どうもさぼ(@ce_sabo)です。
今回は前回の記事の続きです。
まだ読んでいない方はこちらを先にお読みください。
オンラインHDFを行う上で、TMPがどのような動きをするのか?上下する原因・要因には何があって、安全に施行するためには何に注意をすればいいのかは、必須の知識です。
でははじめていきましょう。
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目次 [閉じる]
なぜTMP上昇に気を付けなければならないのか?
そもそもTMP上昇を抑える理由を考えていきましょう。
結論から先にいうと、TMPの過度の上昇はAlb漏出が加速する恐れがあるからです。
オンラインHDFはα1MG以上の比較的大きい分子の物質を除去を目的とし、それに伴いAlbが抜けますが、目詰まりが起こりTMPが過度に上昇(具体的な数値は調査中)すると目詰まりが外れ、目詰まりを起こしていたAlbなどの物質が透析液側に引き込まれます。
Alb漏出が加速すると言いましたが、日本で主流の前希釈法は後希釈法と比べ、目詰まりが起こりづらい(≒TMPが上昇しづらい)という点からも、安全にオンラインHDFを行えることが考えられます。
オンラインHDFにおけるTMP上昇を抑える方法
ここで1つだけ注意点です!
TMP『上昇』を『抑える』方法です。
TMPは濾過が進むと上がります。
よって今回紹介するのは『下げる』方法ではないということをご注意ください。
①補液速度(Qs)を下げる
これは一番簡便でコンソールの設定画面でできます。
前回の質問者の施設はこの方法に当たります。
前回の記事では、濾過が進むと、膜の目詰まりが起きてTMPが上がると説明しました。
オンラインHDFは補液をした分濾過をする治療法です。
よって、補液する量(濾過する量)を少なくするとTMPが上がりづらくなります。
最初に述べましたが、TMPは下がらないということを覚えておいてください。
②膜の大面積化
これはHDFについて日頃から勉強したり、学会積極的に参加している人はご存知かと思います。
この方法は既存のHDの知識では考えられません。
オンラインHDFではTMPを上がりづらくするために大面積化が有効です。
膜面積を大きくすると濾過流速(単位面積あたりの濾過流量)が小さくなるので、より少ない圧力(TMP)で濾過をすることができます。
個人的な考えとしては、TMPも圧力なので、圧力の『単位』をイメージすればいいかと思います。
圧力の定義は「単位面積あたりに何Nの力がはたらいているか」です。
圧力の単位は医療機関ではmmHgが使われていますが、圧力のSI単位はPa(パスカル)で、こいつの本体はPa=N/m2です。
つまり、『加える力(N)面積(m2)を大きくすると圧力は下がる』ということが分かります。
実際のヘモダイアフィルター内の中空糸の圧力損失は厳密には管を流れる流体なのでこんな単純ではありませんがあくまでイメージということで。
③TMPが上昇しづらい膜に替える
ニプロ社製のFIXのような膜はTMPを上げづらい膜の一つとしてあります。
ヘモダイアフィルターの中空糸の膜面が濃度分極層が形成されづらい材質や技術があると、TMPが上がりづらいとされています。
④定圧濾過法にする
現在の日本のオンラインHDFは補液速度を設定して、TMPに関わらず補液する『定速濾過法』が一般的です。
TMPによらないため、治療目標に準じた総補液量を補液できる(濾過できる)のがメリットです。
それとは逆に補液量をTMPで監視・制御する方法が「定圧濾過法」です。
定圧濾過法では設定したTMPに反って補液量を下げたり、上げたりの調節をします。
オンラインHDFで治療後半になるとTMPが上がってくると、設定したTMPになるように補液量を下げるといった動きをします。
原理的には方法①と一緒のことをしてますね。
⑤IHDFと併用する ※TMP上昇抑制の可能性
こちらの記事に載せたIHDFの効果③で『③膜性能の経時減少抑制(逆濾過に限る)』があります。
これは逆濾過透析液を間歇的に補液することで、目詰まりしていた膜を洗い出し、TMPの上昇を防ぐ可能性があります。
目詰まりが起きやすい後希釈法でIHDFを併用した場合、TMP上昇が抑制できた3)という報告もありました。
まとめ
現在、期待されるオンラインHDFにおけるTMP上昇を抑える方法は5つ。
①補液速度(Qs)を下げる
②膜の大面積化
③TMPが上昇しづらい膜に替える
④定圧濾過法にする
⑤IHDFと併用する ※TMP上昇抑制の可能性
新たな方法や修正・改善点が見つかったら随時更新していきたいと思います。
オンラインHDFを語るうえで外せないTMPの知識。
是非、勉強していきましょう。
[参考文献]
1)春原隆司.マキシフラックス,ファインフラックスの設計コンセプト.腎と透析Vol.81別冊 ハイパフォーマンスメンブレン`16.東京医学社.2016.13-15
2)田岡正宏.HDF療法の歴史と基礎.これまでがワカる。これからがワカる。透析療法最前線.東京医学社.2018.172-182
3)小澤友也他.後希釈オンラインHDF時のI-HDFのフラッシング効果について.腎と透析85巻別冊 HDF療法’18.東京医学社.2018.200-202
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