座間事件初公判 「つながる闇」がそこに

2020年10月1日 07時56分
 座間市(神奈川)で男女九人が殺害された凄惨(せいさん)な事件の裁判員裁判が始まった。被告は起訴内容を「間違いありません」と認めた。見ず知らずの他人と接触する「つながる闇」への警戒も必要だ。
 二十三歳だった八王子市(東京)の女性が二〇一七年に行方不明になった。捜査員が会員制交流サイト(SNS)でやりとりしていた人物のアパートを割り出すと…。座間市に住んでいた白石隆浩被告のアパートからは何と九人の遺体が見つかった。「座間事件」はこのような経緯で発覚した。
 検察側が明らかにした手口は、相手が自殺願望をSNSで表明していると、自分も自殺願望があるかのようなツイートを掲載する。「一緒に自殺しよう」と誘う。会う約束を取り付け、自分のアパートに誘い入れ、金づるになりそうかどうか見極める。
 そうでないと判断すると、いきなり首を絞めて、乱暴し、首を吊(つ)って殺害。証拠隠滅のため、死体を多数の部位に切断し、一般ごみとして捨てる。頭部は事件発覚の恐れがあるから、自宅のボックス内に保管−。そんな構図を検察は描いている。
 だから罪名は強盗強制性交殺人や死体遺棄などだ。弁護側は被害者が暗黙のうちに殺害に同意していたとして承諾殺人罪にとどまると主張。さらに被告が事件当時、精神障害で心神喪失か心神耗弱状態だったと弁護側は述べて、責任能力を争う。裁判では丁寧な審理を尽くし、凄惨な事件の真相を解き明かしてもらいたい。
 一方でSNSを使った犯罪は後を絶たない。白石被告自身、ツイッターでは「首吊り士」などのハンドルネームを使い、自殺志願者を募る書き込みをしていた。警察や防犯団体などはネット上をパトロールし、同種の書き込みを見つけたらSNS事業者に通報。事業者は投稿を削除したりアカウントを凍結する対策を進めている。むろん限界があろう。
 厚生労働省の統計では二〇一九年の自殺者は約二万人で十年連続で減っている。だが十九歳以下に限ると三年連続の増加だ。若者の中に死にたい気持ちがまん延するのか。何よりも生きやすい社会をめざし、自殺を防止することが政府が取り組むべき課題である。
 安易に見知らぬ相手につながりを求める風潮にも注意喚起がいる。助けを求める声に寄り添う社会の態勢もいる。SNSが犯罪の温床になっては残念である。

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