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 女性の人権に鈍感で、対応が後手に回ったのではないか。「性暴力の根絶」を掲げる政府と与党自民党の認識もまた厳しく問われねばならない。

 自民党杉田水脈衆院議員がきのう、自身のブログで、性暴力対策の予算などを議論した党の会議で「女性はいくらでもウソをつける」と発言していたことを一転して認めた。これまで否定してきたが、改めて関係者に当たったところ、内容を確認できたのだという。

 発言から6日、世論と野党からの批判の高まりや、下村博文政調会長からの口頭注意を受け、しらを切り通せなくなったのが実情ではないか。「女性を蔑視する意図はまったくない」と釈明し、謝罪したが、記者会見も開かず、ブログでの一方的な訂正は不誠実だ。

 杉田氏は一昨年、月刊誌への寄稿で、子どもをつくらない同性カップルを「生産性がない」と評して批判を浴びるなど、人権感覚を疑わせる言動を繰り返してきた。国会議員としての資質に欠けることは明らかだ。

 今回の発言は、勇気をもって性被害を訴えようという女性の思いをくじく「セカンドレイプ」そのものだ。女性全体の尊厳をおとしめるものでもある。

 性暴力に抗議する「フラワーデモ」の主催者らが、杉田氏に謝罪と議員辞職を求めたインターネット上の署名は、短期間に10万筆を大きく超えた。しかし、こうした声を、政府・自民党はどれだけ深刻に受け止めているであろうか。

 性暴力対策を担う橋本聖子男女共同参画相は「(対策に取り組む関係者の)努力を踏みにじる発言で、非常に残念だ」と語った。石破茂元幹事長は「女性の真摯(しんし)な思いを傷つける」と述べた。しかし、杉田氏を批判したり、事実確認を求めたりする動きは広がらなかった。

 党としては、下村氏が事情を聞き、口頭で注意しただけ。非公開の会議では、各人の発言は公にしないルールだとして、内容の確認には応じず、対応を杉田氏任せにした。これで公党の責任を果たしたといえるのか。

 自民党は3年前の衆院選で、次世代の党にいた杉田氏を招き入れ、中国ブロックの比例単独候補としては最上位に処遇し、当選させた。それだけに、党の責任は重い。

 杉田氏が発言を認めた以上、党としてどう考え、どうけじめをつけるのか。政府は今年度からの3年間を性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」と位置づけ、取り組みを強化したばかりだ。一議員の暴言と看過していては、政権の本気度を疑われかねない。党総裁でもある菅首相にとって人ごとではない。

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