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2017年03月06日

中学生の6割は「月は西からのぼる」と信じている。(2)

7. 彗星は夜空を一瞬だけ流れて消える。
(回答者数 384人)
信じている   97人(25.3%)
やや信じている 51人(13.2%)
知らない・わからない153人(39.8%)
やや疑っている 26人(6.8%)
信じない    57人(14.8%)

 僕がこの質問を思いついたきっかけは、前に『トンデモ本の世界T』で紹介した妻のエピソードである。

> 僕の妻がまだ勤めていた時のこと。百武彗星がやって来たのだが、妻がそれを職場で話題にして、「今度の彗星って、ひと晩じゅう見えてるんやて」と言うと、その場にいた同僚たちが全員、「えっ、彗星って一瞬だけ流れるもんとちゃうの?」と驚いたという。みんな、彗星と流星の区別がついていなかったのだ。

 大人でも彗星と流星の区別のつかない人が多い。だったら中学生なら……と思ったら案の定で、1/3以上が「彗星は夜空を一瞬だけ流れて消える」と信じていた。それに対し、「やや疑っている」「信じない」子供の少ないこと!

8. 人工衛星が落ちてこないのは高すぎて地球の引力が届かないから。
(回答者数388人)
信じている   98人(25.3%)
やや信じている 53人(13.7%)
知らない・わからない157人(40.1%)
やや疑っている 28人(7.2%)
信じない    52人(13.4%)

 7とほとんど同じ結果になった。
 この質問は僕の高校時代(1973~74年ごろ)のエピソードがヒント。当時、アポロ計画が終了し、スカイラブ計画がスタートしていた。アポロを打ち上げたサターンⅤ型ロケットを改造した宇宙ステーション「スカイラブ」が打ち上げられていて、その内部の模様──無重力状態でふわふわ浮かんでいる宇宙飛行士の姿が、よくテレビで紹介されていた。
 その頃、工業高校の物理の時間に、教師がこう言ったのである。
「宇宙に行くと無重力になるやろ? あれは地球の引力が届かへんほど遠くまで行ったからや」
 僕はびっくりした。教師、それも物理の教師がこんなデタラメなことを言うなんて!
 でも、さすがに授業中に立ち上がって教師に抗議をするほどの度胸はなかった。そこで授業が終わるとすぐ教室を飛び出し、廊下を歩いていた教師をつかまえて、「自由落下」というものについて教えてやった。
 そもそも学校で使われている物理の教科書には、「引力は無限遠まで届く」とはっきり書いてある。「引力は距離の2乗に反比例して減少する」とも。
 地球の中心から地表までの距離は6378km。つまり地表から高度6378kmまで上昇すれば、地球の中心からの距離は2倍になり、引力は1/4になる。
 しかし、スカイラブが回っている高度は約440km。つまり地球の中心からの距離の1.1倍もない。その地点での引力の強さは、地表の引力とほとんど変わらないのである。
「引力は無限遠まで届く」「引力は距離の2乗に反比例して減少する」──こんなことは教師も当然、知っていたはずだ。だが、その知識を現実の人工衛星や宇宙ステーションにあてはめて考えることができなかったのだ。
 理科の知識は「知っている」だけではだめなのだ。その意味を理解していないと。

9. 恐竜が地上で栄えていたころ、人類はまだ存在しなかった。
(回答者数388人)
信じている   193人(49.7%)
やや信じている 50人(12.9%)
知らない・わからない65人(16.8%)
やや疑っている 40人(10.3%)
信じない    36人(7.4%)

 この質問については、アンケートを配布した後で、「まずかった」と気がついた。最近の学説では、「鳥は恐竜の一種」という説が有力になってきているのだ。恐竜は滅びたのではなく、鳥として今でも生き残っていると。だからそこまで知っている子供なら、今でも恐竜が栄えていると解釈し、「信じない」と答えるかもしれない。
 もっとも、結果はご覧通り、「信じない」子は7.4%。何にしてもそんなに多くない数字だった。



12. 50年前に比べて、日本の少年犯罪は大幅に増えている。
(回答者数385人)
信じている  145人(37.7%)
やや信じている76人(19.7%)
知らない・わからない  125人(32.5%)
やや疑っている14人(3.6%)
信じない   25人(6.5%)

