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 安倍政権の功罪を踏まえ、改めるべき点は改める。それは、菅首相と自民党にだけ求められることではない。連立与党として安倍氏を支えた公明党も、その総括なくしては、補完勢力と見られても仕方あるまい。

 公明党がきのう、2年に1度の党大会を開いた。山口那津男代表の7選を決める一方、幹事長、政調会長ら党役員の人事で世代交代を図った。

 山口氏は「国民目線からの改革を進める菅内閣を全力で支える決意」と述べ、来賓として出席した菅氏も「公明党の皆さんの政治、心から拍手を送る者の一人だ」と持ち上げた。

 山口氏は09年の衆院選で自公政権が下野した後、代表に就任した。野党でも自民党から離れることはなく、12年の総選挙でともに政権復帰を果たした。

 幼児教育の無償化、消費税軽減税率の導入、未婚のひとり親への寡婦(寡夫)控除の適用……。公明党がこの間、影響力を発揮した個別の政策はある。しかし、全体として、安倍氏の強引な政権運営へのブレーキ役を果たしたとは言いがたい。

 支持母体の創価学会にも異論があり、世論の賛否も割れていた安全保障関連法やカジノ実施法を、巨大与党の数の力で強行成立させた。米軍普天間飛行場辺野古移設でも、沖縄の民意を無視した政権のかたくなな姿勢に同調し続けている。

 森友・加計・桜を見る会といった一連の疑惑にも、自浄作用を発揮することはなく、政治の劣化を放置し続けた。

 そもそも、今の憲法を高く評価する公明党と、押しつけられた「みっともない憲法」と評したこともある安倍氏との間には、政治への基本認識に大きな乖離(かいり)があった。

 それに比べ、菅政権とは波長が合うように見える。菅氏が旗を振る不妊治療への支援拡大は公明党が主張していたものだ。携帯電話料金の引き下げやデジタル化の推進など、福祉や景気対策での実利を重視する公明党と重なる部分が多い。

 ただ、菅氏が掲げる「自助・共助・公助」のうち、自助に重きが置かれれば、「福祉の党」を自任する公明党との齟齬(そご)が表面化するかもしれない。

 自民党内で闊達(かったつ)な議論が失われて久しい。それだけに、政権中枢に直言できる公明党の責任は重い。連立維持による「政治の安定」を党幹部はしばしば強調するが、それだけで政権党の役割は果たせない。

 政治全体への貢献をはかるなら、全国の地方議員らと連携したネットワークを生かし、現場の声を国政につなげることが肝要だ。安定の先に、何を実現するかが問われよう。

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