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魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 作者:北川ニ喜多
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―01― 追放

「君、魔術師の適性ないね。魔力ゼロだから」


 忘れもしない7歳のとき。

 俺はその言葉を聞いて、愕然としていた。


 俺は魔術師になるのが夢だった。

 そして魔導書を読むのがたまらなく好きだった。


 物心ついたときには魔導書を読んでいた気がする。てか、魔導書で文字を覚えたぐらいだ。


「アベルはきっとすごい魔術師になるわね」


 そう言って母さんはよく俺の頭を撫でてくれた。


「そんなに魔導書が好きならもっと買ってやろう」


 父さんはよく俺に魔導書をプレゼントしてくれた。


 それから俺は3つ年上の兄さんがする魔術の練習を見るのがたまらなく好きだった。


「〈火の弾(ファイア・ボール)〉!」


 そう言って兄さんは俺に得意な〈火の弾(ファイア・ボール)〉を見せてくれた。俺は見るたびに手を叩いて喜んだものだ。


 俺の家系は両親ともに魔術師で、兄も学生ではあるが魔術師だ。

 だから当然、俺も魔術師になるのが当たり前だと思っていた。



 だというのに7歳のとき。

 高名な魔術師に言われたのだ。


「君、魔術師の適性ないね。魔力ゼロだから」


 と。


 魔術師になるには、魔術を発動させるのに必要な魔力を体内に保有していなくてはならない。


 その魔力が体内に発現するのは5歳頃と言われている。

 けれど、7歳になっても一向に俺は魔術を使える気配がなかった。

 とはいえ、人より魔力の発現が遅かったり、魔力が発現していても本人が気がつかないこともあるので、周りの人たちは特に心配していなかった。


 しかし、たまたま家に他人の魔力を感知できるほどの高名な魔術師が来たので見てもらったのだ。


「今は魔力がないだけで、今後魔力が発現する可能性はありますよね!」


 俺はすかさず反論した。


「確かに魔力の発現が遅い子もいる。けれど、そういった子でも微かな魔力を感じることができるんだ。君の場合、全く魔力が感じない。だから将来、魔力が発現する可能性はゼロだよ」


 随分と歯に衣着せぬ言い方だなぁ、と今になって思う。


 そう、俺は7歳にして絶望を味わったのだ。






 そして魔術師になれないことを知った俺はどうなったかというと――引きこもりになった。


「それにしてもおもしろいなぁ、魔術ってのは」


 14歳になった俺は日課の読書をしていた。

 ちなみに読んでいる本の内容は魔導書である。

 引きこもりになった俺は部屋で魔導書を読んで時間を潰すことが多かった。


「お兄ちゃん! 夕ご飯だよ! 早く来て!」


 ドンドンドンと扉を乱暴に叩く音が響く。

 妹のプロセルだ。

 プロセルは俺と同じ14歳。歳は同じだが双子ではない。年子であり、この前妹の誕生日が過ぎたため、歳が一緒なだけだ。

 憎たらしいことにプロセルは魔力持ちだ。


「わかった、今行くよ」


 俺はけだるげな感じでベッドから立ち上がり、部屋を出た。

 そういえば今日、まだ一食も食べていないや。

 ちなみに食事中に読むための魔導書をちゃんと持ち歩く。


「おい、アベル! 食事中ぐらい本を読むのをやめないか!」


 父さんの怒鳴り声が聞こえた。

 昔の優しかった頃の父さんはどこにいってしまったのだろうか。ここずっと顔を合わせるたびに怒っている。

 悲しいなぁ、と思いつつ俺は魔導書を読みながら食事を進めていた。


「あのさぁ、ちょっとは父さんの言うこと聞いたらどうなのよ」


 妹のプロセルも苦言を呈する。

 特徴的なツリ目が呆れたものを見るような目になっていた。


「俺は研究に忙しいんだよ。食べている時間も惜しいぐらいにはな」


「研究ってなんの?」


「当然、魔術の研究に決まっているだろ」


「お兄ちゃん、魔力ゼロなのにホント馬鹿よね」


 別に魔力がなくたって魔術の研究はできるのだが、なぜか俺の周りの人たちはそれが理解できないらしい。


「なぁ、アベル」


 ふと、父さんが怒気を含んだ声でそう言った。


「はぁ、なんでしょうか?」


 俺は魔導書を読みながら投げやりに答える。


「この前、なんの仕事をするか決めろと言ったよな。それで決めたのか?」


 そういえばそんなこと言われた気がする。


「前にも言いましたが、俺は魔術の研究者になります。あとちょっとで父さんにも成果を見せられると思うのでもう少しだけお待ちください」


 そう俺は魔術師にはなれないが、魔術の研究者になろうと思っていた。

 もちろん本気だ。


 次の瞬間。


 ドンッ! と父さんがテーブルを盛大に拳で叩いた音が聞こえた。


「ちょ、お父さんっ!」


 母さんの焦った声が聞こえる。


「決めた」


 そう言うと父さんは立ち上がってこう叫んだ。


「お前はこの家から追放だ! 今すぐ、この屋敷からでていけ!」



 それから数十分後、俺は屋敷の外にいた。

 最低限の荷物を持たされた上でだ。


「これだけあれば3ヶ月は暮らしていけるだろ」


 父さんは貨幣の入った袋を俺に放り投げる。


 ゴンッ、と頭に当たった。痛い。


「それまでに職を見つけることだな」


 そう言って扉をバタンッ! と閉めた。



 どうやら俺は家を追い出されてしまったらしい。


「マジか……」


 呆然と俺はそう呟いていた。



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