今回は先日Twitterでゆるく募集したブログのネタについてです。
有難いごとに13件の返信をいただきました。
その中でも、僕が書けそうな範囲で、3名の方が気になると言っていたBV計について簡単ですが、まとめていこうと思います。
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循環血液量モニタ:BVMとは?
BVMはBlood Volume monitorで直訳すると血液のボリューム(体積)のモニタです。
透析分野では循環している血液の量(流量)を監視(モニタリング)する装置を指す場合が多いです。
一言でBV計、ブラッドボリューム計と言うと、あるメーカーの製品名を指す場合もあります。
なので今回はBVをモニタリングする機器を総称として、BVM:Blood Volume monitorとしました。
CEの方はこのような、製品名なのか、総称しての名称なのかを是非区別して覚えていただきたいです。
BVMの原理・特徴など
昔はBVM単体の装置があったそうですが、僕が調べたり、聞いた限りでは現在発売されているのは透析監視装置内蔵型のみで、各社オプションとなっているそうです。
原理は近赤外線を用いて近赤外線量(Hbの吸光度の違い)を測定するもの1)と動静脈回路内圧差の変化から血液の粘稠度を測定するもの2)があります。
各社、データをダウンロードすることが可能です。
BVMを使う意義
結局これを知りたい方が多いのではないでしょうか?
定義でBVMは循環血液量モニターということを述べました。
血液透析は患者さんのVAから脱血し、血液浄化して返血する治療で、BVMはその体外循環している血液量をみます。
HD(血液透析)で考えると、血液浄化(拡散)をするだけでは循環血液量はほとんど減りません。
(厳密に言うと、血漿浸透圧が動くので水分の移動は除水しなくても起こっています)
しかし、実際は血液浄化するだけではなく、体から余分の水分をひく”除水”を行っています。
透析監視装置が行う除水は、細胞内でも細胞外でもなく"血液"からひくので、除水をすることでその循環している血液量が減っていきます。
つまり、BVMを使うことで、除水により循環している血液量がどれだけ減ったかをみることができます。
測定原理が近赤外線を用いる場合は血液量がどれだけ減ったかを、循環血液量変化率(以下ΔBV)(%)として表します。
BVMの用途・実用例
ここからが本題です。
BVMは主に除水による循環血液量の減少具合(変化率)をみることができることが分かりました。
さて、このがΔBVが分かるとどのよううなことに役立つのでしょうか?
僕が色々調べた限りと経験則から4つ考えられます。
①DWの指標の1つ
DWの指標は僕の記事のまとめにもあるように↓
-
DW(ドライウェイト)を決めるための指標【決定版】
ドライウェイト(以下DW)。 透析の現場にいると、1日に1回はこの言葉を聞くのではないでしょうか。 具体的に例を挙げれば 患者「DWがきついです。」 医師「血 ...
続きを見る
①心胸比②hANP③血圧④症状など様々なものがありますが、BVMで算出されるΔBVもその指標としてなり得ます。
除水が多いと血液から多くの水分をひくことになり、濃縮が起こりやすくなります。
近赤外線を用いる場合のΔBVはHtの変化率を見ているので、除水が多く濃縮が進むとΔBVが大きくマイナスになります。
実際、図を見てイメージしてみるのが早いので図示しました。
除水量が多く、DWがきつい場合のBVイメージ
除水量が少なく、DWがあまい場合のBVイメージ
除水量はどうやって求めるのでしょうか?
