ガス点検を装った強盗が多発している

8月から、首都圏で相次いで起きているのが…

“ガス点検を装った強盗”だ。

9月23日午後3時ごろ、東京・足立区にある団地の70歳代の男性の部屋に「ガスの点検に来ました」と男2人が侵入。

男らは、男性の口や両手足を粘着テープで縛り、現金およそ30万円を奪い逃走した。幸いにも、男性にケガはなかったが、同様の事件は他の場所でも…。

9月22日午後5時ごろ、東京・世田谷区に住む80代の夫婦宅に、上下紺色の服を着た50代くらいの男と、肌色の長袖シャツを着た20代くらいの男が訪れた。

「ガスの点検に来た」と言われ、夫婦は家の中に2人を招き入れる。すると…。

「金はどこだ?」「騒ぐな、殺すぞ!」

2人の男は態度を一変。金を出すよう夫婦を脅してきたという。

さらに男2人は、家にあった粘着テープで夫婦の両手両足を束縛。現金1万5000円が入ったショルダーバックと、現金5万円が入った財布を奪い取った上、夫の腕に軽傷を負わせ逃走した。

犯人はまだ捕まっておらず、警察は捜査を続けている。

“ガス点検を装った強盗”は、先月下旬から確認されているだけでも、千葉県で1件、神奈川県で4件、東京都で3件、少なくとも8件の強盗が相次いでいる。

トップを逮捕しないと繰り返されていく

元警視庁・刑事の吉川祐二氏は、犯人像をこう分析する。

元警視庁刑事・吉川祐二氏:
家の中に入るための手口がガス器具の点検ということ。これがだいたい一緒になってきている。
そのことから考えても、同一グループの可能性が高い。数十人のグループではあると思います


千葉県松戸市の住宅で、よく似た手口で“ガス点検を装った強盗”を図った実行役と指示役と見られる男らは、逮捕されている。

しかし、吉川氏は今後も犯行が続く可能性を指摘する。

元警視庁刑事・吉川祐二氏:
トップを逮捕しないと、手を変え品を変え、犯行が繰り返されていく可能性が高いです。
トカゲのしっぽ切りになってしまう可能性が考えられるので、一刻も早く上の方に捜査を進めていく必要があるのではないでしょうか


一体なぜ、“ガス点検を装った強盗”が増えているのか?そして、本物のガス点検作業と偽物の見分け方は?

「直撃LIVEグッディ!」のスタジオでは、詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明氏に解説してもらった。

コロナで高齢者の在宅率が上がっている

大村正樹フィールドキャスター:
いま、“ガス点検を装った強盗”がなぜ増えているのでしょうか?多田さんに聞きました


<“ガス点検を装った強盗”なぜ増えている?>
1:コロナ禍で高齢者の在宅率が高くなっている
2:ガス点検を装えば、簡単にドアを開けてくれる
3:振り込め詐欺への危機意識が高くなっている

安藤優子キャスター:
狙われているのは高齢者がいらっしゃるお宅ですよね。事前の下調べ等があるんでしょうか?

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
今回の強盗は、過去の振り込め詐欺の延長だと見てもらっていいと思います。
いわゆるアポ電などかけまして、その人が高齢者世帯だと実行する。強盗するには、やはり自分より力の弱い人たちがいるところの方がやりやすいわけです。

しかも今回キャッシュカードなども取って、暗証番号まで聞いているんです。
ということは、これは振り込め詐欺の手口とほぼ一緒です。
全てパターン化されていて、今回のやり方も粘着テープで縛る、2人組で行く、ガス点検と言う、非常に共通している点が多いですよね

安藤優子キャスター:
つまり手順がすべてマニュアル化していて、組織立った犯罪だと見立てているわけですね

大村正樹フィールドキャスター:
“ガス点検を装った強盗”のパターンは大きく分けて2つあるそうです


<“ガス点検を装った強盗”2つのパターン>
パターン1:アポ電で在宅を確認してから訪問する
パターン2:事前通告なしに突然訪問する
訪問後、家に入り身動きをできなくし脅迫
現金・キャッシュカードなどを奪い、暗証番号を聞き出して逃走する

