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アルテイシアの熟女入門

2020.10.01 更新 ツイート

「あなただったら、どうしますか?」とJJは質問したい。 アルテイシア

「YouTuberの名前がわからない」もJJ(熟女)あるあるではないか。

無論「三度の飯よりYouTube」というJJいるだろう。だが私の周りでいうと

「ヒカキンしか知らないし、ヒカキンの動画も見たことがない」
「せやろがいおじさんしか知らない。彼は34歳で意外とおじさんじゃないことを知った」

みたいなJJが多数派だ。

 

「何かを検索すると動画が出てきて、いやテキストで説明してくれ! と思う」
「わかる! 動画を最後まで見続ける集中力がない」
「私は老眼だから、スマホの画面を見るのがつらい」

と時流についていけない俺たちだ。

私でいうとTikTokの読み方もあやふやで「チックタックじゃないのは知ってるけど……ティクトック? ティックトク?」と、もごもごしている。

そんな拙者であるが、人気YouTuberのシオリーヌちゃんと動画を製作することになった。

シオリーヌちゃんはもともと私の読者で、以前こちらの動画にも出演させてもらった。

今回の動画を製作することになったのは、下記のコラムがキッカケである。

「性差別や性暴力の話になるとケンカになる問題」より抜粋

<太田啓子さんの著書『これからの男の子たちへ』では、性暴力をなくそうというキャンペーンのために、カナダのオンタリオ州が発信した動画「Who will you help?(あなたは誰を助ける?)」が紹介されている。

『パーティーのような場所で、泥酔した女性に性的嫌がらせをしている男性がいて、その加害男性が突然カメラを向いて「黙っててくれてありがとう」と言うのです。

他にもいくつかの性的嫌がらせの場面で同様に、加害男性が行為の最中、突然カメラを向いて「無視してくれてありがとう(おかげで続けられるよ)」というメッセージを発します。

最後に流れる字幕には「何もしないなら、彼(加害者)を助けたことになる。でも、何かしたら、彼女(被害者)を助けられる。あなたは誰を助ける?」という言葉が流れます』

日本の鉄道会社や警察はこういうのを作らんかい。なんなら私が脚本を書いてやる、ギャラは千円でいい。>

これを読んだシオリーヌちゃんが声をかけてくれて、ガチで脚本を書くことになったのが、8月の話である。

その後、素晴らしい役者さんやスタッフさんが参加してくださり、グレートな作品に仕上がった。

10月11日の国際ガールズ・デーに公開予定なので、ぜひ見てもらえると嬉しい。

#性暴力を見過ごさない
#ActiveBystander

こちらが動画のテーマである。Active Bystanderとは「行動する傍観者」という意味だ。

海外には性暴力の非当事者の介入プログラムがあり、そちらの文献によると「性暴力を見過ごす人(passive bystander)」と性暴力に介入する人(active bystander)の二種類が存在するらしい。

つまり性暴力の現場に居合わせた人はみなbystanderであり、その中に行動を起こすbystanderと行動を起こさないbystanderがいる、という概念のようだ。

性暴力やセクハラの現場に居合わせた時、「自分には関係ない」と見て見ぬフリをする人もいるだろう。
一方で「本当は行動したいけど、自分に何ができるかわからない」と動けない人もいると思う。

そんな人々に向けて、今回の動画では様々なシチュエーションを描いている。
「何かはできるのに何もしないことは、性暴力に消極的に加担していることになる」というメッセージも込めたつもりだ。

たとえば、痴漢をタックルで仕留めるのは無理だろう。でも被害を受けていそうな女性に「ひさしぶり!」と声をかけるとか、それぐらいなら私にもできるんじゃないか。

自分ができることからやっていくこと、それが性暴力を許さない社会につながるんじゃないか……

と私は常々考えていて、たまに思考が口から漏れている。JJはいろんなパッキンがゆるむお年頃。

『男が痴漢になる理由』の著者・斉藤章佳さんと対談した時、私がこの話をしたら「アルテイシアさんの意見に大賛成ですね」と同意してくださり、以下のお話を聞かせてくれた。

