カルネ村へ来た目的は、ひとつは開拓村を視察する事。もっともそれだけならカルネ村である必要はないのだが、悟が興味を持ったのはトブの大森林のすぐ側に村がある事だった。
RPGをプレイしていると普通森の方がモンスターとの遭遇率が高いし、モンスターの強さも上がるものだ。
カルネ村はそんな立地にありながら、モンスターに襲われることもなく平和に開拓を進めている。何か理由があるのではと調べると、森の賢王なる聖獣が、村への襲撃を防いでいるという。
見たことのないモンスターを見たいという好奇心を悟抱き、また伴侶であるラナーもその聖獣を見てみたいという事から、本来入るべきである城塞都市エ・ランテルには入らずに、帝国を出た足で、二人はこのカルネ村へ来たのだった。
村長にこの事を告げると、翌日に聖獣の下へ案内をしてくれるという。二人も急ぐ旅ではないので、一泊する事に決めた。
そうと決まればカルネ村はお祭り騒ぎ。狩人は森に入って新鮮な獲物を、料理自慢の主婦は腕をこれでもかと振るう。子供達も果物や木の実を集め、村人全員が領主と奥方をもてなそうと、張り切っていた。
そして·····カルネ村あげての歓待を受けた悟とラナーは楽しい夜を過ごした。
もちろん楽しいだけではなく、今後の治世の参考になることもたくさん学べたのであるが。
そして一泊の後、聖獣との対面を終えカルネ村へ悟達が戻ると、ちょうとエ・ランテルから使者が来たという。
「申し上げます。一大事でございます。王都にて、バルブロ王子が王位についたと宣言をいたしました」
「やりやがったか·····あの馬鹿·····」
「それで、お父様は?」
ラナーは問う。
「はい。ランポッサ3世陛下は、病気のために退位したと発表されております·····」
「建前だな。実際は幽閉されているとみるが·····さすがに父親を殺す度胸も度量もあの馬鹿にあるわけがないからなぁ·····」
「その通りでございます。王都からの密書では、王宮内のどこかにいるだろうと·····」
弟のザナックを消すことは出来ても父を殺すことは無理だろうという悟の人物評価は正しい。所詮バルブロは小物だ。ただ、先に生まれただけなのだから。
「ザナックお兄様は? まさかバルブロお兄様に?」
「いえ、そのような報告は入っておりません。ザナック王子とレエブン候は行方不明と聞いております。まだエ・レエブルへの出兵はありませんが、街道は封鎖されており、二人の行方をバルブロ王子が血眼になって追っているそうです」
「上手く逃げたか?」
「かもしれませんね。レエブル候がついているならザナックお兄様はいずれ姿を表すと思います。ただ、私が思うにバルブロお兄様は、ザナックお兄様を悪に仕立てると思います」
ラナーはバルブロの全てを見透かしているように見えた。
「ラナー様のおっしゃる通りでございます。ザナック王子とレエブン候には、ランポッサ3世とバルブロ王子を殺そうとした謀反の容疑がかけられております」
そのような事実はなく、でっち上げの言いがかりに過ぎない。
「·····我々もだろうな·····」
「申し上げにくいのですが、その通りでございます。帝国との共謀容疑で出頭命令·····その裏では捕縛命令が出ております」
悟はラナーと顔を見合わせ笑みを浮かべた。
「やはりか。まあ、あながち間違いでもないけどな·····よし、ナザリック軍を総動員せよ!」
悟は堂々と命じる。
「かしこまりました」
「それと我が盟友であるジルクニフへ使者を送り、約束通り派兵してもらうように伝えてくれ」か 悟は用意してあった書状をどこからともなく取り出し、使者へと預けた。
「·····御意のままに」
「私とラナーは、陛下いや義父上をお救いする! 正義は我にあり。偽王は私が討つ! 」
悟はそうハッキリと口にした。