東京ガスは点検費用が無料

大村正樹フィールドキャスター:
では、被害に遭わないためにはどうすればいいのか?『東京ガス』の広報担当者に、実際に行われるガス点検時の対応について聞きました


<東京ガスの“ガス点検”基本的な流れ>
1:作業員は原則、1人で訪問する。制服を着用し、身分証を提示する
2:「ガス設備定期保安点検」が行われるのは4年に1度。点検の案内が7日~14日前に書面で投函される。点検費用は無料

なお、東京ガスグループでは、新型コロナウイルス感染拡大下にお客さま宅を訪問することにご理解を得ることやお待ちいただく時間をなるべく少なくするために、状況に応じて、事前に到着目安時間等を電話でご連絡しております。

大村正樹フィールドキャスター:
投函される案内にも、注意する点があるそうです

<東京ガスから投函される案内の特徴>
・点検日の7日~14日前を目安に、必ず訪問予定日と時間帯を記載した紙を配布している
・訪問予定日欄が手書きなら偽造の可能性あり!訪問予定日の欄は原則、印字されている
・問い合わせ番号欄が携帯電話なら偽造の可能性あり!問い合わせ番号は原則、固定電話

安藤優子キャスター:
ここまで全て偽装される可能性も、ゼロではないですか?

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
可能性はゼロじゃないですけど、こういう連中は突発的に指示を受けてやるので、事前にここまで綿密にやる可能性は低いと思っています。
今言われたような見分け方をしっかり持っていれば、防げるところは大きいでしょう

安藤優子キャスター:
でも、振り込め詐欺の場合は犯行の手口がどんどん巧妙化していますよね。
そういうことも考えられるのではないでしょうか

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
そうですね。こうした強盗みたいなものは去年ぐらいから起きていて、被害も数百万、集団でその家を下見して…というのが多かったんです。

けど、今回に関してはとにかく行って、次々取れるものを取っていこうという方向にシフトしてきています。どんどん私たちの身に危険が迫っていると思いますよね

安藤優子キャスター:
こんなに荒っぽくなったのは、最近の傾向なんですか

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
そうですね、ここのところの傾向です。先ほど言ったように、やはり振り込め詐欺にみんな警戒するようになった。家の人が電話すら出なくなり、狙えなくなったという背景があると思います。

犯人は、インターホン越しに偽の身分証を見せてくるケースがありますので、常にガス会社に確認をしてほしいと思います

アポ電には貯金額を絶対に伝えないで欲しい

大村正樹フィールドキャスター:
実際に犯人が来たり、アポ電がかかってきたらどう対処すればいいでしょうか?

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
まず、国税調査や警察、市役所を騙った電話がかかってきたときに、家族構成や貯金の額は絶対に伝えないでほしいですね

ヨネスケ:
これを聞いてきたら危ないですか?

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
これを聞いてきたら、この後なにか詐欺をするか、あるいは今回のように強盗をするかどちらかとなるでしょう

安藤優子キャスター:
電話をかけてきた相手が警察を名乗ろうがなんと名乗ろうが、家族構成や貯金額を聞いてきたら怪しんだ方がいいと?

詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏:
そうですね。これを聞いてくる事はまずないですから。怪しいと思ったら、1回切って確認する。
もう一つが、知り合いから情報を集めて、状況を把握するのが1つの手です。

例えば「ガス漏れがあった」なんて訪問してきた時にそのまま家に入れるのではなく、ちょっと帰ってもらって、本当にそういうことがあるのか近所に聞いて回る。
そうすると、近所にももしかしたら(犯人が)来ていたかもしれない。
こうした注意喚起の情報は、近所の人としっかり連携を取っていくことが大事です。

他にも、実際に強盗に遭った家で、断った家があるんです。ところが入られた。
なぜかというと、裏の玄関が開いていたんです。
ですから、こうした者が来たと思ったら、家の全部に鍵をかけてください。それで身を守らないと本当に危険です

安藤優子キャスター:
何とかしてお金を奪おうとしている輩なわけですから、そういう意味では手段を選ばないところがあるという風に、私たちは警戒しなければいけませんね


(「直撃LIVE!グッディ」9月24日放送分より)