GoTo拡大 公平かつ柔軟な対応を
2020年9月29日 07時52分
コロナ禍に苦しむ観光業界などを支援する「Go To 事業」が十月から拡大される。支援自体に異論はないが公平さを欠く面がある。感染を拡大させる懸念もあり、柔軟なかじ取りも必要だ。
十月から随時始まる「Go To イート」は外食産業の支援が目的。事業に参加する店で食事した場合の食事券発行による補助と、オンライン予約によるポイント付与が主な内容だ。
飲食店への支援が喫緊の課題ではある。ただ事業のうちポイント付与については、「食べログ」「ぐるなび」といったサイトを通じた予約が対象となる。つまりオンライン予約を受けていない店には恩恵がない。
高齢の経営者が切り盛りしている古い飲食店などで、オンラインと縁遠いケースは多い。こうした店もコロナ禍で深い痛手を受けているはずだ。対象店舗の幅を広げたり、事業とは別に支援策を設けるなど知恵を絞ってほしい。
「Go To トラベル」は十月一日から東京発着が追加となる。観光庁の調査では七月の国内旅行は前年同月比78%減と相変わらず厳しいが、五月の96%減と比較すると持ち直している。これは事業が七月後半から前倒し実施された効果とみていいだろう。
だが旅行の内実をみると、高額の宿泊が満室になるケースが増えている半面、価格の安い民宿やビジネスホテルなどは依然、苦戦しているとの指摘が多い。経済的に余裕のある人たちが、同じ補助率でもより高額の旅行を楽しむ構図が浮かび上がる。
事業にはトラベルで約一兆三千五百億円、イートでも二千三億円の予算が投じられる。多額の税金を投入するのであれば、より公平な仕組みが必要ではないか。政策効果が隅々まで行き届くよう制度設計の大幅な修正も含めて改善すべきである。
厚生労働省の発表では、コロナ禍による解雇や雇い止めはすでに判明分だけで六万人を超えた。このうちの多くが飲食や観光関連である。
コロナ禍対策で最も難しいのは感染防止と経済再生の両立だ。GoTo事業は経済により強く重きを置いた対策で、雇用面からも期待はできる。
ただ公平性や効果に疑問が残る上、このままアクセルを踏み続ければ感染拡大の大きな要因にもなりかねない。感染の状況を丹念に見極めながらブレーキをかける柔軟さも求めたい。
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