( 10/2 付 )

 都心の金券ショップに客足が戻ってきた。大方の目当ては新幹線の割安チケットである。盆の帰省シーズンさえ閑散としていたのに、最近は行列ができた店も見掛ける。

 きのう政府の観光支援事業「Go To トラベル」に東京都発着の旅行が加わった。宿泊料などの最大半額補助だけでなく新幹線代も節約する知恵らしい。都民にとって、事業スタートから2カ月余りお預けだった移動の自由を取り戻した気分に違いない。

 小池百合子都知事は「旅の楽しみ方もウィズコロナの考えで」と感染防止を呼び掛けた。一向に減少の兆しが見えない東京の新規感染者である。人の移動が盛んになればリスクも高まる。手放しで後押しできないのはもどかしかろう。

 とはいえ、玄関口の羽田空港は各地へ飛び立つ人でにぎわい、駅にも旅行バッグを抱えた人が目についた。都内や近郊を巡る観光バスも満席だったようだ。

 打撃を受けた観光業界の需要喚起が目的の事業だが、宿泊料が高いほど得になることから高級宿に人気が集中し、民宿などは苦戦していると聞く。旅行者が増えても、広く効果が行き渡るかは見通せない。

 政府は、感染が著しく増えた地域の対象除外も検討するという。霧の中でアクセルを踏み込むような危うさが拭えない。感染の不安や収入の落ち込みで旅行できない、する気になれない人がいることも忘れずにいたい。