『私はJR東日本の痴漢防止アプリの監修に関わっているんです。開発を進める中で、加害者と被害者、どちらにアプローチするのが有効なのか? という議論が起こりました。

しかし、現実的にはどちらも非常に難しい。そうなった時に、その状況をとりまく傍観者=サイレント・マジョリティの関心を高めることが求められる。

(周囲の人々が)痴漢行為を見て見ぬフリをしないように導いていくことが、痴漢を防止するためにもっとも効果的なのではないか、という結論に達しました』

という話に膝パーカッションしすぎて地面が揺れた。

痴漢の再犯率が極端に高いことは有名だ。逮捕されても痴漢をやめない加害者に「チカン、アカン」と訴えても「アカンな、やめとこ!」となるわけがない。

また、斉藤氏の『痴漢加害者のうち99.5%は男性であり、痴漢の問題は“男性の問題”だと言えます』という言葉にも、膝パーカッションしすぎて地殻変動が起こった。

性犯罪の加害者の95%以上が男性、被害者の90%以上が女性である。

痴漢がいなければ痴漢冤罪はないし、女性専用車両だっていらない。加害者がいなければ、性犯罪はなくなるのだ。

現実に性犯罪者をゼロにするのは無理だろう。でも、まともな良識のある男性であれば「性犯罪を少しでも減らしたい」と思うだろう。

だったら、そのために何ができるか真剣に考えてほしい。そんな願いから、今回の動画の主人公を「傍観者の男性」にした。

また全シチュエーションを「男性が女性に加害する場面」にしたのは、性暴力の現状を反映したからだ。

それでもハイパークソリプクリエイター(HKC)たちは「男を性犯罪者扱いするな!」と騒ぐだろう。
彼らは「性犯罪を減らしたい」なんて望んでおらず、「性犯罪を減らすための活動を叩きたい」が本音だから。

