どうもさぼ(@ce_sabo)です。
前回の記事で『個人』としての価値を高める方法を述べました。
この記事で挙げた方法の1つに「研究をする」があります。
臨床研究するには研究デザインや統計手法などの知識が必要ですが、その前にCQをRQにして、PICO/PECOまで構造化しないといけません。
※1 研究によってはこのような型に当てはまらない場合もあります。
※2 『量』的研究が該当します
そこで今回は、よいRQにするためのFINER check、FIRM2NESS checkというのをまとめていきます。
RQの段階でFINER checkまたはFIRM2NESS checkをすることで、より一層研究に磨きがかかります。
CQ・RQ・PICO/PECOってなに?という方は先にこちらの記事をお読みください。
・臨床研究におけるPICO・PECOを意識することのメリット
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よいRQにするためのFINER checkとは?
FINER checkのFINERとは以下の通りです。
Feasible(実現可能性)
Interesting(科学的興味深さ)
Novel(新奇性)
Ethical(倫理性)
Relevant(切実な・必要性)
引用:参考文献1).379
このようにFINER checkとは、よいRQにするための5つのチェック項目の頭文字をとったものです。
これはHulley教授という方が提唱しました。
FINER checkに更にチェック項目が追加されてものが、次に述べる『FIRM2NESS check』なので各チェック項目はそちらで述べます。
FIRM2NESS checkとは
FIRM2NESS checkはFINER checkを提唱したHulley教授の教え子である福原先生(参考文献2の著者)が作りました。
ちなみにfirmnessとは『堅固で揺るがない』という意味で、まさにfirmnessな研究を作るべくして作られたものであると感じています。
FIRM2NESS は以下の通りです。
Feasible=実施可能性
Interesting=真に興味深く
Relevant=切実な問題
Measurable=科学的に測定可能な
Modifiable=要因・介入が修正可能な、アウトカムが改善可能な
Novel=独自性があり
Ethical=倫理的で
Structured=構造化された
Specific=具体的・明確な表記を用いて
引用:参考文献2).28
このようにFIRM2NESS checkはFINERに加えて、M、M、S、Sが更に付け加えたものとなります。
それぞれ解説していきます。
Feasible
研究においてFIRM2NESS checkの最初の文字であるFeasibleが第一の関門ではないでしょうか。
研究はまず『Feasible(実現可能)である』ことが求められます。
1つ目は「研究費」の問題です。
たとえば、「あるフィルターのAlb漏出量を計測したい」といってもその測定装置がなければ研究はできません。
なかった場合、買うかレンタルすることになりますよね。
病院で働きながら研究をする場合は、研究に使うお金がかなり限られて来ると思います。
逆に何かの医療機器を新規導入した場合なんかは、研究のチャンスともいえますね。
2つ目は「サンプルサイズ(標本の大きさ)」の問題です。
研究デザイン・統計手法によって必要なサンプルサイズは違います。
対象としたい人の場合、背景因子などをそろえる必要があったりするので、「サンプルサイズが足りない」という状況は多々あると思います。
また、サンプルサイズを意識していない研究を散見しますが、研究においてサンプルサイズは非常に重要です。
Interesting
学会に参加するときでも『Interesting(興味深いな・おもしろい)』って研究があったら見に行きますよね。
自分が「おもしろい」と感じて、聞いた人・見た人が「興味深い研究だった」と思えるような研究を心がけたいです。
僕が目指す研究の姿でもあります。
Relevant
提唱者である福原先生はこのように述べています。
“FIRM2NESS check”の中でも最上位に位置づけられる基準であり、このことはどれほど強調してもし過ぎることがありません。
参考文献2).30
僕もFIRM2NESS checkの中で『Relevant(切実な問題か)』どうかは一番重要であるという考えです。
ついつい研究は新奇性や先程述べたinteresting(興味深さ)を意識し過ぎてしまいがちですが、研究は「患者さんにとって切実な問題であるのかどうか」というのは忘れてはならない視点かと思います。
