どうもさぼ(@ce_sabo)です。
当院でもオンラインHDFが本格的に浸透してきました。
オンラインHDFについては院内で資料作ったり、透析条件の検討などでもかなり文献や本を読んできました。
今回は「オンラインHDFのメリットとデメリット」についてまとめました。
こんな人にオススメ
・オンラインHDFを勧められて、どんな効果があるのか知りたい患者さん。
・患者さんにオンラインHDFを説明する医師、CE、看護師など
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オンラインHDFとは
言葉を分解して考えれば、わかりやすいと思います。
オンラインHDFは「オンライン」と「HDF」という言葉に分解できます。
オンラインとは
オンラインとは「同じコンソールから透析液を引っ張って希釈するもの」
一方でオフラインというのもあり、
オフラインとは「補液バッグ(電解質とか入っている溶液)から補液するもの」
オンラインは透析液を流れている管から引けるので大量置換が可能。
オフラインは補液バッグからなので置換量に限界があり、今はほとんどオンラインです。
HDFとは
簡単にいうと
「血液透析(HD)というのに濾過(HF)という方法を合わせたもの」です。
HD+HF=HDFという感じです。
この二つは原理が全く違います。
これだけはちゃんと理解していないと、透析条件を検討する際に困ると思うので、
是非覚えちゃいましょう。
HD
原理:拡散
原動力:濃度差(濃度勾配)。
濃度差によって濃度が濃い方から低い方へ溶質が動く。
HF
原理:限外濾過
原動力:圧力差。
圧力をかけて溶液(溶質+溶媒)ごと、濾過します。
もちろん圧力が高い方から低い方へ移動します。
このように、HDとHFは全くの別物ということが分かります。
全く違うので、除去できる物質も違ってきます。
HD、HF、HDFの分画特性(分子量別の除去性能)は図に表す通りです。
腎臓の分画特性も載っているのもいいですね。
引用:土田健司.″血液濾過透析(HDF)のしくみ″.MediPress.
つまり、HDFはHDとHFのいいとこどりという感じです。
小分子~大分子までまんべんなく除去できる治療法であることが分かります。
オンラインHDFの最大の特徴
細かく挙げるとたくさんあるので、ここだけはおさえて欲しいものを1つ。
オンラインHDFの最大の特徴は、
☆大分子物質(β2MG、α1MGなど)の除去です。
また、オンラインであるため、補液量を自由に調整することができるのも利点です。
具体的には以下のような調節ができます。
補液量を増やす→限外濾過が増える→大分子物質の除去↑
補液量を減らす→限外濾過が減る→大分子物質の除去↓
※実際は補液量の設定においては補液速度、QB、透析液圧、TMPなどを見て、慎重に設定しなければならないです。
オンラインHDFのメリット・利点
オンラインHDFは、HDと比べるとメリットや期待される効果が圧倒的に多いです。
その中でも☆は大分子物質(β2MG、α1MG)の除去によるメリットです。
①透析低血圧予防・血圧安定作用
オンラインHDF施行理由で一番多いです。
研究でも前希釈オンラインHDFはHDと比べて、透析低血圧になる頻度が減少するという報告があります。
現時点で推測されているのを紹介します。
・透析液清浄化による体内の炎症反応の抑制効果
補液する透析液が清浄化したことで、炎症誘発物質が限りなく減り、血中内の炎症が抑えられ、循環動態が安定すると言われています。
・前希釈法で大量の等張性置換液による血漿浸透圧維持作用
等張性置換液が補液されるが、補液してすぐに補液した分濾過するので、血漿浸透圧維持になるのかというのが少々疑問だが、実際血漿浸透圧が維持されるらしいです。
このメカニズムには、Na負荷がないという考えらですが、実際は「等張性置換液を入れてもGibbs-Donnan効果(ドナン平衡)により、Albの影響でNa負荷が生じる」という考え方もあるらしいです。
②貧血改善効果
貧血改善効果があるという報告とないという報告があります。
よって参考程度で考えてみてもよいかもしれません。
個人的には、オンライン補充液の清浄化+前希釈によるフィルターと血球成分の接触低減によるものだと思いますが。
次の③~⑤は、
☆大分子物質(β2MG、α1MG)の除去によるものなので、まとめました。
③掻痒症の改善
④骨関節痛の改善
⑤レストレスレッグス症候群の改善