そんなコバエみたいな騒音は無視するが、悪質な誹謗中傷や妨害があった場合は法的に対処するので、首を洗って待っていろ。

一方、まともな良識のある男性でも、性犯罪の話題になると「自分が責められている」「加害者扱いされたくない」と身構えたりする。

ほとんどの男性が加害者じゃないことは、百も承知だ。

そして、ほとんどの女性は何らかの性被害に遭っていて、ほとんどの男性は一度も性被害に遭ったことがない。

その非対称さゆえ、被害者目線で考えづらい男性が多いのは事実だろう。

そんな男性たちに、加害者でも被害者でもなく、傍観者として自分に何ができるのか? を考えてほしい。そのキッカケとして、今回の動画が役に立つと嬉しい。

つい先頃も、アルテイシアは激怒した。

激怒案件が多すぎて血管が心配だが、それは20代の女子からこんな話を聞いたからだ。

彼女が駅を歩いていると、中年のおじさんに全速力でぶつかられて、派手に転んだそうだ。それを見て周囲も唖然としていたが、声をかけてくれる人はいなかったという。

「この話を女友達にしたら、みんな一緒に怒ってくれて、心配してくれました。でも男の人は口をそろえて『俺はそんなことされたことないけどな~』って言うんですよ」

「その時に初めて知りました。男の人は普段からぶつかられたり、通りすがりに舌打ちされたり、怒鳴られたりしないんだって」

普通に歩いているだけで、ぶつかりおじさんに狙われたり、卑猥な言葉をかけられたり、胸や尻に触られたりする。

女性が日常的に加害されている現実を、自分には見えない世界があることを、男性にも知ってほしい。

また、同世代の女友達が話していた。「私は身長170センチ以上あるせいか、痴漢に遭ったことはなかったのよ」

「でも妊娠中とか出産後にベビーカーを押している時に、男性から嫌がらせや加害を受けた。彼らが抵抗できない弱い存在を狙うってことが、その時に身に染みてわかった」

そんな卑劣な連中を許せない、一匹残らず駆逐してやる……!! と、まともな人間なら思うだろう。そうやって良識ある全ての人々が声を上げれば、世の中を変えていける。

逆に「自分には関係ない」という無関心が、加害しやすい社会を作ってしまう。

加害の現場に居合わせた時、その場で加害者のうなじを削ぐのは無理でも、被害者に声をかけることはできる。

「その場で犯人が捕まらないと意味ない」というクソリプも来るが、ちっとは脳を使ったらどうか。脳などただの飾りなのか。

「大丈夫ですか?」と声をかけるだけでも、被害者は安心するし救われるだろう。

そして「助けてくれる人がいる」という安心感、社会に対する信頼があれば、被害者は助けを求められる。

逆に「誰も助けてくれない」と絶望してしまうと「助けを求めても無駄だ」と1人で抱え込み、支援につながることもできない。

拙者は鈍足の中年女性だが、誰かがぶつかられて転んだら、メロスのように駆けつけたい。いつも瞬足を履いて出かけよかしら。

今回の動画には、男性上司が女性の部下にセクハラする場面もある。

痴漢やぶつかりおじさんと違って、セクハラは加害者に自覚がない場合が多い。

「相手が嫌がっていると思わなかった」「コミュニケーションのつもりだった」と本気で勘違いする加害者が多いからこそ、「行動する傍観者」が必要なのだ。

TVで武田鉄矢が「セクハラは必要悪」と語っていたが、「昔は気軽にお尻に触られてよかったわ~」と回顧する女性は見たことがない。

彼らは「昔は自由でおおらかでよかった」と言うが、その自由は誰かの犠牲の上に成り立っていたのだ。それを理解できない老害が、ドヤ顔で説教してんじゃねえ!!

と指原莉乃は武田鉄矢に言えないだろう、そこには上下関係が存在するから。

ハラスメントは基本、強者から弱者に行われる。イヤでもイヤと言えない立場の被害者は、曖昧な笑顔で返すしかない。
かつ周りも空気を読んで笑っていると、加害者はそれがセクハラだと永遠に気づかない。

同調圧力の強いヘルジャパンで、声を上げるのは勇気がいる。でも声を上げる人が増えることで、セクハラを許さない空気が作られていく。

某有名企業で働く女友達がこんなエピソードを話してくれた。

職場でおじさん部長が若手の女性社員に「今日も旦那と子作りするのか? (笑)」と言った時、男性の先輩が「それセクハラですよ」と注意したそうだ。

すると部長はバツが悪そうな顔になり、それ以降、その手の発言を控えるようになったという。

友人いわく「その先輩は夫婦で不妊治療をしてたから、自分事として考えられたのかもね」とのこと。

彼女の「悔しいけど、女の私が注意しても『○○さんは怖いなあ(笑)』と茶化されたと思う。男尊女卑がしみついたおじさんって、男の話しか聞かないから」という言葉に「それな!!」と膝パーカッションしすぎて、俺の膝はもうぼろぼろだ。

このままではヒザ大僧正からヒザ阿闍梨に進化してしまう。

ヒザはさておき、男尊女卑でおなじみのヘルジャパンだからこそ、男性も積極的に声を上げてほしい。傍観者の自分に何ができるか? を考えてほしい。私も一緒に考えるから。

そして、私も過去の自分を反省しているから。

過去の私はセクハラの被害者でもあり、加害者でもあった。下ネタ言ったもん勝ちみたいな会社で、自身もさんざんやらかしてきた。

私の無自覚な言動によって傷つけた人もいるだろう。それを思うと、縦長に穴を掘って首まで埋まりたくなる。

でもそのままカーズ様のように思考停止して、沈黙するわけにはいかない。過去の反省があるからこそ、声を上げていかねばと思うのだ。

世の中には、いともたやすく行われるえげつない行為(D4C)があふれている。その現場に居合わせた時、「あなただったら、どうしますか?」とJJは質問したい。

そして「自分だったら、どうするだろう?」とつねに自分に問いかけたい。

#性暴力を見過ごさない
#ActiveBystander

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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