 さあ、これも問題だ。少年犯罪が大幅に増えていると信じている子供が6割近くもいる! 「やや疑っている」「信じない」子供は約1割。
 データを見れば一発で嘘だって分かるんだけど。

http://kogoroy.tripod.com/hanzai.html
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm

 もちろんこんなことは学校では教えないはずなのだが、子供たちはどこで信じこまされたのだろうか?
 やはり「最近の子供は荒れている」といった言説があまりにもまかり通っているので、自然に「昔の方が犯罪は少なかった」と錯覚するようになったのかもしれない。

 他にも『ニセ科学を10倍楽しむ本』で取り上げたニセ科学について、いくつか質問してみた。

10. 大きな地震が起きる前には「地震雲」が発生する。
(回答者数385人)
信じている   95人(24.6%)
やや信じている55人(14.3%)
知らない・わからない  145人(37.7%)
やや疑っている34人(8.8%)
信じない   56人(14.5%)

 信じている子供が多いのではないかと予想していたのだが、最も多かったのは「知らない・わからない」で、思ったほど多くはなかった。でも、やはり4割近い子が信じているのは、やや問題かもしれない。

13. マイナスイオンは健康にいい。
(回答者数387人)
信じている   126人(32.6%)
やや信じている55人(14.2%)
知らない・わからない 143人(37.0%)
やや疑っている33人(8.5%)
信じない   30人(7.6%)

 マイナスイオンブームなんてとっくに終わってるから、信じている子供は少ないかと思っていたのだが、なかなかどうして。まだかなり信じられている。

14. 水素水は健康にいい。
(回答者数387)
信じている   128人(33.1%)
やや信じている57人(14.7%)
知らない・わからない 101人(26.1%)
やや疑っている40人(10.3%)
信じない   61人(15.8%)

 マイナスイオンと水素水、あまり違わない結果だった。

16. ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる。
(回答者数386人)
信じている  118人(30.6%)
やや信じている 66人(17.1%)
知らない・わからない 117人(30.3%)
やや疑っている31人(8.3%)
信じない   54人(14.0%)

 あれだけ批判を受けたのに、まだ子供たちにはニセ科学だということがあまり浸透していない印象である。今でも親が「ゲームをやりすぎるとゲーム脳になるよ」と脅しているのかもしれない。

25. 水に「ありがとう」と声をかけるときれいな結晶ができる。
(回答者数387人)
信じている    100人(25.8%)
やや信じている  29人(7.5%)
知らない・わからない 94人(24.3%)
やや疑っている  34人(8.8%)
信じない     134人(34.6%)

 これも驚きだった。『ニセ科学を10倍楽しむ本』でも書いたけど、2006年の時点で『水からの伝言』は激しい批判を受け、TOSSランドからもリンクはすべて削除された。今、日本の小中学校で『水からの伝言』を授業に使っているところはほとんどないはずなのである。(この箕面市の2つの中学でも使われていないという)
 それでもまだ約1/3の子供が信じている。
 考えてみれば、『水からの伝言』は世界75カ国で出版され、シリーズ累計250万部以上というベストセラーだ。まだ日本のあちこちに何万人もの信者がいて、こっそり広め続けているのかもしれない。


タグ :ニセ科学

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この記事へのコメント
地表に物体が張りつけるのは気圧のおかげ、と言った小学5~6年の担任を俺は馬鹿にし続けています。
Posted by 森野大吉 at 2017年03月06日 18:34
ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる。 ですが、
【マンガ】で分かるネット・スマホ依存症「ゲームで脳への血流が下がる!」
http://izons.net/category/manga/
2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣
https://www.amazon.co.jp/product-reviews/4413044916/ref=cm_cr_dp_text/354-0306927-5237211?ie=UTF8&showViewpoints=0&sortBy=helpful#R3T64T9QR34YQ6

ゲーム脳亜種をとなえるかたはいらしゃいますね。
Posted by 一読者 at 2017年03月07日 10:26
「ゲーム脳」に関しては、単語の意味が変わってしまっているのかもしれません。
たとえば、何でもかんでもゲーム内の用語や常識に当てはめて考えてしまうような人のことを指す、と言うように。
放射能(放射線)の危険や被害を針小棒大に過大評価して騒ぎ立てる人のことを「放射脳」と言うのと同じような感じですね。
Posted by D+ at 2017年03月08日 07:59
>「引力は無限遠まで届く」「引力は距離の2乗に反比例して減少する」

すみません。引力って重力のことなんですか?
重力の正体はたしか空間のゆがみですけど、歪んでる範囲は限られるはずなので
重力が無限に届くのはおかしいのでは?

