入国制限の緩和 再拡大防止を最優先に

2020年9月30日 07時57分
 政府は十月から全世界を対象にコロナ禍対策の入国制限を緩和する。社会経済活動の回復を狙った措置だが、世界的な終息はいまだ見通せない。感染の再拡大防止を最優先に慎重に進めるべきだ。
 現在、日本からの渡航者や日本人の入国を制限している国・地域は百を超える。一方、日本政府も百五十九の国・地域からの入国を制限しつつ、主にビジネス関係者を対象に一部の国とは既に往来を再開している。十月からはそれをさらに拡大する方針だ。
 「第二波」は収束の方向である。医療態勢も逼迫(ひっぱく)しているわけではない。
 失業者が増加し、経済へのダメージが拡大する今、「Go To事業」と合わせて入国制限緩和で経済を動かす必要性は理解できる。来年夏の東京五輪・パラリンピック開催を考えれば、準備を加速させたいとの狙いもあるだろう。
 今回の緩和は観光客を除き、三カ月以上の中長期間滞在する外国人を対象に入国を条件付きで認める。ビジネスに加え留学生や技能実習生、医療、文化芸術、スポーツ分野にも対象を広げる。
 在留外国人約十万人が四月以降、再入国を拒まれている。学ぶ機会や働く機会が奪われたまま放置することは、国際社会からの信用をなくしかねない。責任ある対応を求められているのは確かだ。
 ただ、海外から新型コロナウイルスが持ち込まれ、感染が再拡大することは防がねばならない。
 「第一波」の対応では、中国・武漢からの国内への感染拡大は抑え込みができた。だが、その後に欧州からの帰国者などから感染が広がってしまった。
 空港などの水際対策の重要性は言うまでもない。主要空港での検査態勢の拡充は喫緊の課題だ。十分な態勢を整えることが門戸を開く条件になる。
 それでも検査精度を考えると感染者のすり抜けが懸念される。それを前提にした対応が不可欠だ。
 政府は、出国前の検査証明や、入国後に検査で陰性でも二週間の自宅などでの待機を求める。受け入れ企業や団体がその対応を確約することが条件となる。
 感染防止にはこの対応を確実に企業などに実施してもらう必要がある。政府はその重要性を重ねて説明すべきだ。
 政府は当面、受け入れ人数を一日千人程度に限定する。だが、入国者が増えれば感染拡大リスクは高まる。感染状況を見極めた柔軟な対応こそが必要となる。

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