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日本酒 “意外性”で消費拡大!?
コロナ時代 日本酒の新たな需要はいずこに?
新型コロナウイルスの影響で外食需要が落ち込み、日本酒の消費も低迷しています。こうした中、意外な提案で新たな需要を取り込もうという動きが出ています。
“家飲み”増えて売れる酒あり
【報告:経済部 池川陽介記者】
業界大手の白鶴酒造では、瓶の日本酒の売り上げが落ち込んでいます。一方、伸びているのが「紙パック酒」。店頭では2リットル1000円前後が売れ筋です。
“家飲み需要”が高まり、紙パック酒の手ごろな値段が人気で、4~7月の出荷量は前年同期に比べおよそ1割増えています。灘魚崎工場の松宮雅一工場長は「生産時間を伸ばして対応した。毎日2時間半伸ばした」と話します。
さらに家庭での需要を掘り起こそうと販売に力を入れているのが、果実酒をつくるための日本酒です。果物を漬け込んで、好みのお酒をつくることができます。会社では、女性や若者に飲んでもらいたいと考えています。マーケティング本部の坂田隆宣次長は「インスタ映えするとか、目で見て楽しい。リーチできていない世代の方に、こういったお酒を通してコミュニケーションできれば」と話しています。
新たな楽しみ方で すそ野拡大を
大吟醸など比較的高価な日本酒をつくる酒蔵の萬乗醸造では、消費の落ち込みに歯止めをかけようと、需要の掘り起こしに懸命です。日本酒の新しい楽しみ方を提案するイベントを開き、中華やフレンチなどと組み合わせて提供。消費拡大を狙っています。イベントで日本酒を味わった男性客は「和食以外のものでもすごく合う」と感じたとのこと。また女性客の一人は「若い人でも飲みやすい」と話していました。
“食べる酒米”で日本酒への興味を
萬乗醸造が今、最も心配しているのが、全国の酒造会社で減産が相次ぎ、原料となる酒米が大量に余ることです。農家が一度ほかの作物に転換してしまえば、すぐに酒米づくりを再開するのが難しくなるという問題があります。
そこでこの酒蔵では、あえて余った酒米を買い取り、看板商品の大吟醸の名前をつけて販売しています。酒米はコメの粒が大きく粘りが少ないのが特徴で、チャーハンやパエリアなどの料理に向いています。酒米で作ったチャーハンをいただいてみると、一つ一つのコメの粒が大きく食べ応えがあって、すごく「お米を食べている」感じがしました。
この酒蔵では、酒米を消費者に食べてもらうことで農家を支援するとともに、日本酒への興味を持ってもらいたいと考えています。久野九平治社長は「コロナという問題がなければ、食べてもらおうなんていう発想は絶対していないし、逆手にとって、いいチャンスだから1回食べてもらって記憶にとどめてもらったらいい」と考えています。
酒米をごはんとして食べたことはないから、どんな感じなのか興味がありますね!
そうですね。この秋に収穫される酒米も余ってしまうと、農家がいよいよ転作を余儀なくされると懸念されています。すると、日本酒の需要が回復した後でも思うように日本酒をつくれないことになりかねません。そこまで考えてこうした取り組みを行っているそうです。