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 警告を無視し、手をこまぬいたまま未曽有の被害を招いた責任を断罪する判決だ。

 福島第一原発事故をめぐり、福島県内の住民や避難者ら約3700人が損害賠償を求めた裁判の控訴審で、仙台高裁は東電と国双方の責任を認めた。事故の訴訟は各地で続くが、国が被告となった中では初の高裁判決であり、その意義は大きい。

 事故から9年半がたち、今回の原告団だけでも約90人が亡くなっている。改めて確実な救済を急がなければならない。

 裁判では、(1)津波の襲来を予測できたか(2)事故は防げたか、のふたつが争点になった。

 仙台高裁は、国自身が設けた専門機関が震災の9年前に公表した「福島沖で巨大地震が起きる可能性がある」との見解(長期評価)の信頼性を認め、東電と国が適切に対応していれば、被害は避けられたと述べた。

 判決には厳しい言葉が並ぶ。

 例えば、東電は長期評価に批判的な学者一人だけに意見を聞いて、同評価は信頼できないと当時の原子力安全・保安院に伝えていた。高裁は「不誠実ともいえる東電の報告を唯々諾々(いいだくだく)と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった」と批判。東電も国も津波対策を講じた場合の負担の重さを恐れ、安全より経営を優先したことが事故を生んだとの見方を示した。

 そして、国の責任を東電の2分の1とした一審を見直し、同等の責任を負うと結論づけた。原発政策を推進し、第一原発の設置許可を維持してきたことも踏まえたものだ。

 いずれもうなずける判断だ。

 行政の不作為が司法によってここまで明確に指弾された事実は重い。立場を問わず、この問題に関わった当事者は過去を真摯(しんし)に省みる必要がある。あわせて、いまなお原発の再稼働をめざす政権、そして経済的理由から火山噴火やテロへの備えの先延ばしを求める電力各社は、判決をしっかり読み、その説くところを胸に刻むべきだ。

 今回の判決のもう一つの意義は、損害賠償の対象となる地域を広げたうえで、故郷を失った被害の深刻さなどをくんで額も増やしたことだ。支払いを命じた総額は10億円を超す。

 賠償はこれまで、政府の原子力損害賠償紛争審査会が定めた指針に基づいて進められてきたが、それでは不十分だと指摘されたことになる。同じような判断は、別の同種訴訟でも繰り返し示されている。

 朝日新聞の社説は、事故からほどない時期に策定された指針が、現実の被害に見合っていないとして見直しを訴えてきた。この課題にもただちに取り組むよう、改めて政府に求める。

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