと思い俺は他の生徒たちを追いかけた。
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