ブラック・ライヴズ・マターのようなマルクス主義組織が「西側核家族」を解体しようとする理由
Mises Instituteの記事の和訳
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ブラック・ライヴズ・マターのようなマルクス主義組織が「西側核家族」を解体しようとする理由
2020年07月27日
ブラッドリー・トーマス
ブラック・ライヴズ・マター(BLM)組織の最もよく引用され批判されている目標の1つは、我々が知っているように家族を廃止したいというはっきりと述べられた願望である。具体的には、BLMの公式ウェブサイトに次のように記載されている。
我々は、母親、両親、そして子供が快適な程度に、互いに特に子供をまとめて面倒をみる拡張的な家族と「村」として、互いを支援することによって、西洋の所定の核家族構造の要件を破壊する。
この考えはもちろんBLMに固有のものではない。「核家族」を「破壊する」ことは、マルクス主義組織の間で一般的に述べられている目標だ。BLMの創設者が「訓練されたマルクス主義者」であると明確に主張していることを考えると、組織のリーダーシップがマルクス派の家族についての見方を採用したことは驚くべきではない。
しかし、家族に対するこの敵意はどこから来たのか。部分的には、それはマルクスとエンゲルス自身の理論と、家族の初期の母権制度が社会を組織化する原則として私有財産を拒否したという彼らの見解から来ている。この古い家族の部族モデルが私有財産を促進および維持する現代の「家父長的」な家族に道を譲ったのはその後のことであった。
明らかにマルクスの見方では、この「新しい」型の家族は反対されなければならない。この家族モデルの破壊が私有財産の廃止もまた容易にするからである。
部族生活における初期の家族単位
フレデリック・エンゲルスの1884年の本「家族、私有財産、および国家の起源」は、近代西洋の家族単位の発展とその財産権との関係についてのマルクスの見方の歴史的展望を提供してる(もちろんエンゲルスはマルクスの長年の恩人であり、マルクスとの共同作業者であった)。
エンゲルスはマルクスの枠組みの中で家族の起源を再構築するのに、彼の調査によると「部族内には無制限の性交が存在し、すべての女性がすべての男性に属していいて、そしてその逆も同様である」ことが明らかになった人類の「残酷な」原始段階にさかのぼる。
そのような状況下で「子供の父親が誰なのかは不明であるけれども、母親が誰なのかは明らかである」とエンゲルスは説明した。女性の血統のみが認められた。「若い世代の唯一よく知られた親を育てる」母親としての女性は「尊敬と敬意の高い賛辞を受け、完全な女性の統治[女権政治]になった」とエンゲルスは説明した。
更に、部族は「ジェンテ」と呼ばれる小さなグループに細分されたとエンゲルスは書いた。
これらのジェンテは母親の側の血族であり(つまり同じ祖先の子孫を含み)、その中での婚姻は固く禁じられていた。「従って特定の『ジェンテ』の男性は部族内で妻を選択することができ、原則としてそれを行ったけれども、『ジェンテ』の外で妻を選択する必要があった」とエンゲルスは説明した。そしてこの段階での「結婚」は「共同社会」の問題であった。つまり男性と女性の間の複数のパートナーシップが例外というよりは規則に近いということを意味した。
母親は確実に決定できる唯一の親であり、小さなジェンテは母親の親族の周りに配置されたため、初期の家族単位は本質的に非常に母性的であり、子育てと相続の権利と義務に関する母系の法律が慣習になっていた。
「ペアリング・ファミリー」への移行
エンゲルスによると、これが何千年もの間の状況であった。しかしながら時間の経過とともに、エンゲルスが「ペアリング・ファミリー」と呼ぶものが出現した。「男性には...多くの女性の中で最も重要な妻がいて、彼は彼女にとって他の男性の中で最も重要な夫であった」。部族内の「ジェンテ」が互いに結婚することを許されない親類の種類をますます多く発達させたことが大いに影響した。これらの制限の増加により、グループ結婚はますます不可能になり、ペアリング・ファミリー構造が取って代わった。
しかしながら、この構造の下では母親の役割が依然として支配的であった。エンゲルスは、セネカ。イロコイ族の宣教師のアーサー・ライトを引用し、「女性の側が一般的に家を支配していた...女性は、一族[ジェンテ]や他のあらゆる所で支配的な力であった」と記している。
