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魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 作者:北川ニ喜多
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―22― 和解

「それで魔力ゼロのお前がどうやって魔術を行使したか、教えてもらえないか」


 改めて父さんが会話を切り出す。

 どうやら父さんの中で、カツラがとれたことはなかったことになっているようだ。



「その、なにから説明すべきか……」


 俺は妹の言葉を思い出していた。

 原書シリーズの否定は首を落としかねない。

 だから父さんにどこまで話すべきか考えあぐねていた。


「しかし、アベルが魔術を使えるようになったか……」


 父さんが感慨深げにそう呟く。

 あれ? 父さん泣いてない?


「えっと……」


 困惑していると父さんは「すまぬ」と言って手で涙を拭う。


「お前にはすまないことをしたとずっと思っていた」

「そうなのか……」

「お前は魔術が大好きだったよな。幼い頃から難しい魔導書でさえ何冊も読むお前を見て、こいつは将来すごい魔術師になるぞ、と何度思ったことか。なのに現実は非情だ。お前は魔術師の家系でありながら、魔力がゼロという残酷な運命に立たされた。どうしてお前を魔力がある少年として生んでやれなかったのか……何度も後悔した」


 初めて聞く父さんの吐露に俺は戸惑いを隠せないでいた。

 こんなことを父さんは考えていたのか。


 俺だって、なんで自分に魔力がないのか、何度悔やんだことか。

 今としては自分に魔力がないことを幸運だったと思っているが。


「だがお前は自分の運命さえ跳ね除けられるのだな。お前をなんとか自立させようと家を追い出したが、父さんが間違っていたようだ。すまなかった」


 父さんは頭を下げた。


「別に怒ってないからいいよ」


 父さんが俺のためを思って行動しているのは知っていたし。

 そうじゃなきゃ、家を追い出すとき金を一切渡さないだろう。


「そうか、ありがとう」


 頭をあげて微笑んでいるのが目にうつる。

 久しぶりに見た父さんの笑顔だった。



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