―03― 燃焼
火に対して様々な実験を繰り返していくなかで、俺はあることに気がついた。
箱に閉じこめられた火はすぐ消える。
なぜ、こんな事象が起きるのか俺は悩んだ。
そして、ある仮説を立てた。
火には空気が必要不可欠なんじゃないかと。
しかし、どう必要なのかまではわからない。
そこで実験である。
活躍するのは特殊な形をしたガラス瓶だ。
俺は追放される前にガラス細工を作ってくれるお店である注文をしていた。
それを今日受け取った。
俺は学校も行かなければ仕事もしない引きこもりではあったが、必要とあれば外には出る活発的な引きこもりなのだ。
ガラス瓶はろうそくが入る程度の細い形をしている。
そこに俺は4分の1いかない程度の水とろうそくを入れる。
そしてろうそくに火をつけた上で蓋をする。
ちなみにガラス瓶に入っていない状態のろうそくも用意し、火をつけた。
そして思惑通り、ガラス瓶の中で密閉されたろうそくはすぐに火が消えた。
まだ密閉されてない方のろうそくは火が爛々と輝いている。
やはり閉じ込められた火はすぐに消えることが立証された。
しかし、この実験の真骨頂はこれからだ。
「水面の高さが上にあがっている」
そう、俺は事前にガラス瓶の中に水を入れていたわけだが、その水面のところに印をつけていた。
それが今確認すると、水面の高さが印より上にあった。
それが意味すること。
ガラス瓶の中の空気が減っている。
つまり――
「燃焼をすれば空気が消費されるってことか」
金属 + 空気 → 金属灰 + 火の元素
式に表すとこういう感じか。
しかし空気というのは風の元素が集まって作られているとされている。
風の元素が火の元素に変換されたということか?
あり得ない話ではない。
4つの元素はお互いに流転するとされているからだ。
そのことを中心に取り扱った理論を錬金術と呼んだりする。
「しかし、金属灰が灰より重い理由が説明できないな」
それから俺は火を扱った様々な実験を行った。
木炭や油を燃やす。
金属は値が張るので今回は諦めた。
やはり木炭や油でも密閉された空間ではすぐに火が消えた。
やはり同様に空気が必要なんだろう。
「けど、木炭の場合は燃やすと軽くなるんだよな」
パラパラになった灰を見て、俺はそう言う。
魔導書にも書かれていた。
木炭にはたくさんの火の元素が含まれているため、よく燃えると。
その証拠に木炭を燃やした後に残った灰は火の元素が出ていってしまったので、木炭に比べ軽くなっていると。
実際、金属以外のほとんどの物質が燃やしたら軽くなる。
しかし、金属だけは違った。
燃やすと重たくなる。
魔導書には金属の燃焼のことまでは書かれていなかった。
「そういえば秤を実家に置いていったままだな」
準備する暇もなく追い出されたもんだから、必要なものを持っていくことができなかった。
「一度、家にこっそり戻るか」
そう俺は決めていた。