今まで慣習的に行われていた間違った医療行為を防ぐための根拠を出すような研究だったり、新しい治療法や薬の有用性を示す研究などが該当します。
Measurable
これは量的研究では主に変数を取り扱うので、その対象からサンプリングする際に『Measurable(測定可能な)』でなければいけません。
測定不可能な未知の尿毒素物質を研究対象になんてはできませんよね。
数値などの変数を取り扱う研究の場合は測定可能でなければ、比較も解析もできないのです。
特に患者さんの痛みや痒みなどの主観的な症状は代表的な尺度やスケールを使うなど工夫がいるものもありますね。
Modifiable
Modifiableは単体では「修正可能な」という意味です。
FIRM2NESS checkでは『要因・介入が修正可能な、アウトカムが改善可能な』という意味で用いられます。
たとえば、ある研究を行ってAという要因で、患者さんの悪影響を及ぼすBというアウトカムが起こることが証明できたとします。
Bというアウトカムにならないために、要因Aを介入・改善することができるか?が大事な視点なのです。
Novel
これはinterestingに通じることですが、研究は『Novel(独自性がある)』というのも求められます。
先行研究のまねや、ほんの少し条件を変えてみたりしても独自性はなかなか生まれません。
しかし、先行研究で明らかになっていないものを更に条件を変えて追及するというのは独自性はあるかもしれないので、とにかく既存の関連研究を読み漁ることが必要となってきます。
Ethical
ヒトを対象とする研究では『Ethical(倫理的)』でなければなりません。
これは「倫理委員会の承認を得ればいいんでしょ。」という話ではありません。
臨床研究における倫理的であるとは何か?
ヘルシンキ宣言と米国National Institute of HealthのEmanuelらが提唱した7つの倫理要件を読んでください。
厚生労働省のHPでも「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」というものがあります。
こちらも必読ですね。
倫理的であるというのは対象となる患者さんのプライバシーとか匿名性を保つのみならず、科学的・社会的意義のあるもので実施されるものでなければならないのです。
Structured
これは臨床的な疑問(CQ)を具体的にし(RQ)、そのRQを更にPECO/PICOにまでもっていくといった、一連の流れのことを指します。
つまり、研究は1つの疑問から『Structured(構造化)』される必要があります。
イメージは段階を踏んで研究のレベルまで積み上げるという感じでしょうか。
Specific
研究は方法、対象、比較対象、結果をすべて『Specific(具体的・明確な)』でなければなりません。
なにかを計測してそれを結果とする場合は、どんな計測機器を用いて、どんな条件で、どんな手技でなどまで、事細かに考え、記載するべきです。
これができていないと研究の信憑性が揺らぎかねません。
統計手法を記載しないでP値だけを示して結果を表すなどもっての他です。
まとめ
少し長くなってしまいましたね(^^;)(反省)
研究計画をたてるときは是非FINER checkまたはFIRM2NESS checkをやってみてください。
FINER check
Feasible(実現可能性)
interesting(科学的興味深さ)
Novel(新奇性)
Ethical(倫理性)
Relevant(切実な・必要性)
引用:参考文献1).379
FIRM2NESS check
Feasible=実施可能性
Interesting=真に興味深く
Relevant=切実な問題
Measurable=科学的に測定可能な
Modifiable=要因・介入が修正可能な、アウトカムが改善可能な
Novel=独自性があり
Ethical=倫理的で
Structured=構造化された
Specific=具体的・明確な表記を用いて
引用:参考文献2).28
[参考文献]
1)谷澤雅彦,と柴垣有吾.臨床研究のすすめ方(1)リサーチ・クエスチョンとPICO/PECO.[特集]透析室での臨床研究ー研究デザインと研究のまとめ方.臨床透析 Vol.29 No.4.日本メディカルセンター.2013.7-14
2)福原俊一.臨床研究の道標<上巻> 7つのステップで学ぶ研究デザイン.特定非営利活動法人 健康医療評価研究機構.2013.29-31