ドライウェイト(以下DW)。
透析の現場にいると、1日に1回はこの言葉を聞くのではないでしょうか。
具体的に例を挙げれば
患者「DWがきついです。」
医師「血圧低めだからDW上げときますね。」
看護師「DW変更になりました。」
などです。
なかでも多いのは、患者さんから「DWはどうやって決まっているのか」質問されることが多く、自分なりにまとめたので、DWの設定方法を説明していきます。
新人CEや学生の方は、もし患者さんから同じ質問をされたときに答えれるようになって欲しいです。
DWについては透析の基本中の基本なので、ここで是非覚えてください。
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DWとは?
DWの定義とは自分なりに言うと、「透析患者が水分管理を行うときに目標とする体重」です。
日本透析医学会のガイドラインでは
DWとは「体液量が適正で,透析中に過度の血圧低下を生ずることなく,かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義する.
引用:日本透析医学会.血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン.透析会誌44(5).2011.361
と定義されています。
では決める方法・指標はあるのでしょうか?
DWを決める方法・指標
同じくガイドラインでは、DWを決める方法はというと、
臨床的に設定する方法は明らかではない.
ときっぱり。明らかではない...。
ここで僕が言いたいのは、方法は明らかではないということであって、あるということを言いたいわけです。
つまり、「DWは様々な指標に基づいて決めている」ということを知ってもらいたいです。
DWの指標と基準値、DW設定方法(重要)
では、代表的なDWの指標と基準値・目安なるものを説明していきます。
ガイドラインに載っている数値は(ガイドライン)と記載しています。
また、項目ごとに説明とDW設定方法を書きました。
① 心胸比: CTR=心横径/胸郭径
基準値; 男性:50%以下 女性:53%以下 (ガイドライン)
説明
水分が過剰になると心臓に水が溜まり、心臓の大きさが大きくなる。CTRの式から、分子である心横径が大きくなるので、CTRが上がる。心臓に水が溜まるということは、単純に心不全に繋がるので、そのためにもDWでの管理が必要と考えられる。
DW設定方法
CTR上昇→DWは下げる
CTRが減少→DWは上げる
② ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)
基準値; 50~100pg/mL以下 (ガイドライン)
説明
主に心房で合成・貯蔵され、血中に分泌されるホルモンの一種。主な役割は血圧の調節。心房筋の伸展すなわち、心臓に水が溜まると産生、分泌される。作用は読んで字のごとく、利尿作用、ほかには血管弛緩、レニン・アルドステロン分泌抑制、循環血漿減少などがある。
注意点として、心房負荷が高まる器質的心疾患がある場合、高値を示してしまうので確認が必要。
DW設定方法
一般的に25pg/mL以下→DW上げる、100pg/mLを超える→DW下げる
③ 血圧
説明
透析患者さんの血圧は様々な病態や因子が絡まって決定されている。
また、血圧を維持する代償作用の程度も、個人差が大きいとされている。
なので、高血圧・低血圧の明確な基準はないと言っていい。
透析患者さん特有なことは、体に水が過剰になっている(溢水)状態による、高血圧が圧倒的に多い。
DW設定方法
低血圧→DW上げる、高血圧→DW下げる
一般的には、透析中ショック(血圧90以下)になったりしたらDW上げる
※血圧は個人に依存するものが多く、基準もそれぞれなので注意が必要。
というかショックになる前に、
血圧を下げないような・血圧を維持するための対応・対策をしましょう。
血圧を下げないような対応・対策については今後まとめるつもりです。
現在、一部の人達の中で、効果や悪影響について再び問題視されている
「下肢挙上や10%NaCl溶液、透析液温下げる」ことなどについて改めて書きたいと思っています。
④ DWがきついときの症状(嘔気・嘔吐、下肢つり)
説明
いずれも血圧低下に伴う症状です。これも個人差あり。
これらは透析中に起こることがしばしばあります。迅速な対応を!
DW設定方法
症状が出たら→DW上げる方向
⑤ DWがあまいときの症状(全身の浮腫・喘鳴・呼吸困難、心不全症状)
説明
いずれも体液過剰による血圧上昇に伴う症状です。これも個人差あり。
まれに見ますが、中二日空いた日で胸が苦しいという方がたまにいます。
場合によって、SPO2測ったり、モニター付けたり、酸素吸入したりします。
DW設定方法
症状が出たら→DW下げる方向
※すべての指標に言えることですが、指標の1つや2つだけを見て、DWを決めているということはありません。各指標をそれぞれ総合的に判断したうえでDWは決定されます。
他には、下大静脈径(IVC径)、CRIT-LINEなどで測れる循環血流量変化、PWI、生体インピーダンス法などがありますが、詳しく知りたい方は参考文献を読んでください。
まとめ
DWを決めるための指標・基準値
①心胸比:CTR=心横径/胸郭径
基準値;男性:50%以下 女性:53%以下 (ガイドライン)
②ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)
基準値;50~100pg/mL以下 (ガイドライン)
③血圧
基準値;個人に依存する
④DWがきついときの症状(嘔気・嘔吐、下肢つり)
⑤DWがあまいときの症状(全身の浮腫・喘鳴・呼吸困難、心不全症状)
引用・参考文献
1)賀来佳男,田部井薫.Clinical Engineering 「適正透析の実際 透析処方の実際③ドライウェイトの設定法」.秀潤社. 2016.824-835
2)原田孝司.透析ケア 「看護に活かす透析室の数字とエビデンス20」.メディカ出版.2017.24-25
3)坂井瑠実他.透析ケア「徹底解明 ドライウェイトの不思議」.メディカ出版.2015.8-41
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