どうもさぼ(@ce_sabo)です。
近年、日本の透析療法の約9割がオンラインHDF(オンライン血液透析濾過)となっており、これからもどんどん普及していくと思います。
当院では今年からオンラインHDF前希釈法・I-HDF(間歇補充型血液透析濾過)に加えて、オンラインHDF後希釈法を導入しております。
今回は外来透析患者300超のフィルター選択に関わっている僕がその経験をいかしてポイントをまとめていきます。
オンラインHDFのフィルター選択は通常のHD(血液透析)と比べ、注意点が多く、単純にフィルターを選んでしまうととても危険なので、しっかり勉強しましょう。
通常のHDと比較しながらポイントを挙げていきます。
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目次 [閉じる]
Point①モードによる違い
まずはモードです。
通常のHDと比べ、オンラインHDFでは大きく前希釈法・後希釈法、そしてオンラインHDFの変法としてI-HDFがあります。
今後主流となるのはおそらくこの3つです。
モードごとにヘモダイアフィルターに求められる特性が異なるので、モードに合ったヘモダイアフィルターの選択が必要となってきます。
ちなみに日本での普及割合は前希釈法が約90%、後希釈が約10%です。
I-HDFは最新のデータが分からないのですが、これから増加すると予想されます。
日本での普及割合をみても分かる通り、前希釈法が大半を占めているため、日本のメーカーのヘモダイアフィルターはほとんどは『前希釈法』を用いるのを想定して作っているそうです。
この背景を踏まえてモード別に考えてみます。
前希釈法に適したフィルター
前述した背景にも書いた通り、日本のメーカーのヘモダイアフィルターは『前希釈法』を前提として作られています。
なので、前希釈法に適したフィルターはざっくりいうと「日本のメーカーのもの」と考えられます。
あとはMFX-Uシリーズは前希釈法専用となっているので、孔径による違いも注意しなければなりません。(下図)
図1.MFX-Uシリーズの注意点(赤線)
引用:文献1)
後希釈法に適したフィルター
後希釈法は前希釈法と違って、フィルター後に希釈をするので、『血液濃縮』が起こります。
その程度はQs(濾過流量)と除水量・Ht値などに影響しますが、血液濃縮によってファウリング(膜の目詰まり)が加速し、TMPの上昇が容易に起こります。
これを防ぐ・抑えるようなヘモダイアフィルターの選択が求められます。
なので後希釈法にはファウリングがあまり起こりづらい膜はATA膜(FIXシリーズ)がかなり適しているのではないかと思います。
当院で後希釈法が増えましたが、この膜は開始後から開始終了時までほぼTMPが横ばいで安定しています。(これはQs、Ht値、除水量にも影響します)
あとは最近出たバクスターのポリフラックスHシリーズがいいのではないかと考えています。
この膜は後希釈法が主流の海外で主に使われており、Alb漏出を最小限に抑えつつ、3層構造により(?)透水性を保つみたいです。
当院でも今後、後希釈法で検討を考えていており、研究発表する予定です。
I-HDFに適したフィルター
I-HDFのフィルター選択ついては色々な研究がありますが、通常のオンラインHDF(前・後)と比べて、補液量がかなり少ないのと、逆濾過機能があるコンソールを使うと、膜のファウリングなども軽減されるので、フィルターの適応は広いのではないかと考えます。
オンラインHDF(前・後)ができないくらいAlb値が低い方にI-HDFをやる場合は、なるべくAlbが抜けないような孔径が小さいマイルドな膜を使用するのがいいかと思います。
MFX、FIXのEシリーズとかが挙げられますね。
Point②治療目標
治療目標はα1MG除去率とAlb漏出量で考えるのが妥当
モードの次は『治療目標』です。
治療目標は施設によって考え方が違い、毎年のごとく研究会等で議論されているものです。
したがって、治療目標設定に絶対はないということを注意してください。
ここでいう治療目標は具体的にいうと
