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魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 作者:北川ニ喜多
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―02― 火の弾

 さて、どうしたものか。


 家を追い出された俺は途方に暮れていた。

 持っているのは3ヶ月は暮らせるだけのお金と最低限必要なものが入ったカバンだ。

 カバンの中には服が入ってるだけで魔導書は入っていなかった。

 追い出すなら魔導書も一緒に追い出してほしかった。



 まぁ、魔導書はまた買えばいいかと思いつつ、ひとまず優先すべきは宿の確保だろう。

 もう夜も遅いので今日寝るためにも必要だ。

 できる限り安い宿だとなおよし。



「中々いい部屋を見つけたな」


 と言いつつ俺はベッドに腰掛けた。

 狭いが小綺麗な部屋だ。


「さてと――」


 そう言いつつ、俺はいつものくせで魔導書を探してしまう。

 そうだ魔導書は持ってくることができなかったのだ。


 まぁ、家にある魔導書はほぼ頭に入っているので今更読む必要もないんだが。

 仕方ないので俺はベッドで大人しく寝ることにした。







 目を覚ますと、もうお昼過ぎだった。

 いかん、つい寝過ぎてしまった。

 俺は慌てて着替えると、外へ出た。

 外へ出てなにをするかというと、魔術の研究である。


 俺は魔術の研究者になると父さんに言ったがあれは本気だ。

 そして、近いうち成果を出せると言ったのも同じく本気だ。



 俺は数年前からある魔術の研究をしていた。


 それは〈火の弾(ファイア・ボール)〉を魔術を使わないで再現できるかどうかというものだ。



 世界は火、風、水、土の4つの元素で構成されている。

 そのため魔術にも火、風、水、土と4つの属性がある。

 それに加え神の力を借りる聖属性。

 悪魔の力を借りる闇属性。

 結果6つの属性に分かれている。

 魔術師はこの6つの属性を操り魔術を行使するのだ。



 この中で俺は火属性の魔術、〈火の弾(ファイア・ボール)〉に目をつけていた。


 これを魔術を使わないで再現することで、誰でも〈火の弾(ファイア・ボール)〉を使えるようにするのが俺の夢だった。


 そのためには火に対する理解がより必要だと考えて、そのための道具を揃えるために店を回っていた。



「よし、準備できたな」


 用意したのはマッチ棒とろうそく、ガラス瓶だ。


 俺は火の実験を何度も繰り返していくうちにあることに気がついた。

 金属を燃やすと、燃やした前に比べ重たくなるということに。


 しかしそれは魔導書に書かれていることと矛盾している。


 魔導書には、火の元素は非常に軽い物質であり、上へと向かっていく性質があると書かれている。

 そしてあらゆる物質には火の元素が含まれており、それが外へ出て行こうとするとき火として発現するのだと。


 つまり、わかりやすく書くとこういうことだ。


 金属 → 金属灰 + 火の元素


 これが火の仕組みである。

 だから我々が通常、火を見る際には必ず火はなにかを燃焼させている。


 対して、魔術師の〈火の弾(ファイア・ボール)〉は純粋な火の元素である。

 その純粋な火の元素を取りだそうと、俺は四苦八苦しているわけだ。



 しかし、実験してみると燃やした後の金属灰は金属より重たかった。

 おかしい。

 火の元素が物質から出て行くわけだから、魔導書の通りなら物質は軽くなるはずだ。

 現に、石炭なんかは燃やしたら灰になって軽くなる。


「火の物質が負の質量を持っているということか?」


 もしそうなら灰が重たくなっているのも説明できる。

 しかし、どうも納得はできない。


 負の質量というのが意味不明だ。


 まぁ、いい。

 今日は火に別の方面からアプローチをかけようと道具を用意したのだ。

 早速、実験に取りかかろう。




●補足●


金属灰がわからないとの指摘がありましたので補足です。


鉄を燃やした場合、酸化鉄となり重量が増します。

銅なら酸化銅、スズなら酸化スズです。


つまり金属灰は酸化鉄や酸化銅の総称です。


ですが、酸化という概念がまだ曖昧なのに酸化鉄という単語を出すのも抵抗があり、今のとこ金属灰という表現に留めておきます。


もっといい案が浮かべば改稿するかもしれません。

保留です。

いい案があるよ!って方は教えてください。

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