―05― 兄弟
それから俺は〈
例えば〈
対象を燃やす魔術だが、この場合空気が必要なのかどうなのか?
結果、〈
「ねぇ、もういい。疲れたんだけど」
妹が怒り気味にそう言う。
「ありがとう。俺はもう帰るよ」
そう言って、俺は荷物を手にして立ち上がる。
俺はショックを受けていた。
〈
それが、もしかしたら不可能なんじゃないかという現実に直面したのだ。
「ちょ、お兄ちゃん」
プロセルが慌てる。
俺は無造作にドアを開けていた。
「おい、なんで愚弟がこの家にいるんだ? 追い出されたんじゃなかったのかよ」
目の前に、俺より一回りほど背の高い男がいた。
俺の兄。リーガルだ。
「ちょっと忘れ物をとりにきただけさ。すぐこの家を出るよ」
「ふーん、忘れ物ねぇ」
俺とリーガルは仲が悪い。
昔は仲が良かった時期もあったんだがな。
まぁ、別に俺はリーガルのこと好きでも嫌いでもないんだが、主にリーガルが俺を嫌っていた。
「しかし、兄さん。帰ってきていたんだな」
リーガルは全寮制の学校に通っているため、普段家にいない。
だから、昨日は家にいなかったはずだ。
「あぁ、今日から夏休みだからな。と、年中夏休みのお前には関係ないか」
そう言ってリーガルは笑った。
リーガルはどこか完璧主義なとこがある。
そのせいか出来の悪い弟が嫌いみたいだ。
「しかし、とうとう就職することにしたんだな。よかったよ、これで我が家の汚点が消えてなくなる。まぁ、学校に行っていないお前にまともな就職先があるとは思えんけどよ。精々頑張れや」
そう言ってリーガルは俺の肩を叩く。
「ちょっと、リーガルお兄」
プロセルが言い過ぎじゃない? と言いたげな目でこっちを見ていた。
「やぁ、我が家の優秀な方の妹よ。元気にしていたかい?」
「そうね、どこも体調悪くないけど」
リーガルの視線が妹に移ったところで、俺は歩を進めた。
今のうちに家を出ていこう。
「おい、アベル。その荷物はお前に必要ないものだろ。置いていけ」
リーガルにそう言われる。
「これは俺のものだ。持ち出すのも俺の自由だろ」
「しかしな、お前はくだらない魔術の研究とやらから足を洗って就職するんだろう? なら、それらのガラクタは必要ないはずだ」
面倒くさっ。
ぶっちゃけ俺に就職しようなんて意欲は一切ない。
「えっと、売るんだよ。俺はこれから一人で生きていかなくてはならない。だから、少しでもお金が必要なんだ」
でまかせを言う。
「ふむ、そういうことか。お前に就職する気があるみたいで兄さんは嬉しいよ」
納得してくれたようだ。よかった。
それから俺は家を出た。