「どういう症状を改善したいか・どのような効果を期待するか」です。
そして治療目標を設定するうえで大切なのは、患者さんにどのような症状があって、どのくらい改善することが可能か・期待できるかを考えることです。
オンラインHDFはα1MG以上の大分子の尿毒素を除去することで各症状の改善・緩和を目指します。
α1MGの除去率とAlb漏出量はほぼ相関し、オンラインHDFについてはそれを用いて治療目標を設定するのが主流となっています。
こちらの図がシンプルで分かりやすいです。
左がβ2MG除去率とAlb漏出量、右がα1MG除去率とAlb漏出量です。
引用一部改変:参考文献1).33
左の図をみるとβ2-MGはAlb漏出量とほぼ関係なく70~80%以上達成できるとされています。
ちなみにβ2-MGに関しては多くが『拡散』で除去できるのでハイスペックのダイアライザーを使ったHDでもβ2-MG除去率70%は可能です。※QBや膜面積も重要
ですのでオンラインHDFにおいて治療目標を設定する場合は、α1MGの除去率とAlb漏出量を指標するのが妥当かと考えます。
治療目標を設定するうえでの注意点
先ほどの図にあるのは、イメージマップです。
注意点は大きく分けて2つあります。
1つ目は、目標としてα1MG除去率とAlb漏出量が達成できたからといって、症状が改善する・緩和するというのは個人差があるということ。
これは当たり前ですよね。
目標を設定して実施し、その後評価するということが大切かと思います。
経験上オンラインHDFにして「すごい体調が良い」という患者さんもいますが、「効果が実感できない」という方もいるので、1人1人評価が必要です。
2つ目は、α1MGとAlb漏出量は膜の種類だけでなく、モード、孔径、膜面積、QB、Qs、QDによってかなり違ってくるということです。
逆にいうと、これらの透析条件を適切に設定することで、目標を達成できたりもします。
オンラインHDFの条件についてはここがCEの腕の見せ所だと思います。
オンラインHDFの膜選択や透析条件を考えるうえで、TMPの理解は必須です。
Point③患者さんのAlb値とフィルターのAlb漏出量
HDF療法で問題となるAlb漏出についてです。
Point②で述べた「治療目標」を達成するにはα1MG以上の物質の除去が必要です。
α1MGはAlb漏出量とほぼ相関するので、α1MG除去率を上げようとすると、同時にAlb漏出量も増大することになります。
過度なAlb漏出するオンラインHDFを継続して行った場合、患者さんの予後に悪影響を与える恐れがあるのでぜったいに避けなければなりません。
ですので、患者さんのAlb値を定期的にみて、その値に適したフィルターを選択する必要があります。
Albが低くなったらフィルターをよりAlbが抜けないものに変更する、またはオンラインHDFをやめHDに戻す、I-HDFにするなど、いくらでもやりようがあります。
Albもまったく抜けなくてもいいということではなく、Alb漏出はAlb合成促進やAlb結合型尿毒素の除去、酸化Albの除去のために必要ということも覚えておきたいです。
過去記事にAlb漏出の必要性を書いたのでこちらもどうぞ。
まとめ
CEさぼが考える『HDFフィルターの選択するうえでのポイント3つ』はこれです。
Point①モードによる違い
Point②治療目標
Point③患者さんのAlb値とフィルターのAlb漏出量
オンラインHDFは合併症予防や血圧低下などの透析困難症に有効な治療法です。
しかし、フィルターの選択・透析条件の設定次第で十分に効果が得られないことがあります。
しっかり勉強して、患者さんに適したフィルターを考えましょう。
[引用・参考文献]
1) マキシフラックスMFX-ecoタイプ カタログ.ニプロ配布資料
2)土田健司.オンラインHDFの基礎と臨床.メディカ出版.2017
3).オンラインHDF-展開と課題.臨牀透析 Vol.33 No.5.2017.93
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