成長を続ける中国と、どんな関係をめざすのか。米国と中国の対立が深まるなかで、日本の役割は何か。それは日本にとって、誰が首相であっても熟考せざるをえない問いである。
菅首相が就任後初めて、習近平(シーチンピン)国家主席と電話で話した。緊密な連携で一致したといい、まずは穏当なあいさつの交換をしたようだ。
日中首脳の公式対話は昨年12月の安倍首相による訪中以来、9カ月ぶりだった。この間、コロナ禍をめぐり、各国首脳は緊急の意思疎通を図ってきた。
そのなかで日中のトップが対話から遠ざかっていたことは、今なお日中関係が健全とは言えない証しであろう。
懸案は多い。中国の軍拡に加え、尖閣周辺での活動がやまない。台湾や南シナ海をめぐる緊張も、日本など各国の不安を高めている。新疆や香港などの人権問題も深刻だ。
これでは中国への日本の世論があまり好転しないのも当然だろう。春に予定された習氏の国賓訪日はコロナ禍で延期されたが、国民がわだかまりなく歓迎できる雰囲気とは言い難い。
菅氏は、東シナ海問題の「懸念」を習氏に伝えたという。さらに対話を増やし、強権姿勢の転換を強く求めるべきだ。
振り返れば、尖閣国有化のあとを継いだ第2次安倍政権の発足当時、日中関係は最悪と言われた。その後も安倍氏の靖国参拝などがあり、関係の修復は思うように進まなかった。
最終的に中国を変えさせたのは、米中対立という国際環境の変化が大きかった。今や中国は日本との摩擦を減らし、引き寄せたい思惑に転じている。
一方、安倍政権の対中姿勢も一貫性を欠いていた。歴史や領土問題をめぐるナショナリズムと、中国市場をにらむ経済重視との間で揺れてきた。
米国の同盟国である一方、経済では中国と結びつきが深い。そんな立場の日本は今後さらに微妙なバランスが求められる。
だが、そのなかで日本が曲げてはならない原則は、法の支配と秩序を守る真の価値観重視の外交であろう。それが「自国第一」に走りがちな米中双方を日本がいさめる土台になる。
菅政権は中国の軍拡と強引な海洋進出に対し、明確な反対を示さねばならない。新疆や香港での著しい人権侵害についても、決して見過ごさない態度表明が必要だ。
一方で、今の米国が背を向ける地球環境対策や自由貿易圏の枠組みづくりなどでは、中国との協働を広げる工夫をこらす。そうした硬軟両様の交渉で重層的な日中関係を組み立てる努力を、菅政権に求める。
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