重力とは違うとしても「距離の2乗に反比例して減少する」と
「無限遠まで届く」は矛盾してませんか?
つまり、離れるほど引力が小さくなるのは当然ですけど
無限に届くなんておかしいと思います。
絶対に私の疑問はどこか間違っているはずですけど
わかりません。
Posted by ど素人の疑問 at 2017年03月28日 22:33
道徳で「江戸しぐさ」なんかを扱うよりも、山本さんの『ニセ科学を10倍楽しむ本』とか管賀江留郎の『戦前の少年犯罪』を扱った方がよほどためになるかと思います。

残念ながら「ゲーム脳」仮説は教育界では今もなお根強く使われています。興味がおありでしたら、「"ゲーム脳" site:ed.jp -filetype:pdf」「"ゲーム脳" site:ed.jp filetype:pdf」などでGoogle検索してみてください。ブログとプリントが大量にヒットします。
Posted by 和製科学 at 2017年04月01日 17:40
 いつもの911陰謀論者から反論が来ましたが(笑)削除しました。
 いいかげんあきらめろって。
Posted by 山本弘山本弘 at 2017年04月06日 20:51
>ど素人の疑問さん

 気持ちはよくわかります。こんな風に考えるのはどうでしょう。

仮定その1
 重力は無限遠まで届き、その影響力は常に一定である。

 この仮定が正しいという前提に立った場合、質量1の質量点Aが周りに1の重力を及ぼしている場合、Aから距離1にある1点が受ける重力は、球の表面積=4πr^2かつr=1なので

1/4π

 距離が2の場合、同様にAから距離2にある1点が受ける重力は

1/(4π×(2×2))=1/16π

 したがって「重力は距離の2乗に反比例して減少する」と「重力は無限遠まで届く」は矛盾しない(逆に重力が無限遠まで届かないと逆二乗則が成立しない)。

 …多分考え方としては間違ってないと思うんですが(苦笑)。
Posted by あまね at 2017年04月16日 12:22
ど素人の質問 様
 引力とは重力と遠心力の合成力で、地球には遠心力があるため重力中心より少し遠心力側に引っ張るベクトルが生まれます。
 これが引力で中学校で習ったハズです。
Posted by 怪鳥 at 2017年04月21日 10:24
万有引力の意味ですが、
減少するというのは、厳密には、一定比率で小さくなるという意味です、
つまり、0にはならず、たとえ小さくとも影響は存在します。

以下万有引力の解釈のコピペです、
>距離の二乗に反比例して、質量に比例する

この通りになります。二つの物体の質量をM[kg]・m[kg] とし、その間の距離を r[m] とします。

「質量に比例する」というところの質量は、二つの物体があるのでそれぞれに比例し、結果として質量の積 Mm に比例します。
また、反比例は逆数に比例することなので、 1/r^2 に比例することになります。

よって、万有引力は Mm/r^2 に比例する、となります。比例定数は G で表すのが普通で、式としては

F=GMm/r^2

となります。この比例定数Gは「万有引力定数」と呼ばれます。
Posted by アリ at 2017年04月22日 16:51
万有引力の中で、身近に体感できる物が、星の上にいる物に係る重力になります。
机や椅子、床、地面、そういう物に立つことが、
つり合いが取れた一般的な重力だと思います。

これが落下状態になると、重力を感じるための支えがなくなり、
引力を体感できなくなります。

これが円周運動にいる宇宙飛行士が感じる、
無重量状態でしょうか、

引力自体が発生する原因は、空間の性質の変化でいいのかな。
Posted by アリ at 2017年04月22日 17:30
宇宙飛行士が感じる無重力は、円周運動中に生じる慣性力と重力がちょうど、釣り合いの取れた時に起こる現象で、
エレベーターとか、ジェットコースターとか、引力を感じることは身近にあって、教育に使うと面白いと思います。

