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魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 作者:北川ニ喜多
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―23― 開示

「それで、どうやってお前は魔術を行使したんだ?」


 話が戻る。

 どこまで話を開示すべきか、俺は悩むが父さんなら信用してもいいか。


「俺は魔力がゼロといっても厳密にゼロなわけではない」

「確かに魔力は生命維持に必要なものだ。誰しも持ってはいるものだが……」「魔力をほとんど消費しない新しい魔術理論の構築に成功した」

「それは本当か……っ」


 驚きのあまり父さんは立ち上がった。


「だが、困ったことに俺の理論は往来の魔術理論と矛盾している。つまり、原書シリーズを否定することになるんだ」

「ど、どういうことだ……っ!?」


 またもや父さんは驚いていた。


「やはり原書シリーズを否定するのはマズイか」

「ああ、まぁそうだな」


 父さんは眉間に皺を寄せていた。

 なにか考えているのだろう。


「具体的にどこが間違っているんだ?」


 と、父さんは聞いてきた。

 妹のプロセルは原書シリーズを否定するといった途端、その続きを聞こうとはしなかったが、父さんはさらに一歩踏み出してきたか。


「原書シリーズによると、この世界のあらゆる物質は火、風、水、土の4つの元素からできているとされている。それがそもそも間違いだった」

「どういうことだ?」

「火の元素なんてものは存在しないってことだ」

「……だが、魔術師は現に火の元素を操ることで〈火の弾(ファイア・ボール)〉を生み出しているぞ」


 そう、そうなのである。

 四大元素は間違っている。

 だけど、これまで魔術師は四大元素の考えを元に魔術を行使している。

 なぜ、そんなことがありえるのか俺にもわからない。

 俺は魔術とは物理現象を捻じ曲げるものなんじゃないかと仮説をたてているが、あくまでもそれは仮説に過ぎない。


「ひとつ実験をしてみようか。この部屋にマッチ棒あるか?」

「いや、ないぞ」

「え?」

「火をつけるなら魔術で十分だからな。魔術の火じゃダメなのか?」


 そうか魔術師は普通マッチを使わないんだった。

 俺の部屋にならマッチはあるが……いや、今の俺はもうマッチが必要ないんだったな。


「この紙、燃やしてもいいか?」

「ああ、別に構わんが」


 部屋にあった適当な紙を持つ。それを俺は、


「〈発火しろ(エンセンディド)〉」


 燃やした。


「父さん〈火の弾(ファイア・ボール)〉を作ってくれないか?」

「ああ、構わないが」


 父さんは〈火の弾(ファイア・ボール)〉を作りだす。


「今、目の前に2つの炎があるけど、父さんにはどう見える?」

「どちらも一緒だ」


「だが、実際は違う。俺の炎は現実のマッチでつけた炎と同じものだが、父さんの〈火の弾(ファイア・ボール)〉は見た目が同じだけで全く別種のものだ」

「どういうことだ?」


 父さんは首を傾げていた。

 俺の言っている言葉を理解できていないようだった。


 なら、実際に違うことを見せてもらうしかない。


「〈気流操作(プレイション・エア)〉」


 と、俺は唱える。


「今から風を操って、2つの炎に同じ作用をする」


 俺は窒素を操って、燃えている紙の周りを窒素で固める。

 すると、火は消えた。


 同じことを〈火の弾(ファイア・ボール)〉にもする。

 けど、〈火の弾(ファイア・ボール)〉は消えない。


「ほら、違うってわかっただろ」

「いや、ただ片方の炎が消えただけにしか見えないが」


 ふむ、どうやら父さんには、これが意味することを理解できなかったようだ。


「えっとだな、父さん……」


 それから俺は父さんにそれはそれは懇切丁寧に説明した。

 だというのに父さんは中々理解できない。

 なぜ、こんな簡単なことが理解できないのか、理解に苦しむ。


 それでも数時間ほど説明を続けて、


「つまりお前が言うには、魔術ってのは現実の物理現象と全く異なる法則のもと成り立っているってことか……?」


 父さんは朧げではあるが理解してもらえたようだ。


「そう、四大元素は現実には存在しない。だけど、魔術の中では存在している」

「じゃあ、お前の新しい魔術理論ってのはなんだ?」


「現実の物理現象をなぞるようにして魔術を発動させる。現実と矛盾が少ないぶん、消費する魔力も少なく済む」

「なるほど……」


 父さんは神妙に頷く。


「父さんにもお前と同じ魔術を扱えるのか?」

「恐らく、大丈夫なはず」


 推測だが、科学を理解できれば誰もが俺と同じ魔術を使えるようになるんじゃないだろうか。


「お前のその発見は革命に値するな」


 確かにそうだ。

 もし俺の魔術理論が公に広まれば、今まで魔術を扱えなかった人たちまでもが魔術を行使できるようになる、ということだ。

 それがいかに社会に影響を与えるか。

 想像すらできない。


「なぁ、アベル。お前はプラム魔術学院に通うつもりでいるのか?」


 ふと、父さんがそんなことを聞いてきた。


「ああ、もちろんそのつもりだが」

「アベル、学院に通うのはやめろ」


 父さんは鋭い目つきでそう言った。



【作者からお願い】


あと少しでジャンル別ランキング5位以内に入れそうです。

よろしければ、評価、ブクマお願いします。


評価は下にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にすることで入れられます。


あとちょっとで5位なんです。

本当によろしくお願いします。

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