除水量=透析前体重ーDWですよね。
除水量がその時点の患者さんに対して多過ぎる場合、すなわちDWがきつい場合は、ΔBVの減少率が大きくなってしまいます。
逆にDWがあまい場合はΔBVの減少率が小さくなります。
※当たり前ですがDWが適正でも飲水量・食事量・発汗量が少なければ体重の増えが少ないので除水量が少ないですよね。ΔBV減少率が少ない→DWがあまいと安直に考えるのはおやめください。逆もまた然りです。
この考えを元にして、多施設共同研究を行い、その時の除水量(すなわちDW)においてΔBVが適正範囲内かを知ることができる「リファレンスエリア」という考え方もあります3)。
詳しくは参考文献を参考にしてください。
(J-STAGEのリンク貼っておきました。無料です。)
②IDH(透析低血圧)のモニタリング
IDHは透析中の除水量・除水速度の影響で起こる場合が多いです。
ΔBVの減少率がIDHの予防に有効となる場合があります。
根拠はありませんが一般的にはΔBVが-15%以内と言われていますが、IDHに耐えうるΔBV減少率は患者さんそれぞれです。
IDHが起こる場合のΔBV減少率は患者さんの年齢、基礎疾患、DMの有無、動脈硬化の程度など様々な要因がありますが、BVMを使ってデータを蓄積して分析して、「この患者さんはΔBVが〇〇%を超えたらIDHが起こりやすい傾向がある」とIDH予防の1つの指標となります。
装置によってはΔBVが設定した値まで下がった時警報を鳴らしてくれるものもあるので、IDH早期発見・予防に繋がると言えます。
③再循環率測定
今回紹介するBVMのもう一つの使い方です。
再循環とは「きれいにした・除水した血液を再度引き込んでしまう現象」ですが、BVMでも再循環測定をできる装置があります。
再循環はAVの逆接続やV側穿刺部中枢に狭窄がある場合に起こりますが、再循環が起きると過濃縮、予期せぬ透析効率の低下に繋がりかねないので、予防するに越したことはありません。
慢性血液透析用バスキュラーアクセスの 作製および修復に関するガイドライン4)では、
2 回以上の再循環率の測定で,尿素希釈法を用いた場合は 15%以上,尿素法以外の希釈法を用いた場合は 5%以上であればその原因を検索する必要がある.
引用:2011年版社団法人日本透析医学会「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの 作製および修復に関するガイドライン透析会誌 44(9):855〜937, 891,2011
とされています。
BVMを用いた方法は尿素法以外なので再循環率5%以上なので精査する必要がありますね。
注意点としてはBVMで再循環率測定する場合は、様々な誤差・精度が出る5)6)ので、測定方法は誤差を低くするように努める必要があります。
④I-HDFの効果の確認
最後にもうひとつBVMの使い方として、IHDFの効果の確認が挙げれます。
I-HDFは間歇的に透析液を補充するHDFですが、補液すると循環する血液量が増えるのでΔBVは増えます。
こんな感じです。(うまく曲線書けない)
I-HDFの開発論文7)8)でもBVMを使っていましたし、IHDFの効果の確認としてはもう一つレーザー血流計がありますね。
I-HDFにモードを変更した場合に、前のモードとΔBVの変化の程度を比較してみることでI-HDFの効果が確認できます。
I-HDFの原理等は過去記事にまとめておりますのでよかったらどうぞ。
-
I-HDFとは?I-HDFの原理・効果
どうもさぼです。 突然ですが皆さんI-HDFって知っていますか? あとで詳しく説明しますが、 I-HDFはオンラインHDFの一法として認められ、 オンラインH ...
続きを見る
まとめ
・BVMはBlood Volume monitorといい、循環血流量をモニタリングする装置である。
・BVMを使うことで、除水により循環している血液量がどれだけ減ったかをみることができる。
実用例や用途は4つ考えられる
①DWの指標の1つ
②IDH(透析低血圧)のモニタリング
③再循環率測定
④I-HDFの効果の確認
今回は以上となります。
装置内蔵のBVMは今後主流になると思っていて、毎回行われる透析のΔBVをデータベース等で保存して、分析することができれば更に使う用途が増えるのではないかと考えています。
Reference
2) 安藤 勝信.透析装置の最前線―自動化,モニタリング,透析通信 モリタリング (1) 循環血液量モニタ. 臨牀透析. Vol.28 No.6:39-44.2012
3) 吉田泉 他.透析中の循環血液量モニタリングによる新しいドライウエイト設定法の評価.透析会誌 43(11):909〜917,2010
4) 2011年版社団法人日本透析医学会「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの 作製および修復に関するガイドライン透析会誌 44(9):855〜937.2011
5)村上淳 他. 日機装社製透析装置 DBG-03 に搭載された循環血液量(BV)モニターを用いた、バスキュラーアクセス再循環スクリーニングの有用性と問題点.日本血液浄化会誌22(3):203-213. 2014
6)中井歩 他.機装社製 BV 計の測定精度に関する検討.日本血液浄化会誌26(1):92-94. 2018
7)江口圭 他. 新しいHDF療法 (間歇補液HDF : intermittent infusion HDF) の考案とその臨床効果. 透析会誌. 2007;40(9):769-774
8)江口圭 他. 逆濾過透析液を利用した自動モードによる間歇補液血液透析(intermittent infusion HD)の考案とその臨床評価. 透析会誌. 2009;42(9):695-703
参考サイト
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