どこかでミスがあれば、まだ勉強不足で申しわけありません。

SFというジャンルは、未来を想像し、
当たることもあります、、
小説家という方は、一分野の偉大なご職業だと思います。
Posted by アリ at 2017年04月23日 15:07
>>一読者 at 2017年03月07日 10:26
『脳を鍛える大人のDSトレーニング』や『2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣』を監修した川島隆太教授には『ホットケーキで「脳力」が上がる』(小学館)などという著作もあります
私は未読なんですが、一昔前に喧伝されていた「魚を食べると頭がよくなる」をふと想起しました
教育脳科学が志向する「頭がよくなる」という定義がそもそも曖昧で、だからこそ怪しげな教育論を色々と引き寄せることが出来るんではないかと
Posted by 悪の手先 at 2017年04月29日 19:19
ちょっと、タイミングを外してしまったみたいですが
ど素人の疑問様へ
>絶対に私の疑問はどこか間違っているはずですけどわかりません。

間違っていると言うよりも、方向がずれてしまった一番の原因は、
>歪んでる範囲は限られるはずなので
>無限に届くなんておかしいと思います。
”はず”とか、”思います”
等の、主観的な、
”自然科学的な事を説明するのに余り適していない物”を、
よりどころにしている点でしょうね

丁度逆の例になりますが、中学校の頃数学の先生が挙げていた、
”数学的帰納法を使うと全ての頭はハゲになる”
のと似た様な物でしょう

前半の方は、根拠が「そうなるはず」しかないので、
「そうはならない」としか言い様がありませんが、

後半の方はもう少し何とかなりそうです

例えば、
「(万有)引力は距離が大きくなるほど、大きさは小さくなる」
と言う事を認めてはおられる様なので、

「無限の遠くまでは届かない」
と言う事を、もう少し、はっきりと定義すれば疑問は解決するかもしれませんね

一例としては、
「無限までは届かない」条件を、
「”ある距離”で大きさが0になる」と言う事にしてみますね
そうすれば、”ある距離”より遠くでは、大きさが0になる以外に先に挙げた
「(万有)引力は距離が大きくなるほど、~」
の条件に合わせる事ができなくなりますから、
"ある距離”より遠くには"(万有)引力は届かない"
として良いでしょう

そして、
「(万有)引力の大きさが距離の2乗に反比例する」
のなら、
(距離の2乗)分の1、
が0にならない事は、”明らか”で良いと思います
あえて言うのなら、
「(距離の2乗)分の1、がどんな数字になっても、それよりも(大きさの)小さな数字が必ず存在する」
が根拠になります
Posted by だぁく・はんど at 2017年05月25日 10:30
「ミスター円」こと元大蔵官僚の榊原英資氏は2016年7月の時点においても尚、「ゲーム脳」を用いて「携帯やスマホの普及で、多面的に考える脳が退化」「若者の知的レベル低下の片棒をかつぐIT企業」などと仰っています。

金木亮憲「2分割的発想は思考の退化、人間の幼児化!」『NETIB NEWS』2016年09月06日
http://www.data-max.co.jp/280906_ibknk01/

>「携帯やスマホの普及で、多面的に考える脳が退化」
>(前略)今では、電車などに乗ると大人から子どもまで、ほとんどの人が携帯やスマホを操作、画面を見つめ、ゲームやSNS通信などをしています。この場合、いわゆる「ゲーム脳」とか瞬時に反応する脳は進化しますが、じっくり考えるとか、多面的に考える脳は、進化しないばかりか、むしろ退化させてしまうきらいがあります。

そういえば以前、「ゲーム脳」は教育現場で未だに多用されているという旨の書き込みをしましたが、自治体(これも広義の教育現場ですが)でも「ゲーム脳」は多用されています。「"ゲーム脳" site:lg.jp filetype:pdf」「"ゲーム脳" site:lg.jp -filetype:pdf」でもググってみてください。
さらに「"ゲーム脳"」の部分を「ゲーム 前頭前野」や「ゲーム 前頭葉」に置き換えて、「ゲーム 前頭前野 site:ed.jp filetype:pdf」などでググってみても、やはり「ゲーム脳」仮説と同値のページが大量にヒットします。
Posted by 和製科学 at 2017年07月14日 16:07
連投すみません。
「キレやすい若者」や「ゲーム脳」って突き詰めればこういう事だったんじゃないかと。
「社会学部・社会学研究科 佐藤 哲彦 教授(2)」『関西学院大学 社会学部・大学院社会学研究科』 2015年5月7日
http://www.kwansei.ac.jp/s_sociology/s_sociology_006884.html
Posted by 和製科学 at 2017年07月22日 09:37
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