なんでも鑑定団「4点目の曜変天目茶碗」の疑問点まとめ

テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の2016年12月20日放送回で「番組史上最大の発見」「国宝級のお宝」という鑑定とともに2500万円の評価額が付いた「4点目の曜変天目茶碗」。しかし放送後、様々な専門家から「あれは偽物」とコメントが相次いでいます。そのへんをまとめ。

更新日: 2018年01月23日

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まとめのまとめ(2018年1月現在)

・テレ東、中島誠之助氏は公式には誤鑑定を認めていない
・該当回の再放送・ネット局での放映はされていない(この回だけ飛ばされている)
・番組Pが4月に交代した
・「偽物とは断定できない」との奈良大学の分析には科学的欠陥があると長江氏が反論
・番組の茶碗を曜変と認める陶磁研究者・博物館美術館関係者・骨董商関係者はいまだ一人も出ていない
・中国の陶芸家・李欣紅氏がこの茶碗の作者として名乗り出た
・番組の茶碗と同一個体と思われる茶碗が放送の前年にヤフオクで落札されていたことが判明

もくじ

1
・放送前から大々的に宣伝
・曜変天目茶碗とは?
・2016年12月20日「鑑定団」放送 → 評価額は2500万円!
・「番組最大の発見」「国宝になっていたかも」
・放送直後の報道
2
・茶碗の高解像度画像
・しかし放送直後から異論が
3
・類似品の画像が続々見つかる
・山田五郎氏の疑問
・長江惣吉氏の反論動画
4
・長江惣吉氏の反論動画2(「供御」について)
・高台・釉・土について
・「1985年頃から見かけるタイプの偽物」
・家系図がおかしい(文体、名前)
・家系図がおかしい2(史実との食い違い)
5
・家紋がおかしい
・「茶碗の入れ物」→ 茶道具の「建水」(水こぼし)では?
6
・国宝級で「2500万円」は安すぎる
・「長江氏動画」以降の報道
7
・再放送が飛んだ?
8
・2017/2/10 再鑑定/撤回を求める長江惣吉氏の声明
・2017/2/23 テレビ東京社長のコメント
・2017/2/28 奈良大「化学顔料ほぼ検出されず」
9
・2017/2/28 大阪市・市民の声「茶碗の鑑定に関する学芸員の発言について」【New!】
・2017/3/2 長江氏による BPO への申し立て
10
・2017/3/7 朝日新聞「4点目「曜変天目」は本物?「なんでも鑑定団」で波紋」
・2017/3/7 奈良大分析に対する長江氏の反論
・2017/3/10 BPO「審議対象とせず」
・2017/3/18 徳島新聞「奈良大の分析に欠陥」
11
・2017/3/27 産経新聞「X線分析結果に専門家が猛反論」
・2017/4/4 週刊ポスト「「疑惑の茶碗」の真贋論争が泥沼化」
12
・2017/4/4 岡田プロデューサー降板
・2017/02 - 06 『陶遊』での長江惣吉氏の反論
13
・2017/06/26 日経中文網「日本で見つかった「国宝級の中国陶器」は本物か、偽物か? 」
14
・2018/01/16 FLASH「「なんでも鑑定団」茶碗 中国のオバちゃんが「私が作った!」」
・2018/01/19 鑑定団の茶碗が放送前にヤフオクで落札されていた 【New!】
15
・番組スポンサー
16
・関連サイト

放送前から大々的に宣伝

2017年12月20日の「開運!なんでも鑑定団」放送前に、テレビ東京の web サイトで以下のプレスリリースが公開された。

2016年12月20日(火)夜8時54分からテレビ東京で放送の「開運!なんでも鑑定団」で、番組始まって以来のお宝が大発見される様子が放送されます。

それは、これまで世界に3点しか存在しないと言われていた幻の焼き物、“曜変天目茶碗”!

