―07― 魔術とは
『科学の原理』を読み終えるのに一週間もかかった。
それは古代語を読み慣れていないってのもあったが、例えこの書物が現代語だったとしても読むのに苦労してたといえるほど難解な内容だった。
一応読み終わったが、それは表面をなぞるようなもので全てを理解したとは言い難い。
そして読み終えた俺はぐったりと天井を仰ぎ見ていた。
なんともいえないな。
それが本に対する感想だった。
もし『科学の原理』に書かれていることが全て正しいとするならば、俺が今まで読んできた魔導書が間違っていたことになる。
しかし魔導書が間違っていると断言はできない。
というのも魔導書に書かれた理論に基づいて現に魔術が行使されているからだ。
そもそも魔術の歴史とは。
古来より人間は魔術を行使してきた。
けれど、それらはもっと曖昧なもので到底学問と呼ばれるものではなかった。
魔術が学問として体系化されたのは千年前。
魔術師の祖、賢者パラケルススによってなされたものだ。
賢者パラケルススの元に神が訪れ、魔術について教えを説いたという伝説が残っている。
そして賢者パラケルススが残したのが原書シリーズと呼ばれている7冊の魔導書だ。
そのため原書シリーズは一部を除き、神との対話という形式で書かれている。
魔術師というのは、例外なく最初は原書シリーズを読み理解するところから始まる。
もちろん俺が初めて読んだ魔導書も原書シリーズだ。
そして今、出回っているあらゆる魔導書は原書シリーズの発展であったり解説であったりするものがほとんどで原書シリーズを否定する内容のものは一切ない。
そう魔術師にとって原書シリーズは絶対的な真実である。
だが、俺の手元にある『科学の原理』は原書シリーズを真っ向から否定する内容だった。
原書シリーズが間違っているなんてあり得るのか?
いや、原書シリーズは完璧な理論だ。
間違っているとは思えない。
だが――
俺は思い出していた。
現実の火と魔術の火が異なるものだと実験で証明したことを。
だから俺はある一つの可能性に行き当たった。
原書シリーズもこの『科学の原理』もどちらも正しくてもおかしくないのかもしれない。
それは一見矛盾しているような結論だが、今の俺にはそれしか思いつかなかった。
「まず、この『科学の原理』に書かれていることが本当なのか証明するのが先か」
そう言って俺は立ち上がる。
幸運なことに俺は様々な実験道具を持っている。
実験するのは得意分野だ。
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