どうもさぼです。
日本でオンラインHDFといえば前希釈法を指す場合が多いのですが、
オンラインHDFに、前希釈法と後希釈法の2種類あることをご存知でしょうか?
僕は透析条件は患者さんに1人1人に適した透析条件にするべきだと常日頃思っています。
当院では患者に合った透析条件の設定を目指し、
HD、オンラインHDF前希釈法、オンラインHDF後希釈法、IHDFの4つのモードを選択できるようにしています。
これからは前希釈法の条件設定だけではなく、後希釈法の選択も視野に入れるべきだと思います。
実際、症例は少ないですが、積極的に後希釈法を取り入れている施設もあります。
今回はオンラインHDFにおける希釈方法の違いをできるだけ簡単にまとめてみました。
オンラインHDFに詳しいCEはいまひとつ内容が物足りないかもしれません。
普段の記事では赤・青の区別は重要度によって赤>青の関係で色付けしてますが、
今回は区別するために青を長所(メリット)、赤を短所(デメリット)としました。
特徴は前希釈法と後希釈法で特に対照的なものを挙げました。
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前希釈法(Pre-dilution)の特徴
・ヘモダイアフィルターの「前」のAチャンバーから希釈する
これが前希釈法といわれる理由です。
ニプロの装置では「Pre」と表示されます。
なので英語表記も覚えときましょう。
・目詰まり(ファウリング)が起きにくい
フィルター前で希釈して、フィルター内で限外濾過するので、血液濃縮が起こりづらくなります。
血液濃縮を起こしづらくすることで膜の目詰まりしにくくなります。
目詰まりすると透析効率(小分子も大分子も)が下がってしまいます。
目詰まり(ファウリング)とは
拡散や限外濾過によって、半透膜に空いている小さな孔(穴みたいなもの)に大分子物質などがくっついて、穴を塞いでしまうこと。これが目詰まり。
目詰まりが起こると膜の経時劣化が起こり、透析効率が低下します。
イメージはお風呂の排水溝に髪がたまって穴を塞いでしまって水が流れにくくなる感じ。
透析後半に起こりやすい。
・大量置換が可能
前希釈法では、目詰まりを起こしづらく、Alb漏出が比較的少ないので、大量に補液することが可能です。
大量置換が可能ということは、少なくもできるので、補液量の調整がしやすいとも言える。
実際には血清Alb値やβ2MG、α1MGなどを総合的に評価して決めます。
目安は置換量20~100Lぐらいです。
・拡散効率が落ちる
フィルター前で希釈するので、血液が薄まり、血液濃度が下がる。
拡散は濃度勾配によって起こるので、血液と透析液の濃度差が小さくなることで、拡散効率が下がってしまう。
・α1MG領域の除去量が少ない
フィルター前で希釈されることで、フィルターに流入する全体量が増え、血中濃度も低下し、限外濾過の効率も下がってしまうため。
・Alb漏出が少ない
Alb漏出量とα1MGの除去動態は近似できることから、↑のα1MGの説明とほぼ同じ理由です。
前述したように前希釈法では置換量を比較的調整できるので、
Alb漏出が少なくもできるし、多くすることもできます。
後希釈法(Post-dilution)の特徴
・ヘモダイアフィルターの「後」のVチャンバーから希釈する
これもその名の通りです。
フィルターの後で希釈するから後希釈という感じ。
ニプロの装置では「Post」と表示されます。
・目詰まり(ファウリング)が起きやすい
前希釈法と違って、先にフィルターで除水分の限外濾過+補液分の限外濾過を行って、その後に補液するので、フィルター内で血液濃縮が起こってしまう。
よって、後希釈法では補液量を増やして、限外濾過の量も増やすことができるが、
それに伴い血液濃縮が起こってしまうので、目詰まりがさらに加速してしまう。
・大量置換が難しい
前希釈法と比べて、目詰まりが起きやすく、Alb漏出も多いので、補液量を上げにくい。
少ない置換量でもAlb漏出が多いので、置換量の調整が難しいのが難点。
大体ですが、5~20Lくらいです。
・拡散効率が落ちない
フィルターに希釈せずそのまま血液が流れ込むので、血中濃度が薄くならないので、拡散効率は落ちない。
・α1MG領域の除去量が多い
置換液によって血液が希釈されないため(除水がある場合は、更に血液濃縮が進む)、限外濾過の効率は落ちない。(置換液分、限外濾過が行われる。)
・Alb漏出が多い
これもAlb漏出量とα1MGの除去動態は近似できることから、↑のα1MGの説明とほぼ同じ理由です。
前希釈法と違って、置換量の調整が難しく、Alb漏出量もコントロールすることは難しいです。
よって後希釈法を選択する場合は、ある程度栄養状態が良い患者さんでないと厳しいかもしれません。
まとめ
今回は2つの希釈法が対称的になっているので、表にまとめてみました。
追加項目もありますが、+αの知識で覚えて損はないと思います。
※後希釈法の「血流量の制限がある」というのは、後希釈法ではヘモダイアフィルタ内で血液濃縮、膜面での蛋白分画が生じるためです。目安としてはQsは血流量の約25%が上限といわれてます。
ex)QB200ml/minだったらQs50ml/minです。
Q.なぜ日本では前希釈法が主流なのか?
A.①比較的タンパク透過性が高いHDFフィルターを使用しているため。②AVFが多く血液流量が比較的少ないため。
いかがでしょうか。
自分で言うのもなんですが、かなり見やすく作ったつもりです。
違いを理解したうえで、患者さんにあった透析条件、治療法、モードを選択して欲しいと思います。
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[参考文献]
1)山下芳久.臨牀透析Vol.33 No.5 オンラインHDF-展開と課題.日本メディカルセンター.2017.7-12
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