東証トラブル 経済の基盤が揺らぐ

2020年10月2日 07時30分
 東京証券取引所でシステム障害が起き、全銘柄の売買ができなくなった。東証のシステムを利用する名古屋などでも取引を停止。株式市場は経済の基盤であり官民で復旧に全力を注ぐ必要がある。
 障害は一日の取引開始直前に起きた。株の値段や気配値を伝える情報配信機能が停止した。
 東証のほか、同じ富士通のシステムを使っている名古屋、札幌、福岡の各取引所も売買が不可能になった。富士通のシステムに原因があるかどうかは不明だが、共通性がある以上、同社と東証、所管の金融庁が連携して調査に乗り出したのは当然だ。
 東証では二〇〇五年十一月にもシステム障害が起き全銘柄が取引停止となった。ただこの時は数時間で復旧した。今回は取引が終日不可能になっており、極めて大規模な障害といえるだろう。
 株式市場では金融機関や個人が日々、株式の売り買いを続けている。その多くは年金の運用など人々の暮らしのために行われている。復旧の遅れが株価の混乱を招けば、投資信託などさまざまな金融商品の運用にも影響が出る。老後の生活資金の一部を失うケースさえ十分想定できる。
 さらに企業にとって株式市場は資金調達の場だ。新たに設備投資などを行う場合、増資などで市場から資金を得ることは多い。
 障害と復旧の遅れは、人々の暮らしや企業経営の先行きに直結する問題だ。可能な限り早期に正常化すべきだ。
 原因究明も重大な課題だ。システムに何らかの不具合があったのか。なぜバックアップ機能が作動しなかったのか。この解明がなければ、障害が再発するのではという疑心暗鬼が確実に生まれる。それは上場会社の時価総額ベースで世界三位の規模を誇る東証、ひいては国内各地の市場への著しい信頼低下につながりかねない。
 経済に不可欠な資金の多くが株式市場を通じて流れている。それは企業社会の運営を根底から支える基盤でもある。
 国内の株式市場はコロナ禍においても比較的堅調に推移してきた。だが障害による信頼失墜が資本流出を引き起こし経済の基盤自体が大きく揺らぐ恐れは否定できない。
 今後、原因究明だけでなく再発防止策の策定も金融庁が主導して行われるだろう。その際、過程や結果も包み隠さず開示すべきだ。情報の透明化なしには信頼回復はあり得ないからである。 

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