これらの症状はβ2MG以上の分子量の尿毒素(β2MG、α1MG)などの大分子物質の長期的な蓄積によって起こるとされています。
よってこれらを効率よく除去すると改善が期待されます。
実際には、
ダイアライザーの選定方法 にも載せた図↓を見れば、分かりやすいと思います。
症状別に除去率の目標が設定されています。
[引用一部改変]
土田健司.オンラインHDFの基礎と臨床:透析患者の予後と合併症の改善を目指して.メディカ出版.2017.33
⑥食欲の改善
これはレプチン(分子量16,000)の除去によるものだとされています。
レプチンは脂肪細胞から分泌されるポリペプチドホルモンで、腎不全で蓄積されるとされています。
レプチンが蓄積されると食欲抑制、代謝亢進、体重減少などの症状が出ます。
レプチンはβ2MGとほぼ分子量が同じであり、HDよりもHDFでより多く除去することができます。
オンラインHDFのデメリット・欠点
これは患者さんにオンラインHDFについて説明すると、結構な確率で聞いてきます。
大事なのでしっかり覚えましょう。
①Alb(アルブミン)漏出
補液量にもよりますが、オンラインHDFはHDと比べて、限外濾過する量が多いので、
「Albが抜けやすい」のが欠点となります。
Albは生命維持に必要不可欠な大事な栄養タンパクです。
オンラインHDFで補液量を増やし、限外濾過量が多くなると、β2MGやα1MGなどの大きい分子量の尿毒素も多く除去できますが、同時にAlb漏出も増えてしまいます。
じゃあAlbが低い人はオンラインHDFできないの?
という疑問がある方もいるかもしれません。
答えは「Albの程度にもよるが、オンラインHDFはできる」です。
具体的に言うと、
Alb漏出を増やさないために
・膜面積が小さいヘモダイアフィルターを使う
・孔径(ポアサイズ)が小さいヘモダイアフィルターを使う
・補液量を下げる
などの方法があります。
Albが低くなくても、オンラインHDFを始めたら、必ず毎回の血液検査ごとにAlbを確認しましょう。
②小分子物質(尿素窒素、クレアチニンなど)などの除去効率がやや落ちる
理由は2つあります。
1つ目は、
前希釈法では、ヘモダイアフィルターに血液が通る手前で、血液が希釈されるので、
血液の濃度が薄くなって、濃度差が小さくなり、拡散効率が下がるため。
これは前希釈法なら仕方ないことですが、現行のヘモダイアフィルターなら、拡散効率が落ちると言ってもそこまで、明らかに下がることはないと思います。
逆に後希釈法なら、ヘモダイアフィルターの後で希釈するので拡散効率が落ちません。
こちらの記事も是非↓
2つ目は
補液によって、透析液量(QD)が減ってしまうためです。
これは、設備的な問題なんですが、
QDが減ってしまうのは、総透析液量を変えれないときで、本当は補液量分増やしたいが、供給装置の容量的に厳しい場合などが挙げられます。
分かりづらいと思うので、詳しく言うと、
オンラインHDFでは、
補液する透析液を、ヘモダイアフィルターに流す透析液から引っ張って行っています。
つまり、拡散に使う透析液の一部を限外濾過に使う透析液に使っているのです。
式で表すと、
総透析液量=透析液量(QD)+補液量(Qs)となります。
これをQDについて移行すると、
QD=総透析液量ーQs
となり、
この式から、総透析液量を上げれないと、補液した分、拡散に使うQDが少なくなるということが分かります。
これは供給装置やコンソールの稼働率などによって違ってくるので、しっかり確認してくださいね。
まとめ
オンラインHDFのメリット・利点
①透析低血圧予防・血圧安定作用
②貧血改善効果
③掻痒症の改善
④骨関節痛の改善
⑤レストレスレッグス症候群の改善
⑥食欲の改善
オンラインHDFのデメリット・欠点
①Alb(アルブミン)漏出
②小分子物質(尿素窒素、クレアチニンなど)などの除去効率がやや落ちる
また、オンラインHDFのメリット・デメリットは
MediPress という透析に関する情報サイトの
という記事がとても分かりやすかったので、そちらも是非参考にしてください。
↑の記事は引用・参考文献でも紹介した、土田健司先生が書いた記事です。
オンライン導入理由などもグラフで知ることができます。
[引用・参考文献]
1)土田健司.オンラインHDFの基礎と臨床.メディカ出版.2017.30-46,128
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