[23年国体決定] 重ねた準備生かしたい
( 9/26 付 )

 新型コロナウイルスの感染拡大で延期された鹿児島県での国民体育大会と全国障害者スポーツ大会は、2023年に開催されることが決まった。
 県、日本スポーツ協会、日本障がい者スポーツ協会、スポーツ庁の4者トップレベル会議できのう合意した。内定していた23年佐賀県、24年滋賀県、さらに以降の内々定県は基本的に1年順送りとなる。
 延期で新たに生じる経費の負担や実施競技の確定などは、まだ調整に時間がかかる。だが、3年後に目標が定まったことで開催準備は再び加速するだろう。先送りという重い判断を受け入れてくれた各県に感謝したい。
 佐賀から国体の名称は国民スポーツ大会(国スポ)に変わり、鹿児島は実質的に最後の「国体」となる。約10年間積み重ねた準備を生かし、さらに磨きをかけていかなければならない。
 鹿児島国体・障スポを巡っては、東京五輪・パラリンピックの延期で今秋開催は困難との見方が強まり、主催のスポーツ団体や県は延期の道筋を探った。初め1年後を目指したが、「決定」の21年三重、22年栃木は既に準備が整い、「内定」以後に的を絞った。
 7月に就任した塩田康一知事や県議会はこの流れを受けて佐賀、滋賀両県に協力を要請した。これに対して佐賀が8月、滋賀も今月に入って1年開催を遅らせることを容認、今回の決定に至った。
 ただ、延期に伴う課題は多い。一つは選手強化費や施設維持費などをどう賄うかだ。県の総費用は既に11年度以降の累計が20年度予算分を含め230億円を超えている。正式競技が開かれる25市町の関連事業費は計190億円近くに上る。
 スポーツ庁は「延期により発生したキャンセル料など今年かかる分、23年にかかる分は別々に支援したい」との考えを示す。早急に詳細を詰めてもらいたい。また、県は追加する費用の必要性について十分に説明し、県民の理解を得なければならない。
 実施競技の論議も要る。国体は現段階では決定したプログラムを踏襲する可能性が強い一方、障スポは来年の三重から導入するボッチャなどの競技の追加を検討中だ。費用や会場の問題もあり、難しい判断が迫られる。
 時間的余裕ができたとはいえ、コロナをはじめ感染症への対策は今までになく重要になってくる。両大会で延べ80万人が参加する大イベントだ。先行開催地の三重、栃木を参考に、選手らの安全を守る工夫が欠かせない。
 1972(昭和47)年の太陽国体は鹿児島のスポーツ振興に大きな役割を果たした。半世紀を超えて迎える今回も、五輪・パラリンピック後の“余熱”はなくても、地域の多くの人々に活力をもたらす大会であってほしい。