鑑定中お宝をつぶさにチェックした鑑定士・中島誠之助は、「鑑定団始まって以来、最大の発見!」と断言。
今まで存在しないとされていた4点目の曜変天目茶碗がスタジオに出現したことになります!

これを受けてメディア各社もプレスリリースの内容を報道。

テレビ東京系バラエティ番組『開運!なんでも鑑定団』(毎週火曜 20:54~)の20日放送回で、番組始まって以来のお宝が発見されたことがわかった。

その正体は、これまで世界に3点しか存在しないと思われていた焼き物、”曜変天目茶碗”。現存する3点はいずれも国宝に指定されており、幻の4点目の発見に、鑑定士の中島誠之助も大興奮の事態となった。
...
岡田プロデューサーは「鑑定士中島誠之助が番組22年の歴史の中でも『最大の発見』と大絶賛する様には思わず体が震えました」と収録を振り返り、「日本にはまだまだ本当にすごいお宝が眠っている」と興奮した様子で語った。

曜変天目茶碗とは?

曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)は、天目茶碗のうち、最上級とされるもの。略して曜変天目と呼ばれることもある。

漆黒の器で内側には星のようにもみえる大小の斑文が散らばり、斑文の周囲は暈状の青や青紫で、角度によって玉虫色に光彩が輝き移動する[1][2]。「器の中に宇宙が見える」とも評される。曜変天目茶碗は、現在の中国福建省建陽市にあった建窯(中国語版)[3]で作られたとされる。現存するものは世界でわずか3点(または4点、後述)しかなく[注 1]、そのすべてが日本にあり、3点が国宝、1点が重要文化財に指定されている。
...

南宋のある時期、建窯で数えるほどわずかな曜変天目茶碗が焼かれ、それから二度と焼かれることは無く、なぜ日本にだけ現存し、焼かれた中国には残っていないのか(器が割れ欠けている完全でない状態のものは発見されている)、大きな謎として残っている。

現存する曜変天目は以下の3点のみ。(すべて国宝)

国宝 曜変天目茶碗(「稲葉天目」)

徳川将軍家 → 春日局 → 淀藩稲葉家 → 岩崎小弥太(三菱財閥)→ 静嘉堂文庫

国宝 曜変天目茶碗

水戸徳川家 → 藤田平太郎(藤田財閥)→ 藤田美術館

国宝 曜変天目茶碗

津田宗及(茶人)→ 江月宗玩(宗及の子、大徳寺龍光院開祖)→ 大徳寺龍光院

これに加えて、2009年に中国で出土した茶碗(欠けている)が1点あり。

2009年に中国浙江省杭州市の工事現場で出土。出土場所はかつての王宮の迎賓施設跡。

2016年12月20日「鑑定団」放送 → 評価額は2500万円!

三好長慶の子孫の家から譲り受けたとのことで、三好家の系図や三好家の「三階菱」紋の入った木箱・布などとともに保管されていたとのこと。

「番組最大の発見」「国宝になっていたかも」

鑑定士総評
「開運!なんでも鑑定団」が始まって最大の発見。この茶碗は12世紀から13世紀、中国の南宋時代に福建省の建窯で焼かれた曜変天目に間違いない。日本にもたらされた天目茶碗は数がかなりあるが、ただその中で曜変というのはたった3点、しかもその全てが国宝。今回この依頼品が出たことによって、4点目が確認されたということになる。漆黒の地肌に青みを帯びた虹のような虹彩がむらむらと湧き上がっており、まるで宇宙の星雲をみるよう。鉄分をかなり多く含んだ土を焼き締めてあるので石のように硬い。それを丁寧に真ん丸に削り出した蛇の目高台。これは国宝「稲葉天目」の高台とほぼ同じ。
...
室町幕府第13代将軍足利義輝を頂いて権勢を奮った三好長慶が、足利家から取得した東山御物の一碗であることは間違いない。もしこの茶碗が信長・秀吉・家康が所有し、さらに現代に伝わったものであれば国宝になっていたかもしれない。

放送直後の報道