女性がすべて同じジェンテに属しているのに夫は別のジェンテから来ていたという事実が「女性の一般的かつ広範囲にわたる覇権の原因であり基盤であった」とエンゲルスは書いた。
「多くの夫婦とその子供たちからなる古代の共産主義的な家族では、女性に委ねられた家族の管理は男性による食糧の調達と同じほど公的な機能であり、社会的に必要な労働であった」と彼は付け加えた。
エンゲルスが説明したように、社会が「残酷」から「野蛮」へと進化したとき、1つの重要な進化は人間が動物をうまく飼い慣らし繁殖させることを可能にする人間の武器と知識の発展であった。
牛と家畜が富の源、つまり牛乳と肉の貯蔵庫になった。「しかし、この新しい富の所有者は誰であったか」とエンゲルスは尋ねた。「間違いなく元々はジェンテであった」と彼は答え、富の源に対する集団的なグループの所有権に言及した。「しかしながら、群れの私的所有は早い時期に始まっていたに違いない」。
「生活の手段を手に入れることは常に男性の仕事であった。生産の道具は男性によって製造されて所有された。群れは新しい生産の道具であり、その飼いならしと世話は男性の仕事であった。従って、男性は牛と、牛と引き換えに入手した商品と奴隷を所有していた」とエンゲルスは説明した。この移行は「集団的」な財産から財産の - 特に生産資源の財産の - 「私的」所有への初期の移行を特徴付けた。
このような変化が「家族における革命をもたらした」とエンゲルスは述べた。
その革命の一部には、家庭における権力の原動力の変化が含まれていた。
「生産に起因するすべての余剰は、今や男性の手に落ちた。女性はその成果を共有したけれども、女性はその所有権を主張できなかった」とエンゲルスは書いた。
以前は生計の手段の管理と分配に関与していた女性の家庭内の地位は逆転した。
「家庭での男性の現実的な優越性の出現は、男性の普遍的な優越性への移行を示し」、更に「ペアリング・ファミリーから一夫一妻ファミリー(我々が核家族とみなすもの)への漸進的な移行」につながった。
男性は優越した地位を獲得したことで物質的な相続権を打倒することができたとエンゲルスは書き、これは「女性の性別による歴史的な敗北」の動きであったと説明した。
エンゲルスによると、家族単位の男性中心の家父長制への移行は完了した。これに対する非難の多くは私有財産の出現と私有財産に対する男性の権利に起因する可能性がある。
家父長制を克服するには
従ってマルクス派の見方では、現代の核家族はエンゲルスが以前に述べた古代の「共産主義」の世帯に反している。それは家父長的で私有財産を中心にしている。
「大多数の場合、少なくとも所有者階級の中では男性が生計を立てて家族を支える必要がある。これにより、男性は何の法的特権を必要としない優越した地位を獲得する。家族の中で男性はブルジョワであり、女性はプロレタリアートを意味している」。集団的な部族ではなく家族の単位が「社会の産業単位」になっていた。
エンゲルスによると、この家父長制の支配の打倒は - エンゲルスとマルクス主義のイデオロギーに染まった人々が家父長制のことで責めた - 生産手段の私有財産を廃止することによってのみ可能になる。
「差し迫った[共産主義]革命は、永続的で継承可能な富の少なくとも圧倒的な部分 - 生産手段 - を社会の財産に変えることによって、この継承全体の心配を最小限に抑えるだろう。
エンゲルスには、この新しい社会の取り決めはどのように見えるだろうか。
子供の世話と教育は公共問題になる。社会は合法でも違法でもすべての子供を平等に世話をする。これは、今では本質的な社会的要因を形成する「結果」についての心配を、即ち - 道徳的にも経済的にも - 少女が愛する男性に無条件に降伏することを取り除く。
ここにおいて、現代の左翼が「家父長制」と核家族を本質的に資本主義的で私有財産であるとして、今繰り返して攻撃していることが初期の繰り返しであることがわかる。
この点で、BLMは他のマルクス主義グループと何の違いもない。組織の目標は、警察の虐待や警察の残虐行為をはるかに超えている。最終的な目的は生産手段の私有財産に基づく社会の廃止なのだ。
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